提督の憂鬱   作:sognathus

174 / 404
風呂上り、提督が部屋から廊下に出ると偶然龍田と会いました。
彼女も湯上りだったらしく、その身体から僅かながらの湯気と微かな石鹸の匂いを放っていました。

ハッキリ言って良い匂いでした。


第50話 「湯上り」

提督「ふぅ......」

 

龍田「あらぁ、今上がり?」

 

提督「龍田、お前もか」

 

龍田「そうよぉ。でも大佐、こんな遅い時間にお風呂なんて一体いつまで仕事をしていたの?」

 

提督「ついさっきまでだ。目処が着いたからひとっ風呂浴びて......」

 

龍田「まさかもう一仕事?」

 

提督「いや、風が涼しくて気持ちいから外に行こうかと」

 

龍田「へぇ......。ねぇ、それ私も一緒に行っていい?」

 

提督「ん? ただ、酒一缶片手に煙草を吸うだけだぞ?」

 

龍田「それでもいいわ。ね、いいでしょ?」

 

提督「酒は飲むか?」

 

龍田「ちょっとだけなら」

 

提督「そうか。なら行くか」

 

龍田「やった♪」

 

 

~鎮守府、艦隊娘用居住棟屋上

 

龍田「涼む時は何時も此処なの?」

 

提督「いや、割とバラバラだ。海岸に行ったり自室で窓を開けたり」

 

龍田「そ」

 

提督「さて、先ずは開けるか」

 

龍田「お酒ね」

 

提督「ああ。龍田はこれだ」

 

龍田「お猪口? でも、それじゃ大佐は」

 

提督「俺も杯を持ってきた」

 

龍田「漆杯......お洒落ねぇ」

 

提督「そんなに飲むつもりはないからな。今日はこの一缶を二人で分けよう」

 

龍田「ええ、いいわよ」

 

提督「それでは注いでやろう」

 

龍田「え、いいわよ私は。大佐に注いでもうらうなんて......」

 

提督「こういう時は仕事の事は忘れろ。今はただの親しい仲同士だ」

 

龍田「いいの?」

 

提督「遠慮するな。ほら」トクッ

 

龍田「ん......ありがと」

 

提督「焼酎だが大丈夫か?」

 

龍田「飲んだことないから分からいけど、でも多分大丈夫」

 

提督「口に合わなかったら直ぐに飲むのを止めろよ」

 

龍田「もう、そんなに心配しないでよぉ。はい、私も注いであげる」トクトクッ

 

提督「ありがとう」

 

龍田「どう致しまして♪ はい、それじゃ」

 

提督「乾杯」

 

コチンッ

 

提督「......ん」ツイ

 

龍田「ん......」コク

 

提督「ふぅ......どうだ?」

 

龍田「ん......はぁ、ちょっと......辛い? かしら。匂いもなんか独特ね。嫌じゃないけど」

 

提督「黒糖の焼酎だ」

 

龍田「お砂糖? 甘くないわね」

 

提督「一応サトウキビの汁が使われているがハッキリ判る程の甘さは無い筈だ。どちらかというと口当たりの良さとまろやかさが特長だな」

 

龍田「へぇ......アルコールも結構高い?」

 

提督「この種の焼酎で25度より下はは見たことがないな」

 

龍田「25......決して低くはないのね」

 

提督「そうだ。だから例え味に抵抗はなくてもあまり無理して飲むなよ」

 

龍田「私はお猪口よ? 流石にこれ一杯で酔ったりはしないわぁ」

 

提督「ならいいんだが」ツイ

 

龍田「大佐はこのお酒よく飲むの?」

 

提督「俺は酒は焼酎派だからな。だからと言って他の酒が飲めないわけじゃないが」

 

龍田「強いのが好きなのね」

 

提督「そういうわけでもないんだが、焼酎は二日酔いし難いからな。あと、やっぱり味か」

 

龍田「ふぅん......ぺろ。やっぱりまだ私には味がよく解らないわねぇ」

 

提督「鼻で香りも楽しめるようになれば、少しは美味しく感じるかもしれないぞ」

 

龍田「香り?......すん。......あ」

 

提督「どうだ?」

 

龍田「さっきは独特の匂いとか言ったけど、良く嗅いでみたら匂いが少し甘い」

 

提督「気づいたか、そういう事だ。これは甘さ自体が完全に消えたわけじゃない。香り程度はちゃんと残っているんだ」

 

龍田「香りを楽しみながら......飲む......」コク

 

龍田「......美味しい」

 

提督「良かった」

 

龍田「お酒はただ飲むだけじゃダメね」

 

提督「そうだ。自分でも楽しまないとな」シュボッ

 

龍田「あ、煙草......」

 

提督「あまり吸わないようにはしてるんだが、気分が良い時は、な」

 

龍田「そういうものなの?」

 

提督「こればかりは喫煙者にもよると思う」

 

龍田「ふーん」

 

提督「......ふぅ」

 

龍田「ねぇ」

 

提督「ダメだぞ?」

 

龍田「えぇ、私まだ何も言ってないわよぉ?」

 

提督「煙草を吸ってみたい、だろ? ダメだ。これは興味本位であまり始めない方がいい」

 

龍田「じゃぁ、どういう時に始めたらいいの?」

 

提督「......気分、かな」

 

龍田「ふふ、何それ」

 

提督「何となく吸ってみたくなって吸ってみたら、これが予想外に心地よさを感じた。俺はこれがきっかけだった」

 

龍田「ねぇ、それってどんな時だった?」

 

提督「......今日みたいに風が心地よくて星が良く見える夜だったな」

 

龍田「一人で吸ったの?」

 

提督「ああ」

 

龍田「誰かと吸ったりはしなかったの?」

 

提督「ない事もないが、こういう時は大体一人か気心の知れた人とでないと吸いたくはないな」

 

龍田「ねぇ、それって......もしかしてこうして誰かが隣にいて吸うのは初めて?」

 

提督「......そういえばそうだな」(彼女は煙草が嫌いだったからな)

 

龍田「っ、......」ギュッ

 

提督「龍田?」

 

龍田「あ、顔見ないでね。今何だか凄く幸せな気分でだらしない顔してると思うから......」

 

提督「ああ......」

 

龍田「ねぇ、大佐」

 

提督「ん?」

 

龍田「好きよ?」

 

提督「......そうか」ポン

 

龍田「あ......うふふ♪」ギュウ




湯上りの龍田ってなんだか色っぽいですよね。
あ、それだけです、ハイ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。