提督の憂鬱   作:sognathus

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雲龍と飛鷹と隼鷹が酒を飲んで何か語らっています。



第20話 「対抗心」

「んぐ……っはぁ……大佐ってさ」

 

一口で酒を飲んだ雲龍が溜息と共に切り出した。

 

「んーー?」

 

「付き合っている人いるのかな?」

 

ピシッ

 

空気が凍った。

雲龍の言葉を聞いてなかった隼鷹でさえ場の空気の異変に気付き、飲みかけだった酒を途中でをやめた。

 

「……なに、言ってるの?」

 

雲龍の一言で酔いが吹き飛んだ飛鷹が少し顔をひきつらせながら真面目な顔で聞き返した。

 

「いや、大佐って誰かと付き合ってるのかなって」

 

「えー? 付き合ってるも何も、ケッコンしてる人がもう6人くらいいるんだしー。そんなの今更確認する必要にゃいんじゃなー?」

 

飛鷹と違い、酒に酔う事を何よりも好む隼鷹が笑いながら雲龍の疑問が今更のものだと指摘する。

 

「いや、でもそれって結局はケッコンというシステムの話でしょ? 純粋に付き合うのならシステムとか関係ないじゃない」

 

「……だから?」

 

「同じことを何回も言わせないでよ。だから大佐って誰かと純粋に付き合ってるのかなって」

 

「ん~? それってさぁ、うんにゅーの言ってる事ってさー。公私共に常に彼氏彼女みたいな関係の人がいるのかってことー?」

 

「そう」

 

「んー、そー言われると確かにいないとは……」

 

「ちょ、ちょっと隼鷹」

 

酔いの所為かはたまた本心から言っているのかは定かではないが、思いもよらない事を言い出す隼鷹に飛鷹は焦った。

 

「ん~? どーしたのさひよー? べっつにあたしはあんたも大佐を好きなことくらい……」

 

「そ、そういう事じゃなくって」

 

「そう。そういう事ね。つまり純粋に付き合っている人はいないのね」

 

「えっ」

 

「んー、それはどーかにゃー」

 

「隼鷹、あなたさっき大佐とちゃんと付き合っている人はいないって言ったじゃない」ゴク

 

若干目が据わっているように見えなくもない雲龍は、隼鷹のいい加減とも言える反応に僅かにムッっとした表情をした。

 

「いやー、確かに言ったけどさぁ。大佐ってずっと前に自分を好きな人は無条件で受け入れて愛しますーとか言ったからねぇ」

 

「……そんな事言ったんだ」

 

「そ、そうよ! だからもう抜け駆けとかそういうのはね……」

 

「でも、愛するって言っただけで、誰を本妻にするかとは言ってないのよね?」

 

ピシッ

 

また空気が凍った音がした。

今度は隼鷹も雲龍の言葉を聞き逃す事はなかった。

 

「ほ、本妻?」

 

先程と違ってずっと真剣な表情で飛鷹が聞き返す。

 

「そ、本妻」

 

「それってつまり……」

 

「そう。誰が一番好きなのかって事よ」

 

「あー……、なるほどねー。それはちょっとあたしも気になるかにゃー」

 

「隼鷹たちの反応を見ていた限り私はいなさそうと踏んだけど、そこのとこどう?」

 

「そ、そうね……確かにはっきりと居る、とは言い難いけど……」

 

「少なくとも近い人はいるかにゃー?」

 

最初から真顔なのは変わらないが、幾分眼光が鋭くなった雲龍がすかさず訊く。

 

「……それって誰?」

 

「んー……やっぱり加賀さん?」

 

「こんごーうとマリアもかなぁ?」

 

「……後者の二人は普段から大佐の事を好きな事を隠していない人達ね。でも一方的に見えなくもない……と思わない?」

 

「えっ。そ、それは……」

 

「いやぁ、アレで心から本当に慕ってるからねぇ。大佐も満更じゃないと思うけどねぇ」

 

「大佐は押しに弱いの?」

 

「弱いというか優しいのよ。態度は素っ気ないけどちゃんと受け入れてくれるというか」

 

飛鷹は顔を赤らめて少し嬉しそうに言った。

 

「感心しないわね。そういうのは誤解させちゃうのよ」

 

雲龍はその可能性をにべもなく否定した。

その反応は若干子供っぽく見えなくもなかった。

 

「い、いやいくらなんでも誤解だと判断するのは……。それこそ一方的なんじゃ……」

 

「そうだよー、大佐はそんな人じゃないよぉ? ていうかうんゆーさぁ、あんたも大佐が好きなのは分かるけど、そんなに無理していひ番になろうとするのは、ひょっとおねーちゃん感心しないなー」

 

「……ごめん。ちょっとお酒まわってるかも」

 

「いいってことよー。いやぁ、若いっていいねぇ♪」

 

「肉体年齢成人以下の癖に何言ってるのよ……」

 

「いやぁ、それはそれっってヤツ? ほら、あたし結構やるからさぁ♪」

 

