提督の憂鬱   作:sognathus

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AL作戦遂行中の不知火達、北方港湾の主力まで目前と言った所まで何とか辿り着いたようです。


第4話 「横殴り」

提督「AL方面の方はどうだ?」

 

扶桑「順調です。今はようやく搖動の本詰め、北方湾港の主力に向かっているところです」

 

提督「部隊の状況に問題は?」

 

扶桑「愛宕と北上が負傷したそうです。大事には至ってないようですが、作戦の続行は難しいらしく、本人達はなかなか受け入れなかったみたいですが、今やっと帰投の途に就いたみたいです」

 

提督「そうか。北上たちの悔しそうな顔が目に浮かぶな。それ以外は?」

 

扶桑「今のところは。後は上手く敵主力を補足してくれればこちらからも支援砲撃を行うだけです」

 

提督「そうか……」

 

扶桑「大佐、大丈夫ですよ。あの子ならきっと――」

 

重苦しい雰囲気の中、その空気を裂くように通信機のブザーが突如鳴った。

 

ビー、ビーッ

 

提督「こんな時に通信? 火急……悪い報せか」

 

扶桑「取り敢えず出ますね。はい、こちら――」

 

提督「……」

 

扶桑「あ、あなたは……」

 

提督「? どうした?」

 

 

~北方AL海域、北方湾港付近

 

鳥海「どう? いる?」

 

岩礁の陰に身を潜めている鳥海が緊張した声で偵察をしている不知火に聞く。

 

不知火「……いますね。確認しました」

 

麻耶「よっしゃ! 後はそいつらをぶっ潰せばこっちは終わりだな!」

 

陽炎「簡単に言わないで下さいよ……。MI方面程でないと言ってもこっちの主力なんですよ?」

 

飛鷹「んー、予定通り決戦に持ち込めば支援砲撃が来るはずだし、それがあれば割と余裕で……」

 

飛鷹が支援を織り込んだ攻撃の計画を立てようとしたときだった。

その時僅かだが隼鷹には砲撃の発射音が聞こえた。

 

ドッ……。

 

隼鷹「飛鷹!」

 

飛鷹「えっ?」

 

ガーン!!

 

麻耶「ちっ、バレたか!」

 

不知火「いえ、泳がされていたのでしょう。油断しているとこを一網打尽を狙ったのでしょうね」

 

いつも通りの冷静な表情で戦闘態勢を取る不知火。

その動作には隙がなく、突如の奇襲にも些かも動揺の色は見られなかった。

 

陽炎「落ち着いてないで反撃行くわよ! 飛鷹さんは大丈夫!?」

 

飛鷹「ええ、なんとか……隼鷹、ありがとう」

 

隼鷹「いいってことよ! でも、これじゃ支援は期待できないかもね……」

 

鳥海「キツイ戦いになりそうね。……っく」

 

不知火「だから何だと言うんです?」

 

支援の可能性が低くなった事で全員が暗い気持ちになりそうだったところに再び不知火の冷静な声が飛んだ。

 

陽炎「不知火、あんた……」

 

不知火「2軍とは思えぬ戦果を見せると約束したんです。違えるつもりはないわ……」

 

背中を見せたまま表情が窺えない不知火はそう淡々と言った。

そっけない態度だったが、そのいつも通りの不知火らしさにその場にいた全員が勇気づけられた。

 

麻耶「駆逐艦の癖に生意気言いやがって……おおっし、やるぞ!!」

 

隼鷹「あいよ! 皆準備はいいかい!?」

 

陽炎「敵補足! 接敵まであと10!」

 

鳥海「了解! さぁ勝負所よ!」

 

飛鷹「いいわね! 負ける気がしないわ!」

 

不知火「勝つんですよ。3、2……会戦します!」

 

不知火達の前に敵艦隊が姿を現した。

規模こそ大きくはないが、フラグシップ級やエリート級のみで構成された精鋭艦隊だった。

 

不知火(相手にとって不足無し……!)

 

覚悟を決めた全力の一砲を見舞おうとしたその時だった。

 

ズドドドドドッ……ドォォォォン!

