提督の憂鬱   作:sognathus

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提督は昇進祝いから鎮守府に帰った次の日、先ず自分が不在の間基地の管理をやってくれていた赤城や天龍達にお礼を言ってその労を労いました。

そして最後に机の上のいつも通りの場所に置いてあるサボテンを確認すると、島風と雪風、そして加古を呼びました。


第4話 「サボテン」

提督「島風、雪風」

 

島風・雪風「はいっ」

 

提督「俺がいない間、ちゃんとサボテンの世話をしてくれていたみたいだな。ありがとう」

 

雪風「いいえ! 雪風達は殆ど何もしていませんから」

 

島風「そうだねっ。わたし達の部屋に置いてちゃんとお日様に当てて、時々虫が付いてないか見てただけだもん」

 

提督「それでも十分だ。コイツとは長い付き合いだからな。大事にしてもらって嬉しい」

 

雪風「あ......そ、そんな。そこまで褒められる事なんて」テレ

 

島風「島風たちエライ? 凄い!? ありがとう大佐♪」ピョン

 

提督「ああ。二人ともよくやってくれた」ナデナデ

 

島風・雪風「えへへ♪」

 

加古「......」

 

提督「加古」

 

加古「は、はいっ」

 

提督「お前も俺がいない間、駆逐艦達の面倒をみてくれてありがとう」

 

加古「あ、いやっ。あたしは別に.....赤城や天龍たちが殆ど基地の事はやってくれてたし......」

 

提督「それでもこのサボテンを島風達と一緒に面倒を見てくれたろ? それだけでも十分だ」

 

加古「は、はぁ......」(アレ、ただのサボテンだよな? そうだよな?)

 

加古「......あの~」

 

提督「ん?」

 

加古「そのサボテンってそんなに大事なものなの? 普通のサボテンだよね?」

 

提督「ああ......。確かに何の変哲もない普通のサボテンだぞ」

 

雪風「えっ」

 

提督「ん? どうした?」

 

雪風「わ、わたしこのサボテン、凄く価値のあるものだと思ってました」

 

提督「はは、価値か。まぁ普通だな1000円くらいか、適当だが」

 

島風「違うよ! 1000円なんかじゃないでしょ!」

 

加古「え? 島風?」

 

島風「そのサボテン、大佐の大事な友達なんでしょ? だったら1000円なんて値段なわけないじゃん! 価値なんて付けられないよ!」

 

雪風「島風ちゃん......」

 

加古「あ......」

 

提督「......島風の言う通りだ。加古、質問に答えるのが少し遅れたが、さっきも言った通りこれは普通のサボテンだ。だがな」

 

雪風「友達なんですね? 提督の」

 

提督「まぁ友達と言うより相棒みたいなものかな。何しろ俺が赤ん坊の頃からの付き合いだからな。もう20年以上になる」

 

島風「そんなに!? すごーい!」

 

加古「こんなにちっちゃいのが20年も......ははぁ」

 

雪風「友達というのは本当だったんですね!」

 

提督「ああ。あながち間違いではないな」

 

島風「ねぇ大佐」

 

提督「うん?」

 

島風「名前は?」

 

提督「ん?」

 

島風「名前! この子、名前は何て言うの?」

 

提督「名前? いや、名前は特に......」

 

島風・雪風「えー?」

 

提督・加古「え?」

 

島風「赤ちゃんの頃からの友達なのに名前がないの!?」

 

雪風「それ、可哀そうです!」

 

提督「......そうか?」チラ

 

加古「えぁや!? あ、あたしに聞かない下さいよ!」

 

島風「そうだよ! 名前がないのは可哀そうだよ!」

 

雪風「そうです!」コクコク

 

提督「ふむ、じゃあ付けるか。何がいいだろう。加古は?」

 

加古「ええっ、いきなりあたしですかぁ? うーん......そうだなぁ」

 

島風「ドキドキ」

 

雪風「ワクワク」

 

加古「あ、3号とかどうです?」

 

島風・雪風「 」

 

提督「......一応、何から思い付いたのか教えてもらえるか?」

 

加古「やぁ、20.3cm砲が......」

 

島風「ダメ!」 雪風「だめです!」 提督「却下だ」

 

加古「即答!?」

 

島風「そんなの全然可愛くないよ!」

 

雪風「数字の名前なんてあまりにも可哀そうです」

 

提督「自分の願望を人の大事なものに被せるな」

 

加古「あははは......そ、そんなにダメだったかな」

 

島風「い・や!」

 

雪風「めっ!」

 

提督「そういう事だ。では二人はどうだ?」

 

島風「わたし? えへへ、わたしはねぇ。 トゲピー!」

 

雪風「わたしは雪雲です!」

 

加古「へぇ、トゲピーか。可愛いんじゃない?」

 

島風「えへへ~、でしょー?」

 

提督「雪風のその雪雲というのは?」

 

雪風「建造の予定だけあった駆逐艦の名前です。わたしの字が入ってるのでその......選びました」

 

提督「ふむ......」

 

加古(あ、これは決まったかな)

 

提督「島風」

 

島風「なに?」

 

提督「雪雲でいいか?」

 

雪風「た、大佐」

 

島風「え? うーん......『ゆっきー』って呼んでもいい?」

 

提督「雪風?」

 

雪風「え? い、いいの? 島風ちゃん?」

 

島風「ゆっきー、って呼んでもいいならね!」

 

雪風「うん......勿論だよ! ありがとう島風ちゃん!」

 

島風「雪風ちゃんが考えた名前なんだもん、いいに決まってるよ!」

 

加古「あのー」

 

提督「ん? なんだ、異見か?」

 

加古「ああ、いやそうじゃないんだけど。大佐は何か考えなかったの?」

 

島風「あ」

 

雪風「そ、そうですよ! 大佐の友達なんですから一応大佐も考えないと!」

 

提督「俺も? ふむ......ミッドウェーとかどうだ?」

 

加古「......一応聞くけど、どうしてその名前に?」

 

提督「失敗に終わったMI作戦、その悲劇を繰り返さないた――」

 

加古「雪雲だね」

 

島風「うん!」

 

雪風「です!」

 

提督「......そうか」




かなり最初の方の話で提督の机の上にサボテンが置いてあったのを思い出して、この話が浮かびました。
や、筆者もサボテン育ててるのもあるんですけどね。

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