提督の憂鬱   作:sognathus

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食堂がまだ開いていないと言うのに赤城は早くも一人席に着き、開店をを待っていました。
その姿は日常で、提督も既に見慣れた光景でした。
そんな彼女に提督は用があるらしく、頬杖を付いている待ちぼうけている横から話し掛けます。


第9話 「食べ物」

赤城「お腹空いたなぁ……」

 

グ~

 

提督「資材ならあるぞ? 弾薬以外、だが」

 

赤城「大佐……。わざとそれ言ってますよね? 資材はあくまで私達が艦娘として戦う為のエネルギーなんですよ!」

 

提督「そうだったか?」

 

赤城「むぅ、からかってますね? いいですか? 大佐は私達が美味しそうに水の代わりに重油を飲んで、口を黒色に汚している光景を想像できます? そんな唇で接吻とかされたいですか?」

 

提督「……」

 

赤城「できないでしょう? 他の資材だって同じです。どうやってボーキや弾薬、鉄を食べろって言うんですか? あんなの味がどうこう以前に硬くて食べられるわけないじゃないですか」

 

提督「そうだったな。いや、悪かった」

 

赤城「もうっ、やっと分ってくれました? 補給だってイチイチ原形に戻らないといけなかったから面倒だったんですよ」

 

提督「ふむ、それだけにあのナノ資材には本当に助けられたな」

 

赤城「そうっ、それですよ! あんなに簡単にお薬を飲むように処方するだけで補給できるなんて……素敵です♪」

 

提督「その分、消費に対して感覚を狂わせないように苦労しているがな」

 

赤城「ふふ、ちょっとパラパラ落とすだけで戦艦も建造できちゃいますからね」

 

提督「恐ろしい話だ」

 

赤城「本当ですね、ふふふ。それで大佐、どうしたんです? 私に何かご用ですか?」

 

提督「ああ、空腹のところ悪いがお前に渡すものがあってな」

 

赤城「ご飯ですか?」

 

提督「流石にこれは食べられると困るんだが……。これだ」

 

コトッ

 

小さな箱から光る物が覗いていた。

それはケッコン指輪だった。

 

赤城「あ……これ」

 

提督「昔から空母の主力として支えてくれていたのに待たせてしまったな」

 

赤城「……」(あ、私……もう限界まで来てたんだ……)

 

提督「受けてくれるか?」

 

赤城「……5人目ですか?」

 

提督「そう……だな。そう言われると心が少し痛いが……」

 

赤城「嘘です! 何番目でもいいですよ! 嬉しい! ありがとうございます大佐!」ダキッ

 

提督「……! む……」

 

赤城「ふふ、怖かったですか? 大丈夫ですよ。私は、大事な旦那様を締め付けたりなんかしませんから♪」

 

提督「助かる……。だがな」

 

赤城「あっ、そうですね。やっと夫婦になれましたからね! 先ずはキスを……」

 

提督「いや、違う。扶桑が……」

 

赤城「え?」

 

その言葉に赤城がハッとして顔を上げると、そこには黒いオーラ全開で『笑ってない笑み』を湛えた扶桑が佇んでいた。

傍らには山城が重鎮の如く控え、ただでさえ黒いオーラを一緒になって倍増させていた。

 

扶桑「ふ・ふ・ふ~、大佐、い・い・て・ん・き・ですね♪」

 

提督「扶桑……」

 

山城「本当、良い天気ですねぇ。赤城さん♪」

 

ピシャッ、ゴロロロロロ!

 

提督(毎度思うが、この2人には何か超自然的な力でもあるのか?)

 

赤城「扶桑さん、山城さん……。これは……」

 

扶桑「別にいいんですよ~? 成長限界になったんですものね。その資格を行使するのは当然だと思います」ニコッ

 

提督「扶桑……」ゾッ

 

山城「大佐、こっちも見て下さい? いいですね、指輪。私達も早く欲しいなぁ。ね? お姉様」

 

扶桑「山城、我儘を言って大佐を困らせてはダメよ。私達も成長限界まで達したらいいだけの話なんだから♪」

 

山城「あ、そうですね! 忘れてました♪」

 

提督(脅迫されてるよな、これ………? 早く鍛えろって)

 

扶桑「それで、大佐ぁ……今後の出撃や演習にでる艦隊の編成についてなんですが……」

 

提督「いや、それはあくまで予定に則った……」

 

山城「その予定を少しだけ歪ませて欲しいんですけど……?」

 

扶桑と山城が凄まじい圧迫感(若干柔らかな物理敵圧力有り)で提督に詰め寄る。

その事態に提督の身の危険を感じた赤城は、密かに忍ばせていた練習用の艦載機の矢を手に持つと、一瞬で2人から間合いを取って洗練した動作で弓を使わずに手投した。

 

解き放たれた烈風が、扶桑達の気を逸らして提督が危機を脱する為の隙を作るべく突進する。

 

ボンッ

 

赤城「え?」

 

赤城は目を疑った。

もう少しで扶桑達の気を逸らす筈だった烈風が小さな被弾音と共に力なく墜落したからだ。

 

扶桑「赤城さん、邪魔しないでくれます?」ニコッ

 

山城「危ないですねぇ。偶然気付けて良かったです♪」

 

赤城(偶然? いや、それより艦載機の運用で私が戦艦に負けた!?)

 

山城「ふふふ、数では負けますが、一対一なら結構自信あるんですよ?」

 

扶桑「山城、良い子ね」ナデナデ

 

山城「ああん、お姉様♪」

 

赤城「う……大佐」

 

扶桑「大丈夫ですよ? 別に獲って食べようという訳ではないから。ただちょっと……」

 

山城「お話したいだけですよ♪」

 

提督「赤城、ありがとう。だが、もういい。ここからは俺に任せろ」

 

赤城「大佐……そんな、嫌です。せっかく指輪をもらったばかりなのに……!」

 

提督「……後で今日の定食3人前持って行ってやるから」

 

赤城「大佐、頑張ってくださいね! ご武運をお祈りしています♪」

 

テテーッ

 

 

提督・扶桑・山城「……」

 

扶桑「あ、あの大佐……」

 

提督「何も言うな……」

 

山城(なんか不憫……)

 

扶桑「あ。そ、それじゃぁちょ、ちょっとお話しましょうか。あ、じゃなくて、させて下さい。お願いします」

 

提督「急にしおらしくしなくていい。話ならちゃんと聞いてやる」

 

山城「あ、あの……ホントごめんなさい。それじゃ次の出撃なんですが……」

 

 

結局、無意識とは言え、赤城のお蔭でその日の扶桑達の交渉は、特に揉めたりする事もなく少し出撃の頻度を増やすだけで事なきを終えた。

 

だが、それと同時に提督の赤城に対する認識も少し変わったという。




どう考えても筆者には艦娘達が美味しそうに資材を食べてる姿は想像できません。
なので本作ではこういう設定にしているわけですが。
賛否両論張るかもしれませんが、お蔭で自分はスッキリした気持ちで書けてますw

やっぱり彼女たちには美味しそうにご飯を食べて貰いたいので。

赤城と結婚しました。やったね!

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