提督の憂鬱   作:sognathus

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ある日、提督の執務室の扉を挨拶もなしに勢いよく開ける人物が来ました。
そんな礼儀知らずな事をついノリやってしまうのは提督の鎮守府に所属する艦娘と言ったら……。


第22話 「大子供」

「ヘーイ、大佐ァ!」

 

「遊びに来ましたよ!!」

 

ババン!

 

「よく来たな。取り敢えず其処に正座しろ」

 

「What!?」「ええっ!?」

 

 

「うぅ……大佐ァ、足が痺れたヨぉ」

 

「わ、わたしも……比叡、限界が……」

 

「たかが1時間くらいで音を上げるなよ」

 

「Sorry ヨ! マナー違反はゴメンするからァ!」

 

「も、もう限界……です。あ、あひの感覚が……」プルプル

 

「……はぁ。解いてよし」

 

「「!」」

 

提督の言葉にまるで生きる希望を見出したかのように救われた顔をした二人は、許可が下りるのと同時に即座に足を崩した。

 

「ハァ……これが生きてるってことなのネ……。ワタシ今とっても amazing な気持ちヨ……」ウル

 

「お姉様、比叡もです。わたし今凄く生きているって気がしてます……!」グス

 

「たかが正座くらいで大袈裟だな。おい、崩し過ぎだ。二人とも下着が見えているぞ」

 

「ワザとじゃないヨ? あ、足が今はゆーことを聞かないんデス」プルプル

 

「あ、ホントだ。でも大佐だし……恥ずかしいけど……。あ、わたしも足が今ちょっと無理です」プルプル

 

「そこは無理してでも淑女としてのプライドを示して欲しかったんだがな」

 

提督は呆れるように溜息を吐き、それ以上はもう注意をしなかった。

 

「sorry ネ大佐。でも、見たいなら好きなだけ見てネ?」

 

「私も構いません!」

 

「……何か色気も何もあったもんじゃないな。大丈夫だ。今のところお前達はただの子供にしか俺には見えないからそういった心遣いは無用だ」

 

「エー!?」ガーン

 

「そんなぁ! わたしはそんなに子供じゃないですよ!」

 

「ならもう少し慎みを持てよ……」

 

 

それから数分後

 

「それで、何しに来た?」

 

提督は、すっかり痺れが抜けて今はちゃんと俗にいう『女の子座り』をしている金剛と比叡に改めて問いかけた。

 

「え? 何しにって、タダ遊びに来ただけヨ?」キョトン

 

「わたしもです! なんか構って欲しくて」

 

「お前達は気まぐれな猫と遊び盛りの犬か」

 

「dog は大好きデス!」

 

「猫も好きですよ!」

 

「そんなことは聞いてない」

 

「BOW WOW!」

 

「にゃ、にゃ……え? ばうわ……? 何ですかそれ? お姉様?」

 

「英語の犬の鳴き声だ」

 

「へぇ、英語だとそういう風に言う? んですねぇ」

 

「そうヨ。帰国子女ならこれくらい当然ヨ!」

 

「一般的な帰国子女の認識を歪めるな金剛」

 

「えぇ!? ワタシ歪めてた!?」ガーン

 

「そ、そうなんですか大佐!?」ガーン

 

「……」(頭痛い……)ドヨーン

 

 

「……もういい。遊びに来たんだったな」

 

提督は取り敢えずそれ以上はツッコまない事にした。

それ以上のめり込むと深刻な精神的な疲労が懸念されたからだ。

 

「遊んでくれるノ!?」キラキラ

 

「本当ですか!?」キラキラ

 

「こんな夜中にやる事と言ったらもう寝るか読書くらいだったしな。いいぞ、付き合ってやる」

 

「流石 my darling ネ! I love you ヨ!」

 

「だ、ダーリン……ラブ……た、大佐! 比叡も! わたしともレベルが最大になったらケッコンして下さいね!?」ジワ

 

「大好きな姉に嫉妬するほど羨ましいのか……ああ、分かっている。条件に達すればちゃんとしてやる」

 

「約束ですよ!」

 

「um……お姉ちゃんとしてはちょっと複雑ネー。可愛い妹を嫁に出すというも中々辛いというカ……」

 

