提督の憂鬱   作:sognathus

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提督の執務室に何やら艦娘が何人か集まっています。
どの子も初めて見る子ばかりです。

加賀から報告を受けた提督もこの事態に少し困惑しているようです。


第8話 「大量」

舞風「舞風でっす!」

 

初風「初風よ」

 

浜風「浜風です」

 

早霜「早霜です……」

 

時津風「時津風です!」

 

雲龍「雲龍よ。よろしくね」

 

提督「……加賀?」

 

加賀「はい?」

 

提督「この子達全員先の作戦で見つけて来たのか?」

 

加賀「いえ、雲龍さんだけは違います。彼女はMI作戦の成功に貢献したと認められた提督にのみ与えられる本部からの褒賞です」

 

提督「褒賞……」

 

加賀「あっ、すみませ……」

 

提督「いや、いい。俺達がどう思おうが本部はそのつもりでくれたんだろう」

 

雲龍「? 私が何か?」

 

加賀「雲龍さん、大佐はね、あなたが本部から褒賞として送られてきた事がまるで物の扱いの様で気に入らないの」

 

雲龍「そんなこと……現に私達は兵器だし……」

 

提督「雲龍」

 

雲龍「はい」

 

提督「確かに君の言う通りだ。俺の考えは倫理ばかり気にした軍人としては甘い考えだと思う。だがな、これは俺の信条なんだ。どうか我慢してくれないか」

 

雲龍「そ、そんな我慢だなんて……」

 

提督「それでも俺は軍人だ。場合によっては君を冷徹に扱う事もあるだろう。だが、極力そうならないようには最善は尽くす」

 

提督「そしてそれ以外の時は俺は君を、君たちと人と同じように接するつもりだ。ようこそ我が鎮守府へ。歓迎する」

 

雲龍「提督……」

 

提督「ああ、それと。ここでは皆俺の事は『提督』ではなく、『大佐』と呼んでいる。よかったら皆もそう呼んでくれると嬉しい」

 

時津風「大佐? 提督は准将じゃないの?」

 

加賀「愛称みたいなものよ。皆この呼び方が好きなの」

 

初風「へぇ……でも、甘くない? さっきの発言だって……」

 

舞風「でも、わたしは好きだなー。りょーかい、大佐! これからよろしくね!」

 

早霜「……巡り巡って、こんな素敵な殿方と出会えるだなんて……」

 

トトッ

 

早霜はそう言うと静かに提督に歩み寄り、そっと抱き着いた。

 

提督「ん?」

 

早霜「大佐……早霜、この貴方との出会いに感謝致します……。どうぞ、よろしくお願いします、ね?」

 

提督「……ああ。よろし――」

 

ギュッ

 

提督「ん?」

 

服を引っ張られる感触がした方向を向くと、そこには顔を赤らめて視線を逸らしている浜風がいた。

 

浜風「その……私も……よろしく、です」

 

提督「ああ。2人ともよろしく頼む」

 

雲龍「……いい、人みたいね。分ったわ。私も大佐の全てに従います」ペコリ

 

どことなくマイペースで掴みどころのない雰囲気を纏っていた雲龍が、此処に来て初めて心からと思える温かい笑みを浮かべて提督に頭を下げた。

 

時津風「時津風も! よろしくお願いしたいです! トッキ―、って呼んでね大佐!」

 

提督「それは絶対しないが時津風、お前もよろしくな」

 

時津風「えー? 呼んでくれないんですかー? でも、いいや。えへへ♪」ギュッ

 

初風「……」

 

気付いてみれば初風は一人だけその場に残されたいた。

厳しい意見を言ってその場の雰囲気を引き締め、あわよくば提督にそれを評価してもらう算段がもろくも崩れた形だ。

 

加賀「無理しなくていいのよ?」

 

地面を見つめながら半分泣きそうになっていた初風に気付いた加賀が優しくそう言った。

 

初風「でも私……」

 

加賀「大丈夫よ。大佐はこのくらいの事、気にする人ではないわ。寧ろ今はあなたが自分から動かないと。このままこれが禍根となって大佐との確執に繋がってもいいの?」

 

初風「う……」

 

ポン

 

初風「あ……」

 

加賀「安心して行ってらっしゃい」

 

頭を撫でられて気持ちの整理がついたのか、初風は意を決して提督との距離を縮め始めた。

 

 

トコトコ

 

初風「あ、あの……ごめんなさい大佐。さっきは私……」

 

提督「いや、初風、君の意見は正しい。だから俺は皆にお願いしたんだ」

 

初風「うん、分かってる……」

 

提督「初風、君もよかったらこの甘い男の戯言に少しだけでいい、耳を傾けてくれないか?」

 

初風「そ、そんな下手にでないでっ。わ、私のほうこそ、その……あの……」

 

いざ言葉にしようとすると気恥ずかしさからなかなか言葉にならなかった。

ただ一言、「よろしく」というだけなのに。

 

提督「……」スッ

 

提督はそんな初風の様子を見て静かに彼女の前に手を差し伸べた。

 

初風「大佐……?」

 

提督「さっそく一つ頼みを聞いてくれたか。ありがとう」

 

初風「え、頼みって……あっ」

 

提督「そう、『大佐』と呼んでくれた。これからもそう呼んでもらえるか?」

 

初風「……! はい!」

 

提督「ありがとう。では諸君、改めてようこそ。我が鎮守府へ」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

加賀「流石は大佐、掴みはバッチリですね」ボソ

 

加賀はその様子を少し離れた位置で見ながら改めて自分が愛した提督を惚れ直すのであった。




磯風は諦めました。
E-6なんて自分みたいなダラダラした提督には無理です。

その代わりに新しい子がたくさん仲間に入りました。
早霜は知っていたけど、初風達まで出るとは思ってなかった筆者は、喜びを通り過ぎて呆然としたのは内緒ですw

そして清霜、見つけられなくてごめんなさい。
また偶然出会えるまで待っててね。

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