提督の憂鬱   作:sognathus

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大潮を伴って釣りをしている提督。
今日も何時ものごとく一匹も釣れてませんでした。


第51話 「釣り3」

大潮「釣れないですねー」

 

提督「だめだぞ大潮。釣れないのも楽しめるようにならなければ」

 

大潮「! そうでした」

 

提督「いや、そう気合いを入れるもんでもない」

 

大潮「うー......難しいです」

 

提督「女子と釣りはやっぱり相性が良くないのかもな.......」

 

大潮「えっ、そ、それって......大潮が大佐の邪魔をしてるっと事でしょうか......!?」

 

提督「考えが飛躍し過ぎだ。そんな事はない」

 

大潮「そ、そうですか。良かったぁ......」ホッ

 

提督「それだ」

 

大潮「え?」

 

提督「別に釣れなくてもこうやって青空の下、話しながら釣りをするのは楽しいだろう?」

 

大潮「あ......」

 

提督「ふっ......理解できたか」ポン

 

大潮「は、はい! 大潮解りました! それと頭を撫でてくれてありがとうございます!」

 

提督「こんな事くらいでお礼は言わなくてもいい。ほら、釣るぞ」

 

大潮「はい!」

 

 

大潮「海の上からはお魚が見えるのに何で釣れないないんでしょう」

 

提督「海が綺麗だからな。餌にも困ってなくて、もしかしたら今は満腹なのかもな」

 

大潮「場所、変えます?」

 

提督「いや、綺麗な海を見るのもいいだろう?」

 

大潮「そうですね!」

 

 

大潮「うぅ......」コシコシ

 

提督「眠いか?」

 

大潮「あ、いえっ!」

 

提督「気にするな、気持ち良いからな。寝ていいぞ」

 

大潮「で、でもぉ......」

 

提督「ほら、膝を貸してやる」

 

大潮「あ......本当にいいんですか?」

 

提督「寝る子は何とやらだ。目が覚めた時のお前の成長振りに期待しているぞ」

 

大潮「あ......ま、任せてください! あ、それじゃお休みないですー......」

 

 

大潮「すー......すー......」

 

提督「ふっ......」ポン

 

矢矧「良い顔ね」

 

提督「矢矧」

 

矢矧「デートのときはあんな顔見せてくれなかったわよ?」

 

提督「ああ、ヌイグルミの時の事か」

 

矢矧「隣、いいかしら?」

 

提督「ああ」

 

矢矧「ん......」

 

提督「どうした?」

 

矢矧「私? いや、海を見るのが好きなの。そしたら大佐を見つけて」

 

提督「そうか」

 

矢矧「うん......」

 

提督「一人で海を見るのは好きか?」

 

矢矧「え?」

 

提督「......」

 

矢矧「......ううん。実はあんまり」

 

提督「直接経験したわけでもないのに昔の記憶があるというのも辛いものだな」

 

矢矧「私たちが私たちでいられる理由でもあるからね。気に入らなくてもやっぱり必要だと思うわ」

 

提督「頼もしいな」

 

矢矧「ふふ、嬉しいけどその言葉、女としてはなんか複雑ね」

 

提督「気に障ってしまったか」

 

矢矧「あ、ううん、別に。ちょっと嬉しかったし」

 

提督「そうか、安心した」

 

矢矧「うん......」

 

提督「......」(本当に釣れないな。ハゼでもいいんだが)

 

矢矧「ねぇ」

 

提督「うん?」

 

矢矧「この前にみたいにさ......」

 

提督「ん?」

 

矢矧「で、デートっぽい事していいかしら?」

 

提督「というと?」

 

矢矧「大佐の肩に寄りかかったり、とか」

 

提督「それくらいなら。眠くなったら寝てもいいぞ。夕方までは釣るつもりだからな」

 

矢矧「それは夕方まで釣れないままでいる、という事? それとも夕方までには何か釣るって事?」

 

提督「......」

 

矢矧「そ、そんなに釣れないの?」

 

提督「......よく履歴書の趣味の欄に『釣り』と書く男は大体嘘をつているという風潮があるみたいだが、俺は本当に趣味でやってるんだがな......」

 

矢矧「最後に釣ったのは?」

 

提督「......大鯨だ」

 

矢矧「へ?」

 

提督「いや、もう随分前だ。何を釣ったのかも忘れてしまった」

 

矢矧「そ、そう。あ、じゃあちょっと失礼するわね」

 

提督「ああ」

 

矢矧「ん......」

 

提督「肩、硬くて痛くないか?」

 

矢矧「不思議とそんなに」

 

提督「そうか。まぁ、大丈夫ならいい」

 

矢矧「うん......。あ、本当に眠くなってきちゃった」

 

提督「寝ていいからな」

 

矢矧「それじゃ、お言葉に甘えようかしら」

 

矢矧「あ」

 

提督「どうした?」

 

矢矧「えーっと......ね、寝てるからって変な事しないでね?」

 

提督「大潮を見ろ。信用しろ」

 

矢矧「うん、それ。聞きようによってはとんでもない誤解を招くから。気を付けてね」

 

提督「?」

 

矢矧「何でもないわ。おやすみ」

 

提督「ああ? ああ......」

 

 

大潮「......すぅ」

 

矢矧「ん......すぅ......」

 

提督「二人ともよく寝てるな」

 

矢矧「......大佐ぁ」

 

提督「ん?」

 

矢矧「わらし......私も釣って......いいの......よ......」

 

提督「......」(聞かなかった事にしよう)




大潮って人気ないんですかね?
あの子の元気は駆逐艦の中でも随一だと思うですが、そこが可愛く思えないかなぁ......。

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