扶桑の言っていた通り、鳳翔と一緒に朝食の仕込みを行っていた彼女を直ぐに見つけることができました。
提督「大淀、ちょっといいか?」
鳳翔「あら、大佐。どしたんですか? 大淀さんならこちらに」
大淀「大佐? どうかしましたか?」
提督「ああ、ちょっとお前に報告があってな」
大淀「え、私に報告ですか?」
鳳翔「大佐が艦娘に報告……あっ」
大淀「鳳翔さんどうかしました?」
鳳翔「ふふふ、大佐、私少し席を外しますね」
大淀「え?」
提督「いや、別に居ても構わな――」
鳳翔「ダメですよ?」ズイ
提督「……分かった」
大淀「え? え?」
鳳翔「それでは少しの間失礼しますねー」パタパタ
大淀「行っちゃった……いったい……?」
提督「さぁな……?」
大淀「あ、ごめんなさい。それで、えーと、私にご報告でしたっけ?」
提督「ああ、そうだ。そんなに大した事……いや、お前にとっては重要な事か」
大淀「私に? はい、なんでしょう?」
提督「先ほど、隼鷹達が作戦から戻りAL作戦の完遂を確認した」
大淀「本当ですか? それは、良かったですね!」
提督「ああ、そうだな。あいつらはよくやってくれた。後はMI作戦を何とか成功させるだけだが、まぁその前にだな」
大淀「あ、そうでしたね。私に何か?」
提督「ああ。AL作戦の目的達成、この戦果を上げた者には本部よりある報酬があってな」
大淀「あっ……」
提督「気付いたか? まぁ、そういう事だ。その……今更だがよろしく頼む」
大淀「……」
提督「大淀?」
ゴンッ
提督「っ!?」
放心状態に見えた大淀は、何を思ったのか厨房の流し台に立つといきなり拳を振り上げ、それを力いっぱい振り下ろした。
提督「お……大淀?」
予想だにしない行動に困惑の表情で提督は大淀に話し掛けたが……。
ゴンッ、ゴンッ
彼の声が聞こえていないのか、大淀はひたすら流し台を叩くだけだった。
提督(一体どうしたというんだ? 俺は何か不味い事でも言ってしまったのか? 怒らせてしまったのか?」)
提督は大淀の行動の原因を頭脳をフル回転させて推測しようとしたが、まるで見当がつかなかった。
提督(ん……?)
その時提督は大淀のある変化に気付いた。
大淀「……く……くく」
大淀は耳を澄ませてなければ分からないくらいの小さな声で俯いて拳を打ち据えながら低く笑っていたのだ。
提督(これは、もしかして……)
提督はそこでようやく大淀の行動について理解、もとい理由が解った気がした。
俯いて笑っている大淀の姿は一見すると近寄りがたい雰囲気だったが、長い髪から僅かに覗く彼女の顔は紅潮し、何かを我慢するように小さく身体を震わせていた。
そうつまり彼女は――。
提督(嬉しさは必死に堪えているのか?)
もう一度耳を澄ましてみると彼女の低い笑い声の後から
「くぅっ……」や「もうっ、ふふ……」といった嬉しそうな声が僅かだが漏れ聞こえた。
提督「大淀――」
ゴンッ、ゴン
提督(流し台が最早見る影もないくらいデコボコに……。俺は、今まであんな力で抱きしめられたりしていたのか……)ゾッ
提督(……なるべく落ち着かせるようにして話し掛けなければな)
提督「大淀、嬉しいのは分かるが、それくらいで一度……」
大淀「大佐!」
提督が最後まで言葉を言わないうちに大淀は自分の方から彼の方を向き、満面の笑みで嬉し涙が滲んだ瞳で続けてこう言った。
大淀「ありがとうございます!」
ギュウゥゥゥッ
提督「ふっ……ぐぅっ……」
大淀「大佐……私、私……本当に嬉しくて頭がどうにかなってしまいそうです……♪」
ギュウウウゥゥゥ……
提督「……」(た……耐えろ、俺……。こ、ここで意識を失うわ……け……)
大淀「……? 大佐? どうかしました? さっきからどうして無言で……」
提督「 」
大淀「あっ」
大淀「大佐ぁぁぁぁ!!」
その後、大淀の悲鳴を聞いて直ぐ駆け付けた鳳翔が見たのは、自分の予想に反して提督を抱き上げてオロオロしている大淀の姿だった。
幸い意識は直ぐに回復したものの、これが原因となったのかは定かではないが、以降提督が艦娘に自分から近づくことはあまりなくなったとかなんとか。
現在大淀の改グラを目指して演習奮闘中。
やっぱ最初のグラは違和感を感じるんですよねぇw