「最早何を言っているのか理解困難ね」

 

わざと呆れたような顔をして苦笑交じりに雲龍は言った。

 

「ごめんね。酒癖悪くて」

 

「ううん。お酒は美味しく飲むのに限るから」

 

「そうっ。それ! あらひはそれが言――」

 

「はいはい。分かったから今日はこれくらいにしましょ」

 

「そうね。時間もいい感じだし。それじゃおやすみ」

 

「またね、楽しかったわ。また飲みましょう」

 

「えぇ!? もうおわひぃ?」

 

「あんたは顔でも洗って来なさい」

 

「ふふ、じゃあね。お邪魔しました」

 

バタン

 

 

「……全く。隼鷹、あなたも早く……あれ、何処行くの? 顔ならそこで洗えばいいじゃない」

 

「ん、ちょっとついでに外の風にも当たりたくてさ。直ぐ戻るよぉ」

 

「もう、もう少し加減ていうものを覚えなさいよ?」

 

「あーい。そいじゃ行ってきまーふ!」

 

隼鷹はそういうと足早に部屋を出ていった。

 

飛鷹(隼鷹? んー……なんか?)

 

 

~鎮守府廊下

 

トテトテ……

 

「あ」

 

「あれ、雲龍さん? 部屋に戻ったんじゃ……」

 

「飛鷹、ダメ。こっちこっち」

 

何となく気になって隼鷹が出た後を追っていた飛鷹だったが、そこで思わぬ人物と再会した。

再会した雲龍は驚くより飛鷹の存在が何かに影響してしまうのが気になる様子で、目珍しく少し焦りがちに手早く彼女を自分が居る廊下の曲がり角に引き入れた。

 

「ちょ、な、なに?」

 

「あれ、アレ……」チョイチョイ

 

「ん? あれって……あっ」

 

雲龍が指を指している方向を見ると飛鷹は軽く驚いた表情をした。

何故ならそこには……。

 

 

「たーいさぁ。んふー」ギュッ

 

「おい、酒臭いぞ」

 

「あ、ちょっと。いきなりそれはないんじゃなーい?」

 

「夜中に訪ねてきていきなりもたれかかって来る奴に言われたくはないな。飲み過ぎなんじゃないのか?」

 

「えへへぇ、そうかもー。だからさぁ……」

 

「分かった。部屋まで送ってやる」

 

「えー? そーじゃなくてー。ねー?」

 

「何を言いたいのか解らなくもないが今日は駄目だ」

 

「むっ、誰かいるの?」

 

「いや」

 

「なら――」

 

「駄目だ。お前、最近新たな改造を目指して少し無理しているだろう? その結果疲労が溜まって珍しく酒に悪い方に飲まれているんだ」

 

「むぅ、そんな事……!」

 

少しむくれた表情をした隼鷹は、提督の心遣いに退く姿勢を見せず更に言い募ろうとした。

 

ポン

 

「無理をするな」

 

「な……い……ん……」

 

「俺は無理をしない部下が好きだ」

 

「ちょっと……そういうのってズルいと思わない?」ポッ

 

「そうだな。だが、心配しているのは本当だぞ?」ナデナデ

 

「んん……し、仕方ないね。じゃ、じゃぁさキスくらい……ね?」

 

「……」

 

「あ、そこで酒臭いから嫌だというのは――」

 

チュ

 

 

雲龍・飛鷹「!」

 

 

「……ん……」

 

「……」

 

「……。ごめん」

 

「何がだ?」

 

「臭かったでしょ? お酒」

 

「ふっ、そう気遣えるのなら次はもっと良いキスができそうだな?」

 

「あ……うん! ねぇ、今度改造を受けたらさ……」

 

「分かった。都合はつけてみる。だが……」

 

「分かってるって。素面でしょ? ちゃんと守るって!」

 

「よし、なら約束しよう」

 

「ありがとう! 絶対だよ!?」

 

「ああ。だからもう今日は休め」

 

「あいよっ。じゃ、寝るよ。ごめんね、こんな夜分に」

 

「気にするな。じゃあな。おやすみ」

 

「うん、おやすみっ♪」

 

テテッ……

 

 

~廊下、雲龍と飛鷹が潜んでいるポイント

 

「……」

 

「……やるね」

 

雲龍は感嘆とも取れる息を吐いてポツリと言った。

 

「そうね。隼鷹……くっ……」

 

「悔しい?」

 

「んー……というより、油断できないと思った、かな?」

 

「それは私も同意」

 

「ね」

 

「うん。お互いに?」ニッ

 

「頑張りましょう」ニコッ

 

薄暗い廊下で雲龍と飛龍はコツンと拳をぶつけ合った。




隼鷹のレベル上げがんばらないと!(主に演習で)

新しく行けるようになったマップ(3-5)難しいですね。
設計図欲しくても消費するコストを考えたら、一回の出撃で行く気を無くした自分はどれだけヘタレプレイヤーなんだと思わずセルフツッコミをしてしまいました。

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