提督の憂鬱   作:sognathus

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艦娘の本格的な研究と開発が始まって、前の話から5年後くらいの話です。

暗い話です。


第20話 「終わり」(前編)

艦娘の研究が本格的に開始されてからいくつか新たな事実が判明していった。

 

一つ、純国産でない軍艦を艦娘化した場合、極めて自我に乏しい艦娘が生まれるという事。これは兵器としては理想的であった。

*後にこの定説はある艦娘の存在によって覆る事になる。

詳しい原因は不明だが、ある程度長く運用された軍艦ならこのケースに当てはまらず、次の様な艦娘になり得た。

 

二つ、純国産の軍艦を艦娘化した場合は逆に明らかに性格と呼べる極めて強い自我をもった艦娘が生まれるという事。

これは兵器としては由々しき問題であったが、その代わりにその艦隊娘の戦闘力は、明らかに先に創造された国産ではない艦娘を上回っていた。

 

三つ、例え海外の軍艦でもそれが確実に生産された国で国産として運用されたものならば、二つ目の条件にあてはまる自我の強い強力な艦娘を造る事ができた。

 

四つ、艦娘は誰でも使いこなせるというわけではなく、ある程度適正のあるものが指揮することによって初めてその能力を最大まで引き出す事ができた。

これによって適正があるものを階級に関係なく“提督”という役職を与え、指揮させる為の特別な軍制度ができた。

制度ができると同時に総帥腑から特別勅令徴兵令が発せられることとなり、あらゆる分野から一般人と公人関係なく適性のある人材が集められた。

 

*先に登場していた少将達は元々適正があったらしく、軍人で、しかも高い階級を持ち、艦娘の指揮ができる本物の提督としてエリート的存在であった。

 

五つ、適性のある者は艦娘と提督との間に“絆”を育むことができ、それが強い艦娘ほど戦闘力の工場が通常の艦娘と比べて著しかった。

 

六つ、研究が進むにつれて妖精と言う艦娘に極めて関連性の強い存在が発見された。

これらの更なる研究から妖精自体の複製と艦娘の兵器への転用と強化が可能となり、そこから空母のような特殊な装備を武器として扱える艦娘の本格的な運用できる様になった。

 

七つ、何故かいくら創造しても生まれる艦娘の性別は全て女性であった。

 

八つ、近代化改装によって“使用された方”の艦娘は強化される艦娘と融合する形となり、戦闘力の強化と共にその記憶も受け継いだ。

しかしこれは、非人道的な面が目立つとの意見が軍内部だけでなくさる筋からももたらされ、完全に人間として存在させる技術の確立を目指すきっかけとなった。

解体処分にも同様の技術が導入される事が決定した。

 

そして九つ目、艦娘を兵器としてようやくまともに運用するようになってから暫くして、後に深海棲艦呼ばれる謎の敵対勢力が発生し、世界中の海の安全を脅かすようになった。

 

これらの事実がある程度軍内部での常識として認知されるようになった頃。

 

 

准将(後の親父)「なんだと!」

 

ドンッ

 

元帥「先ほど通告した通りだ。古い艦娘は全て不用品として廃棄処分する」

 

准将「本気で言ってるのか!? アイツらだって生きてるんだぞ!?」

 

元帥「あんな自己主張もできないモノに気を遣う必要はないぞ?」

 

准将「そういう問題ではないだろう! 今まで散々俺たちの為に働いてくれたというのにそれを魚の餌にしろっていうのか!?」

 

元帥「それは安心しろ。我々もそこまで冷酷なつもりはない。処分する艦娘は全て機能停止状態にして投棄用の収納ケースに入れて処分する。なに、大丈夫だ。あいつらは機能停止状態でも死んでるわけじゃないから醜く腐ることもない」

 

准将「くっ......棺桶かよ!!」

 

元帥「いい加減にしろ。これは既に決定した事項だ。何しろこれでもう5度目なんだからな」

 

准将「......なに?」

 

元帥「やはり知らなかったか。無理もないな。お前が一番うるさそうだからな」

 

准将「最近新しい艦娘が目立つと思っていたらそういう事か......!」

 

元帥「因みにこの5度目は准将、お前のための5度目だ。最後に残っている旧式はもうお前のところだけなんだよ」

 

准将「なんだと!」

 

元帥「これは艦娘の育成に絶大な功があるお前への我々からの情けだと思え。急げよ? 明日中には処分しておけ。以上だ」

 

 

バン!

 

准将「......」

 

中将(後の元帥)「准将......」

 

准将「......知ってたのか?」

 

中将「ああ」

 

准将「お前の艦娘達はどうした?」

 

中将「全て抹消した。皆何も言わず霧のように消えたよ......」

 

准将「っ......」

 

中将「最後に残った子が一人だけ私の手を自分から握ってくれた。お礼のつもりだったんだろうな」

 

准将「馬鹿野郎......!」

 

少将(後の大将)「......」

 

准将「少将、お前......は」

 

少将「知ってるだろう? 俺のは全て巡回中に遭遇した深海棲艦に沈められた。全く歯が立たなかった。新型の艦娘を引き連れた援軍が来なかったら俺も危なかったな」

 

准将「そうか、すまない」

 

少将「気にするな」

 

中将「准将、君はどうする?」

 

准将「俺も......征く」

 

中将「......何処へだ?」

 

准将「奴らの巣窟、深海棲艦の存在が最も確認されている魔の海域だ。俺は決めたぞ。俺は自分と自分の娘達の墓をあそこにする」




本格的な暗い話はそういえば初めてですね。
でも、何故か気分はそう落ち込みません。
准将がカッコイイからでしょうか。

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