提督の憂鬱   作:sognathus

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そろそろ目覚めの時が近いんじゃないかということで、日に日に見舞いに訪れる人の数が増えてきていたある日。


第61話 「起床」

島風「大佐はまだ起きないの―?」

 

那智「まだだ。だが、もう直ぐだぞ」

 

雪風「本当ですか!?」

 

加賀「間違いないわ。あれからどれだけ時間が経っていると思ってるの? 休養はもう純分なはず。後は……」

 

金剛「目覚めの kiss ネ!」

 

足柄「え?」

 

加賀「そうでした。後は接吻だけですね。なら私が……」

 

金剛「ちょ!? ナンバーワンの wife はワタシなのヨ!? ならワタシがすべきだと思いマス!」

 

那智「金剛さんナンバーワンというのは、ケッコンした順番の事だろう? 愛情の順番ならまだ一考の価値はあるがそれではな」

 

足柄「え、那智? なんで大佐の所に近づいて……」

 

那智「いや……ちょっと大佐の汗でも拭いてやろうかと」

 

加賀「ハンカチも持たずにですか?」

 

那智「っ……」

 

金剛「那智ぃ?」

 

加賀「那智さん?」

 

那智「わ、私にだって好きになる権利はあるだろう。だろう、足柄」

 

足柄「え? あの、その」アセアセ

 

加賀「……埒が開きませんね。やはりここは一航戦の代表として私が......」

 

金剛「No! 大佐への love が一番強いワタシが!」

 

足柄「あの、私……私も、その......」

 

4人「……」

 

 

島風「ねぇなんか加賀さん達急に黙り込んじゃってどうしたのかな?」

 

雪風「お、女同士の戦い……」ゴク

 

島風「へぇ~」

 

雪風「……」チラ

 

提督「……」

 

雪風「……!」カァ

 

島風「雪風ちゃんどうしたの?」

 

雪風「えっ? な、なんでもないよ」

 

島風「もしかしてキスの事?」

 

雪風「えっ」

 

島風「大佐にキスをしたら起きるのかな」

 

雪風「ど、どうだろ……」

 

島風「ね、してみたら?」

 

雪風「え!?」

 

島風「雪風ちゃん幸運の艦ってよく言われるじゃん。幸運のキス今こそって思わない?」

 

雪風「そ、そんな急にいわれてもぉ……わ、わたしは……」

 

島風「雪風ちゃんがしないならわたしがやっていい?」

 

雪風「ええ!?」

 

島風「あ、やっぱり雪風ちゃんも大佐の事が好きなんだね」ニヒ

 

雪風「あ、あう……」

 

島風「ねぇ、してみなよ。雪風ちゃんがしてダメならわたしがやってみるからさ」

 

雪風「でも……」チラ

 

提督「……」

 

島風「ゆ・き・か・ぜ・ちゃん?」

 

雪風「っ……、わかった」ポツリ

 

島風「おうっ」

 

雪風「分かったよ島風ちゃん! わたしやって――」

 

 

那智「だから! ケッコンしていようがいまいが、好きならキスをする権利くらいだれにでも……!」

 

スポーン

 

金剛「あ、連装砲……」

 

つい感情的になってその気持ちを身振りで表そうとした那智の振り上げた手から、艦装の連装砲がすっぽりと抜けた。

 

ヒュ~

 

それは綺麗な放物線を描き提督が眠るベッドへと向かっていき……。

 

雪風「分かったよ雪風ちゃん! わたしやって――」

 

ゴンッ

 

提督「!?」

 

バタッ

 

雪風「え?」

 

島風「 」

 

金剛「た、大佐ァ!」

 

加賀「 」サァ

 

足柄「あ、青くなっている場合じゃないわよ! あの落ち方ちょっと……」

 

那智「あ……あ……」ガクガク

 

その場にいた全員が蒼白の顔でベッドから落ちた提督の姿を目で探した。

だが、落ちた拍子に掛け布団も一緒に落ちたので実際にどういう状態になっているのか判らなかった。

 

加賀「くっ……大佐!」

 

やがて冷静さを取り戻した加賀がまっきに様子を確認しようと動こうとした時だった。

 

「ぐ……むぅ……」

 

声がした。

明らかに低い男の声だ。

その場に提督と艦娘しかいなかったので、その声の主は一人しかいない。

 

皆が声がした方を見つめる。

やがて提督と一緒に落ちた布団が明らかに中からの力で動き、徐々にその中身にいたモノが立ちが上がり、それと同時に布団が滑り落ちていった。

 

ムクッ

 

提督「っ痛……。なんだ? 此処は……。皆どうしたんだ?」

 

あまりにもあっさり目覚めてしまった男は、鈍く走る痛みに耐えながら不思議そうな顔で、揃って自分を見ている部下たちを確認してそう呟いた。




ということであっさりですが、提督復活です。

ではまた次の章で。

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