提督の憂鬱   作:sognathus

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久しぶりの執務の仕事。
その前に秘書艦の扶桑から提督が寝ている間に本部から来ていた作戦の事について話がありました。


第2話 「作戦」

提督「新しい作戦か」

 

扶桑「はい。大佐がお休みになられている間に本部より新しい作戦遂行指示がきておりまして」

 

病み上がりの提督に仕事の話をする事をきにしているのか、すまなそうな表情で扶桑は言った。

 

提督「なるほど。それで概要は?」

 

扶桑「はい。こちらを……」

 

 

提督「ふむ……」

 

提督は作戦の概要書を見て顎に手を当てる。

その渋い表情から今回の作戦の難度の高さが伺い知る事ができた。

 

扶桑「ご覧の通り今回の作戦我が鎮守府の総力を賭すものと考えても間違いないものだと思います」

 

提督「第二次AL/MI作戦か……」

 

扶桑「総力戦である以上所費する資材も相応の量が予測されます。加えて、ほぼ全戦力を投入するため、主力の第一艦隊以外の艦隊にも奮闘してもらわなければいけません」

 

提督「ふむ……」

 

提督はまた考え込むように手で顎撫でた。

 

扶桑「……大佐、失礼とは思いますが私個人の正直な見解を述べてもよろしいでしょうか?」

 

提督「……言ってみろ」

 

扶桑「今回の作戦、大事を取って不参加を決意するのも手だと思います」

 

提督「……資材、弾薬と主力以外の艦隊の事か?」

 

扶桑「はい、そうです。弾薬以外の資材は問題ないものと判断できますが、やはり弾薬が2万では少々キツイと……」

 

提督「して戦力は?」

 

扶桑「第二艦隊以降の戦力は、主に成長レベルが60に達していない者がほとんどです。この戦力で今回の作戦に臨むのは些か不安に思います……」

 

提督「なるほどな」

 

提督は特に表情を変えることもなく、いつもの調子で短く答えただけだった。

 

扶桑「大佐……如何致しますか?」

 

提督「……」

 

目を閉じて瞑想しているかのように考え込んでいる様子の提督。

扶桑はその時ある事に気付いた。

考え悩んでいるはずの提督の表情がどこか先程までと違い、穏やかに見えたのだ。

 

提督「扶桑」

 

暫くして目を開けた提督が静かに扶桑の名前を呼んだ。

 

扶桑「はっ」

 

提督「この作戦、実行する」

 

扶桑「……はっ」

 

予想してなかったわけではなかった。

ただ、自分たちの提督は基本的に慎重派なので、この選択を選ぶ可能性は作戦を実行しない選択に比べて低いだろうと思っていたんのだ。

 

提督「扶桑、心配しなくていい。これから説明してやる」

 

扶桑「大佐……ええ、よろしければお願いします」

 

提督「まず今回の作戦だが、AL作戦に投入する戦力は基本、作戦の目的が搖動にある為、主力以外、所謂二軍を投入することになる。ここまではいいな?」

 

扶桑「はい。その判断は間違っていないと思います」

 

提督「ありがとう。だが、気になるのは二軍の戦力だろう?」

 

扶桑「はい。その通りです」

 

提督「扶桑、我が鎮守府には確かに主力と比較して戦力が劣る艦娘がいる。お前が言った通り主力との戦力差は重要だろう」

 

扶桑「はい」

 

提督「だがな。一つ気付いて欲しいのはその劣る戦力がどれだけいるか、だ?」

 

扶桑「え? どれでだけ、ですか?」

 

提督「そう。数だ。我が鎮守府には一つの育成方針がある。それは知っているな?」

 

扶桑「はい。『総合武力向上計画』ですね」

 

提督「そうだ。この計画に則り俺たちは各艦種にあるノルマを課しているな?」

 

扶桑「はい。戦艦はレベル75、空母は80、重巡は70、軽巡は60、駆逐は50でしたでしょうか?」

 

提督「そうだ。潜水艦を敢えて計画に入れてないのは常に基地周辺の警戒をさせる事によって練度の向上が全艦種の中で特に著しいからなのだが、それはひとまずここでは置いておこう」

 

提督「それでだな。現状その育成方針に則り、お前達を鍛えてきたわけだが。その結果今はどのような状態だと思う?」

 

扶桑「そうですね……。全ての子がノルマを達成しているわけではありませんが、方針のお蔭で現状、新人の要育対象の子を除けばレベルが40より低い子は一人もいなかったと思います」

 

提督「その通りだ。そしてそれが今回俺が、この作戦を実行可能だと判断した肝なんだ」

 

扶桑「レベルが低い子がほぼいないのが重要だと?」

 

提督「そうだ」

 

扶桑「でも大佐、いくらレベルが低くないとはいえ、平均しても50半ばの子で編成を組むのはやはり戦力としては不安では?」

 

提督「そこに関しては出撃前に、遠征前に必ず行っていた集中力強化訓練を行う」

 

扶桑「遠征の前の……あっ」

 

提督「気付いたか? そうだ。この集中力強化によってお前達艦娘は戦果の向上を図ることができただろう? それが遠征の成功率の高さでも証明されているわけだが」

 

提督「今までは単発的にしかこれを行わなかったが、今回は慎重に慎重を重ね、全ての出撃に置いて全艦にこの訓練を義務付ける。それこそいくら面倒でも構わない。必ずこれを実行する」

 

提督「これによって艦隊の攻撃の正確さ、被害の軽減の実現性が増す。更にこれが何に繋がるか?」

 

扶桑「資材の節約、です」

 

提督「満点だ。流石だな扶桑」

 

扶桑「そ、そんな……」ポッ

 

提督「以上の対策により作戦の長期化にさえ焦りを憶えなければ、MI作戦も含めて今回の作戦は十二分に遂行が可能だと俺は判断したわけだ」

 

扶桑「なるほど……慎重の上に慎重を重ねて......。あ、でもそれだと作戦が実行期間が終わってしまう可能性も……」

 

提督「その時はすっぱり諦める」

 

扶桑「大佐……」

 

提督「扶桑、ダメか?」

 

扶桑「……いえ。これなら……この計画なら私も本作戦は十分に遂行可能だと思います!」

 

提督「そうか、ありがとう。なら、今から今回の作戦について全員にミーティングを行うから皆を集めてくれるか?」

 

扶桑「はい! 分かりました!」




実際にこの通りにしました。
全員常にキラキラで実行です。
結果は……次の話で分かるといいなと思いますw

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