そしてその日の秘書艦はまた日向でした。
日向「風邪、ね」
提督「......」
日向「また大佐の風邪に立ち会う事になるとはね」
提督「......面目ない。前に本部に行ったとき季節が冬で寒かったから、こことの温度差でひいたのかもな」
日向「なるほどね。今回は安静にしてくれるのよね?」
提督「......ああ」
日向「よかった。待ってて、今リンゴでも剥いて来るから」
提督「すまない」
日向「気にしないで。......やっと私にもチャンスが来たみたいだしね」ボソ
提督「ん? 誰か来たのか?」
日向「独り言よ。はい、リンゴ」
提督「早いな」
日向「実は大佐が風邪っぽいって判断した時点で剥いていたの」
提督「......さっきは兎にしていたのか」
日向「そう。可愛いでしょ?」
提督「兎に剥かれたリンゴなんて久しぶりだ。食べるのが惜しいな」
日向「そこまで言ってもらえると剥いた甲斐があるというものね。はい」
提督「......いや、いい」
日向「あーん」
提督「......あ」
パク
提督「......」シャリシャリ
日向「ん、よく味わってね」
提督「......美味い」
日向「それは良かった。はい」
提督「まだやるのか?」
日向「やらせてくれないの?」
提督「......あ」パク
日向「ふふ、良い子ね♪」
提督「まるで子供だな」
日向「今は、そうであってくれると嬉しいな」
提督「......タオル、冷やしてきてくれないか?」
日向「うん。分かった」
提督「ふぅ......」
日向「お待たせ」
提督「ああ、ありが――」
コツ
日向「......」
提督「......」
日向「うん......良かった。熱は、あまりないようね」
提督「......急に驚いたぞ」
日向「ん? ふふ、キスかと思った?」
提督「風邪が感染るからそれはないな」
日向「大佐とできるなら、感染ってもいいんけどな」
提督「それは俺が受け入れられない。それに」
日向「それに?」
提督「口が乾いてるからきっと臭い」
日向「ええ? ふふっ」
提督「なにか可笑しいことを言ったか?」
日向「ああ、いやすまない。大佐もそういう事を気にするんだなってね」
提督「......女性と付き合ったことがないわけじゃないからな」
日向「おっと、そこまで。くれぐれも今はそこで他の女の名前は出さないでね?」
提督「......それくらいは心得てる」
日向「大佐って、そういう機微には聡いのにもっと単純な事には鈍感よね、何故かしら?」
提督「ん? 何か不快な思いをさせてしまったか?」
日向「ううん、今は私は凄く幸せな気分よ。こんな風に大佐と話す事あまりないから」
提督「幸せとは、ちょっと大袈裟なきがするが」
日向「いいの。幸せに間違いはないんだから」
提督「......そうか」
日向「うん、そう」
日向「......」
チュ
提督「おい」
日向「頬だ。風は感染らないよ」
提督「いや、ヒゲが」
日向「それくらい気にしないわよ。ほら」
チュ
提督「......」
日向「ね?」
提督「ふぅ......」
日向「ん? もしかして照れてる?」
提督「俺も人間だ。恥の感情くらいは持っている」
日向「ふふ、なんか可愛いな」
提督「やめてくれ。男がそんな事言われても嬉しくはない」
日向「そう、それは行幸。攻め手が一つ増えたわ」
提督「おい」
日向「冗談よ。半分ね」
提督「敢えてもう半分は......」
日向「本気よ。私、大佐を攻めたい」
提督「......今は駄目だぞ」
日向「分かってる。ねぇ」
提督「ん?」
日向「風邪、治ったら......もっと、恥ずかしい事しない?」
提督「......風邪が治ったらな」
日向「っ、ほ、本当?」
提督「そんな顔しないでくれ。本当だ」
日向「っ......、嬉しいな。これで私も恋人になれるのかな」
提督「別にしないとなれないというわけじゃ――」
日向「したい」
提督「......そうか」
日向「ねぇ」
提督「うん?」
日向「その......本番の前に心の準備をさせて欲しい」
提督「ああ、看病助かった。休んで――」
日向「違う」ジトッ
提督「......今のは鈍かった、か?」
日向「そうね。ま、気づけただけマシだけど」
提督「それで、準備と言うのは?」
日向「一瞬でいいから抱き締めてほしい」
提督「......感染したくはないんだがな。それに汗が......」
日向「分かってる。汗も気にしない。だから一瞬」
提督「......ほら」
日向「あ......」
ギュッ
提督「......大丈夫か?」
日向「......汗? ああ、気にならないくらい今幸せだからね」
提督「そうか」
スッ
日向「ありがとう」
提督「いや」
日向「寝るまで、ここにいていい?」
提督「......お前さえよければ」
日向「ありがとう。好きよ、大佐」
日向2回目の風邪の看病にてようやく結ばれそうな予感。
最初の方に出たキャラなのに結構時間かかりましたねぇ。
あ、はい。
私の所為です、ハイ。