提督の憂鬱   作:sognathus

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ビスマルクが改三になりました。
彼女は意気揚々と提督に報告しに来たのですが、当の提督は何故か祝福の言葉もなく呆れた顔をしています。
何故でしょう?


第37話 「駄々っ子」

「ビスマ……マリア、新たな改造を受けて今戻ったわ!」

 

「別にビスマルクでもいいだろう。それが本当の名前なんだから」

 

「いや! マリアがいいの!」

 

「……そうか」

 

ビスマルクは最近、ようやく実装の第一段階として許可が出された上位改造以降の更なる強化の改造を受けたのだった。

 

「そんな事より大佐! どう? 私、艦隊の中でついに唯一の改三実装者になったのよ!」

 

「ああそうだな。俺もまさか海外艦が先にその改造を受ける事になるとは意外だった」

 

「もうっ、そうじゃないでしょ? 改造を受けて更に優れた艦として戻って来た私の魅力はどう? って訊いてるの!」プクー

 

「ん……魚雷を撃てるようになったのか。ますます器用になったなお前」

 

「でしょ? 観測機も積めて魚雷も撃てるなんて、これでまた私の死角はなくなったわね!」

 

「ああ、後は潜水艦にも対応できるようになったら完璧だな」

 

「任せて! いつか対応できるようになってみせるわ!」

 

「そうか、頑張れ」(本気の目だな。それくらい浮かれてるって事か)

 

半分冗談で言ったつもりの提督のその言葉にもビスマルクはキラキラと輝く目で自信満々に宣言した。

 

 

「ああ早く出撃か演習をしてみたいわね♪」

 

「悪いが、ケッコンの練度に達した艦娘は基本、それ以外の艦娘の成長を促すために出撃の出番は減る。お前や金剛たちの出番は本気で挑まないと危ういと判断した時というのは変わらないぞ」

 

「それは分かってるわ。あーでも、でもなぁ……♪」

 

頭でも体の制御ができていない好例だった。

ビスマルクは提督に釘を刺されても、いつ勢いで出撃するかわわからないくらい子供の様にウキウキしていた。

 

「もうレイスやマックス達には自慢したのか?」

 

「ちょっと、自慢ってなによ! ……まぁ結果的にはそうだけど」

 

「したのか」

 

「う……うん」カァ

 

「はは、照れるな。浮かれる気持ちは分かる。それでどうだった?」

 

「それがね。ふふ、レイスは自分の事の様に祝ってくれたんだけど、ジェーンは……」

 

「拗ねたか?」

 

「あ、やっぱり分かる? そうなの。一人だけそっぽを向いちゃってね『別に、そのうち私もなるし』とか言っちゃってもー。ふふふふ♪」

 

(ちょうど逆の立場だったらマリアがそう言ってそうだな)

 

提督はビスマルクを見ながらその様子をまざまざと想像することができた。

 

「大佐?」

 

「ん?」

 

「今何か思った?」ジト

 

「いや?」

 

「そう? ふーん……」

 

「……」

 

「まぁいいわ。それでね、それからジェーンの機嫌を直すのに苦労してね……」

 

「あまりやりすぎるなよ。その所為でヘソを曲げられたらそれはそれで厄介な気がするからな」

 

「だからなんで私を見ながらそう言うのよ!」

 

「なんだ気付いていたんじゃないか」

 

「私はそんなに子供じゃないわよ!」

 

「そうか。じゃあ偶に一緒に寝てくれと言ってきても断ってもいいんだな?」

 

「Nein!(ナイン)」

 

母国語で即答するビスマルク、その反応に提督は呆れ顔で溜息を付きながら言った。

 

「お前、戦艦なんだからもう少し大人らしく振舞えよ」

 

「それとこれとは話は別だもん!」

 

「そうは思わないが……」

 

「と、とにかく嫌なものは嫌なの!」

 

「だからといってあまり頻繁に来るのは遠慮しろよ? 風紀は守りたいからな」

 

「う……じゃぁ週4くらいで……」

 

「それだと一日減っただけじゃないか。月1だ」

 

「そ、それはいや!」

 

「毎週駄々をこねるお前をあやして部屋に返す俺の労力を考えろ」

 

ビスマルクは自身が言う様に頻繁に夜中に実は提督のもとを訪れていたがそこは軍人の提督、その度に睡眠時間を削って律儀に彼女を部屋に帰していた。

 

「ちゃ、ちゃんと皆が寝静まった頃に来てるんだからいいじゃない!」

 

「俺には迷惑を掛けていいような答だぞそれ」

 

「お、お嫁さんなんだからそれくらい甘えて当然なの!」

 

「ドイツ出身の規律正しい軍人ならもう少し質実剛健に震えよ……」

 

「う……ど、ドイツ人は頑固なところもあるんだもん!」

 

「それは頑固ではなくただの我儘だ」

 

「……っ!」ジワァ

 

「む」(泣くか、だがここで厳しくでなくてはいつまで経っても……)

 

泣いて帰るかと思われたビスマルクだったが、提督の予想に反して意外にも泣く寸前で我慢する表情をすると、俯きながら彼に近づきそっと服の裾を握ったてきた。

 

トテトテ、ギュッ

 

「ん?」

 

「お、お願いします。甘えさせて……下さい」

 

上目遣いで瞳を潤ませてせがむビスマルク、その姿は正に大きな子供だった。

 

「……だからこんな時間にわざわざ遅れて改造の話をしに来たんだろう?」

 

「……」コク

 

「……まぁ改造初日だしな。一緒に寝るくらいなら」

 

「! ほ、本当!?」

 

「その代わりに月1だ」

 

「そ、それは…………や」

 

「頑固だな」

 

「交渉しましょう!」

 

「頼むから寝かせてくれ……」

 

提督は折れそうな心を何とか保ちながらそう愚痴るのであった。




次は扶桑ですねー。
秋イベントでは上手くすれば改造できるかもと楽天的に予想してます。
でもきっとその頃には新たな改二も増えているんでしょうねぇ(遠い目

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