「お姉様!」ジーン

 

「って、何か辛そうな割には顔笑ってません?」

 

「エッ?」

 

比叡の言う通り金剛は胸に迫るセリフとは裏腹にその顔はどことなく引きつり、笑いを堪えているような表情をしていた。

 

「……お姉様? 辛いっていうの本当ですか? 実は大佐を独占したいだけとかじゃないですか?」

 

「ギクッ。そ、そんな事ナイヨ?」

 

「あぁっ!? 今ギクッって言いましたよね!?」

 

(策士策に……いや、最初から策が漏れていては策士ではないか)

 

「お姉様ひどい!」

 

「Oh 比叡、ごかいっ。誤解ネ! キャー♪」

 

「何笑ってるんですかぁ!!」

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「はぁ……ハ……くふ……あは」

 

「気は済んだか?」

 

「No! まだヨ!」

 

「まだ何もしてないじゃないですか!」

 

あれだけ走り回っていたというのに金剛と比叡は提督の言葉に即座に反応して姉妹揃って抗議と戯れの継続を要求した。

 

「もう十分していたと思うが……」(こいつらの元気は一体どこから湧いてくるんだ?)

 

「分かった分かった。で、何をする?」

 

「ちょっとしたクイズをしまショウ!」

 

「クイズ、ですか?」

 

「ほう、お前にしてはなかなかまともな案だな」

 

「それどういう意味ネ!?」

 

「日頃の行いを思い出せば済む事だろう? まぁ、いい。それで、クイズだったか」

 

「むぅ、後でちゃんとツイキューするからネ! コホン、それでは一人一個簡単なクイズを考えてそれに答えてもらいマース!」

 

「分かりました!」

 

「了解だ」

 

「じゃあワタシから行くワヨ! 私の下着の色を当てて下サイ!」

 

「「……」」

 

いきなりのとんでもない問題に提督と比叡は一瞬で黙り込んだ。

 

「お、お姉様……?」

 

流石に比叡も顔を赤らめながら姉を窘めるような表情をしていた。

 

「それ、クイズか?」

 

提督も比叡の援護に回る事にした。

 

「ノンノン! 誤解はいけないワヨ? 記憶を辿るのも立派なクイズよ!」

 

「記憶……あっ」

 

「そうっ。さっき大佐はワタシ達の下着を見たはずデス! それを思い出せばいいだけデース!」

 

「お前、それだと俺しか答えられないじゃないか」

 

「大佐に答えて欲しいノ」ズイ

 

「お、お姉様……」(頭良い!)

 

(どうやら比叡に金剛を止めてもらうことはもう叶いそうもないな……)

 

「……」

 

「さァ答えて!」

 

「大佐、ファイトです!」

 

「……む? いざ答えようとすると思い出せないものだな」

 

「えっ」

 

「あー、そういうのってありますよねー」

 

「大佐、ちゃんと見ててヨ!」

 

「馬鹿者。女が、自分からよりにもよって異性に自分の下着をちゃんと見てろなんて言うな」

 

「Oh 言われてみれば。でも、それはソレ! これはコレよ! 覚えられてないのもなんか魅力が足りない気がして悔しいノ!」

 

「我儘な……比叡?」

 

「ごめんなさい。私も覚えてないです」

 

あっけなく唯一の望みは絶たれてしまった。

 

「むぅ……」

 

「あっ……」

 

考え込む提督に金剛は何かに気付いたようで、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「比叡、比叡っ」ヒソヒソ

 

「え? なんですか?」ヒソヒソ

 

「……」コショコショ

 

「お、お姉様それは……」カァ

 

「比叡、これは chance なのヨ!」ヒソヒソ

 

「う~……。わ、わかりました。わたしやりますっ……」ボソ

 

「よく決断したワネ! それじゃ……」ヒソヒソ

 

「は、はいっ」

 

 

「大佐……」

 

「ん? どうした二人して立ち上がって」

 

提督はいつの間にか立ち上がって自分を見下ろしている金剛と比叡に気付いた。

 

「あの……わ、分からないならですね……」

 

「直接確かめテ!」

 

ガバッ




次回エロ(確定)です。

比叡を巧み(筆者視点)に誘導する金剛はやっぱり策士だと思います。

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