提督の憂鬱   作:sognathus

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その日の秘書艦は山城でした。
彼女は提督の仕事を手伝わずに物憂げな様子で窓を見つめるばかりです。
何となく声が掛け辛い状態だったので、取り敢えず提督はそのまま黙々と仕事をしていたのですが......。


第39話 「鬱」

山城「大佐、良い天気ですね」

 

ピシャッゴロロ!

 

ザァザァ......

 

提督「......」

 

山城「あらぁ? 急に嵐になっちゃうなんて、無礼にも姉様の真似をしちゃったからかしら?」ニヤァ

 

提督「......ズズ」

 

山城「まぁ、私なんてどうせ欠陥戦艦だし......こんな事言ったところで......」

 

提督「......」パラパラ

 

山城「はぁ......不幸だわ」フゥ

 

提督「......」カキカキ

 

山城「ちょっとぉ!!」バン

 

提督「やめろ、机を叩くな。字がズr」

 

山城「そんな事より何さっきから無視してるんですかぁ!?」

 

提督「......声を掛けて貰いたかったのか?」

 

山城「当たり前です!」バンバン

 

提督「叩くな。......前から思っていたが山城、お前の感情表現は解りにくい」ビシッ

 

山城「うっ......」

 

提督「憂鬱な気分なのは判るが、さっきまでの独り言では逆に声を掛け難いぞ?」

 

山城「そ、それでもぉ......」ウル

 

提督「泣くな。取り敢えず仕事をしろ。そうすれば仕事をしながら話を聞いてやるから」

 

山城「そこはせめて慰めてから仕事をする、って言って下さいよ!」

 

提督「駄目だ。今は余裕がないし、お前の力量を信じての事だ」

 

山城「わ、私の力......」

 

提督「別にお前は戦闘が全てというわけじゃないだろう?」

 

山城「あ......」

 

提督「鳳翔が料理が上手かったり、霧島が見た目に反して好戦的だったり、人には意外な長所があるものだ」

 

山城「大佐......」(最後の霧島のはどうなのかしら)

 

提督「助けてくれないか?」

 

山城「ええ! 分かりました! お任せください!」パァ

 

 

――2時間後

 

提督「......なるほどな、欠陥戦艦のジンクスから抜け出せないのと、俺に姉が取られそうで嫉妬していたわけか」

 

山城「もうちょっとオブラートに包んでくれないですか!? 直球過ぎです!」

 

提督「ここは下手に遠まわしに言うよりいいと思ったんだが」

 

山城「まぁ大佐らしいですけど......」

 

提督「ふむ。まず前者についてはそんなことはないと思う」

 

提督「お前は“航空戦艦”としては立派に活躍しているし、気にしている性能の落差も艦隊のメンバー編成によっていくらでもカバーできるしな」

 

山城「そ、そうかしら......」

 

提督「火力の低さを気にしているのか? 大丈夫だ。その代わりにお前は艦載機を搭載できる“戦艦”なんじゃないか」

 

提督「しかもその種の戦艦は現状、伊勢型とお前達扶桑型しかいない。これはなかなか貴重な存在なんだぞ?」

 

山城「う、うん......」

 

提督「それに、今後例え同種の新艦を抱えることになったとしても、それによってお前たちの扱いは変わること無い。これは予め約束する」

 

山城「大佐......」

 

提督「だから、な? 自信を持て」ポン

 

山城「あ、ありがとう......ございます。えへへ♪」

 

提督「後は扶桑の事か......。これは単純に俺が彼女の好意を丁重に断れば済む......」

 

山城「あ、それ却下です。それやったら姉様泣いてしまいます。そして泣いたら私もしかしたら大佐を......」

 

提督「物騒な事を言うな」

 

山城「まぁ、どうするかは半分冗談として」

 

提督「半分は何をするつもりだったんだ」

 

山城「(無視)姉様を泣かせるのは認められません」

 

提督「泣くのは確定なのか」

 

山城「悔しいですけど、姉様大佐の事大好きですから」

 

提督「......そうか。光栄の限りだがそれだとどうすればいいものか」

 

山城「簡単ですよ。私も大佐が好きになればいいんです」

 

提督「なに?」

 

山城「私も大佐が好きになれば、私の大佐への嫉妬心は今よりかはマシになると思います。この人なら好きになるのも仕方ないって」

 

提督「それはあまりにも強引な理論じゃないか?」

 

山城「大佐は私が嫌いなんですか?」

 

提督「極端だぞ。好きか嫌いの二択なら選択肢は一つしかないじゃないか」

 

山城「え? と、と言うと......?」

 

提督「好き、しかないだろう」

 

山城「きゅ、急に恥ずかしい事言わないで下さい!!」カァ

 

提督「......一体どうしろと」

 

山城「と、取り敢えずもう仕事終わってますよね?」

 

提督「ん? ああ、お蔭様でな。ありがt」

 

山城「じゃ、じゃぁこ、恋人になるステップとして私を抱きしめてください」

 

提督「おい、『好きになる』から既に『恋人になる』へステップアップしてるぞ」

 

山城「っ、い、いいですから! は、早く!」

 

提督「......もう直ぐ昼休みか。分からった、ほら」

 

ギュ

 

山城「あ......。そ、そのまま大佐の膝に座ってもいいですか?」

 

提督「ああ」

 

ギシ......

 

提督「これでいいのか?」

 

山城「ん......あ、あと......」

 

提督「ん?」

 

山城「わ、私がいいって言うまで頭撫でて下さい」

 

提督「了解」

 

ナデナデ

 

山城「ん......ふぅ......。そう、です。あ......うん、そのままですよ? まだ......まだですよ......?」

 

 

――数分後

 

山城「すー......すー......」

 

提督(案の定寝てしまった。これでは、撫でるのを終わる事ができないな)

 

グゥ......

 

提督「腹......減ったな」




扶桑より山城派の筆者です。
姉様LOVEではある意味、山城は比叡を超えるものがあると思います。
しかし、だからこそこっちも向いて欲しいものです。

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