提督の憂鬱   作:sognathus

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今日、提督はお休みです。
休日というわけではなく、寝ています。
どうやら寝床に突くのが面倒でそのまま机に突っ伏してしまったようです。
その様子を就寝前に偶然発見したその日の秘書艦が提督を起こそうとしたのですが......。


第20話 「発覚」

瑞鶴「何よ......これ」ペラッ

 

瑞鶴(開くページ開くページに半裸の男が笑顔でポーズを取ってる)

 

瑞鶴(表紙は男物ファッション誌っぽいけど、それにしても表紙ですらなんかちょっとアレな感じがする)

 

瑞鶴(大佐は殆ど基地にいて、軍服を着てる姿しかわたしは見たことがない)

 

瑞鶴(つまり大佐はファッション以外の目的でこの雑誌を持っていたことになる)

 

瑞鶴「これは......っ」

 

瑞鶴「大佐! 大佐! ちょっと起きなさい!!」ユサユサ

 

提督「ん......瑞鶴か。すまん寝てしまっていたか」

 

瑞鶴「そんなことはどうでもいいの! それよりなんなのよこれは!?」

 

提督「一体何を騒――」←瑞鶴が持っている雑誌が視界に入った

 

瑞鶴「......」

 

提督「......」

 

提督「まぁ、そのなんだ。命に懸けて断言するが俺はそういう趣味はない」

 

瑞鶴(何とか平静を装うとしてるけど明らかに狼狽してるわね。でも目は嘘を言ってない)

 

瑞鶴「じゃぁ、なんなの? これ」

 

提督「説明するから落ち着け」

 

提督「ほら、これに座れ」

 

瑞鶴「......」ムスッ ←椅子に腰かける

 

提督「まず端的に理由だけを言う」

 

瑞鶴「ええ」

 

提督「男を忘れない為だ」

 

瑞鶴「! やっぱり大佐、貴方......!」ガタッ

 

提督「待て。今のは言い方が悪かった。違う。取り敢えず座れ。落ち着け」

 

瑞鶴「......分かった」スッ

 

提督「ふぅ......。この基地は男は俺だけだろう?」

 

瑞鶴「え?」

 

提督「正確に言うと、人間の男性は俺だけだろう?」

 

瑞鶴「え、ええ。そうね」

 

提督「この仕事をずっとやっているとな。信じられないかもしれないが、男というものがどういうモノであったか分からなくなってくるんだ」

 

瑞鶴「へ?」

 

提督「分からないというよりは男の姿に関する記憶が薄れていく感じだな」

 

瑞鶴「え? え? どういうこと?」

 

提督「つまり、男一人大勢の女性に囲まれてる影響で自分が男である自信がなくなってきてしまったんだ」

 

瑞鶴「ええ!? だって大佐どう見たって男じゃない!」

 

提督「まぁ、お前から見たらそうだろう」

 

提督「だが俺にとっては男に関する情報は偶に無線で上官と話すときに声を確認するくらいだ」

 

『姿は見えないが、今は話している相手の声は間違いなく男のものだ。俺は今男と話している。だから俺は男だ』

 

提督「と、軽く自己暗示を掛けないと最近は精神的にきつくなってきたんだ」

 

瑞鶴「し、信じられない......」

 

提督「お前たちの事を狼だと言うつもりはないが、狼の群れの中に立った一匹だけいる羊の心境と言えば解り易いか」

 

瑞鶴「なる......ほど?」

 

瑞鶴「じゃ、じゃぁこの本は?」

 

提督「厳重な本部の検閲を躱して何とか手にいれたお守りのようなものだ」

 

瑞鶴「これが......?」

 

提督「そうだ。馬鹿みたいに思うだろうが、それで自分以外の男を認識することで自分が男である自信が持てるんだ」

 

提督「お蔭で今はすこぶる調子が良い」

 

瑞鶴「なんか大佐が凄く可哀想になってきた」

 

提督「やめろ。そんな目で俺を見るな」

 

瑞鶴「普通、これだけ女子に囲まれていたら喜ぶのが男だと思うんだけど。大佐は特殊なのかしら?」

 

提督「どうかな。だが、少なくとも俺はお前たちをちゃんと全員女性だと認識しているぞ?」

 

瑞鶴「当り前よ!!」バシン ←提督の顔に本を投げつけた




その日、明け方近くまで男女の激しく話し合う声が聞こえたそうです。

一応言っておきますがこの提督はホモではなりません。
ですが軍属なので衆道的な文化にも一定の理解を持っている好漢です。
ですが、ホモではありません。

そして瑞鶴ちゃん、お疲れ様です。

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