 

突如あらぬ方向から猛烈な砲撃が敵艦隊を真横から襲った。

 

不知火「っ、これは!?」

 

隼鷹「うわっ、ちち! 熱っ! え、何これ? 大佐達の方からの砲撃じゃないよ!?」

 

飛鷹「あれは……」

 

北上「おーい、みんなー!」

 

麻耶「おいっ、あれ北上じゃないか!?」

 

愛宕「私もいるわよー!」

 

鳥海「愛宕さんまで……え、あの艦隊は……!」

 

 

丁督「おうっ、大佐のとこの! 大丈夫か?」

 

不知火「あなたは……」

 

珍しく驚きに目を見開いた表情で突如現れた知らない提督を見つめる不知火。

 

丁督「お前の所の提督のダチだ。暇だから助けに来たぞ」

 

鳥海「ひ、暇だからって……」

 

丁督「うちは艦隊の数が少なくて作戦に参加できなくてな。だからこうやってお前たちを支援してやろうと探してたところで」

 

北上「帰投中のわたし達に偶然出会ったというわけ」

 

愛宕「ベストタイミングだったみたいね♪」

 

飛鷹「わざわざ提督自ら?」

 

飛鷹は呆れれた目を提督に向けた。

だが、提督はそんな視線を気にする様子もなく、歯をむき出して笑いながらこう

言った。

 

丁督「おう、そうだ! 悪いか?」

 

隼鷹「いや、助かったけどさ。でも……」

 

オオオオオオオ!

 

既に半壊状態にありながらも未だに戦意の衰えを見せず、寧ろ怒りから狂乱状態となった敵が雄たけびをあげて接近しようとしていた。

 

飛鷹「敵はまだ沈んでないわよ!」

 

丁督「へぇ、第一射を乗り切ったか。やるな」

 

不知火「支援は恩に切ます。ですが、油断はしない事です!」

 

丁督「別にしてねーよ。お前ら第二射だ。酸素を燃やせ。次は何も残すな」

 

金剛「了解ヨ! 行くわヨ長門!」

 

長門「ああ、次で決める」

 

日向「艦載機、準備良し」

 

翔鶴「こちらも問題ありませんよ」

 

加賀「……潰します」

 

大井「それは私のセリフよ!」

 

歴戦の強者が提督の指示に意気揚揚に応じ、準備の万端を告げる。

 

丁督「おし……やれ」

 

……ゴォォッ!!

ズ……ォォォォォオオオオン!!

 

2度目の艦砲射撃はまさに圧巻だった。

最初より明らかに濃密な弾幕が逃げ場のない熱の塊となって容赦なく敵を襲い、その上を航空機が悪魔の如く火の雨を降らせた。

 

丁督「油断するなよー慢心するなよー恥かかせるなよー」

 

爆熱で髪の毛が焦げるのも構わず、提督が艦娘達に手を抜かないように激を飛ばす。

 

陽炎「うっ……凄いけど、これ……」

 

隼鷹「うん。流石にやり過ぎじゃないかな……」

 

一部分だけ真昼の様に明るい状況に隼鷹は、提督の艦隊の戦力に戦慄し、冷や汗を流した。

 

不知火「……」

 

丁督「ん? なんだ悔しいのか? 手柄を立てれなくて」

 

皆が事の展開に驚嘆としている中、一人だけ無言で俯いていた不知火に気付いた提督が彼女に話しかける。

 

不知火「……いえ」

 

丁督「間違いなくお前たちだけでもやれたさ」

 

不知火の心中を即座に察した提督は言った。

 

丁督「まぁ今回はアイツの元に無事に戻れる手伝いをしてもらったくらいに思っとけばいい」

 

不知火「……」

 

丁督「そんな顔すんな。大丈夫だって、戻ってアイツの顔を見りゃ直ぐに安心するさ」

 

不知火「……ありがとうございます。ご協力に心から……」

 

丁督「そんな堅苦しい礼の言葉なんていらねーよ。いつものお前みたくビシッとしろ」

 

不知火「……すぅ……ふぅ……」

 

不知火「感謝します」

 

丁督「ああ、それでいい」

 

提督は持ち直した不知火の顔を見て心地よさそうにニッっと笑った。




ゲームでは普通に支援したんですけど、それだと面白味がないので退屈してた中佐に活躍してもらいました。

AL作戦、イベント初戦にしては過去最高の難易度とか言われてるだけありました。
でも慎重に行って時間さえかければ、多少面倒ですけど割と何とかなる感じはしましたね。

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