提督の憂鬱   作:sognathus

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その日は彼女が本部へ戻る出立の日。
提督は漣と天龍を連れてお見送りに来ました。


第23話 「出立」

彼女「それじゃそろそろ行くわね」

 

提督「ああ、元気でな」

 

彼女「あなたも。あまり無理してはだめよ?」

 

提督「分かっている」

 

武蔵「大佐、またな。短い間だったが色々楽しかった」

 

提督「武蔵、あっちにいる親父殿や大和にもよろしくな」

 

武蔵「承った。必ず伝える」

 

天龍「おい漣、武蔵ってあんなだったか?」コショ

 

漣「いいえ。少なくとも漣が知っている武蔵さんはもっとツンツンでした」コショ

 

天龍「大佐だと思うか?」コショ

 

漣「多分」コショ

 

提督「おい、二人とも何をこそこそしている。別れの挨拶くらいしっかりしないか」

 

天竜「っと、悪ぃ。あー......えっと、しょ、少将殿もお元気で?」

 

武蔵「なんで疑問形なんだ。あと、上官に対しては敬語を使え」ギロ

 

天龍「申し訳ありませんでした!」(あれ? やっぱりいつも通り?)

 

漣「申し訳ありませんでした!」(気のせい?)

 

彼女「武蔵、それくらいでいいわよ。礼儀を教えるのはいいけど、あまり高圧的にしてもダメよ?」

 

武蔵「む......すまない。二人とも悪かったな」

 

天龍「へ? ああいや、べ、別に気にしてないぜですから!」

 

漣「天龍さん言葉が......お心遣いありがとうございます!」

 

彼女「ふふ......大佐、いい娘に育ててるじゃない」

 

提督「俺がこいつらに恵まれていただけだ。運が良かった」

 

彼女「そう? まあいいわ。あ、本当にそろそろ行かないと。武蔵」

 

武蔵「うむ」

 

武蔵は港から海の上に浮上すると、白く光って戦艦の姿へと変わった。

 

天龍「ほえー、いつ見てもでっけーなぁ」

 

漣「カッコいいですっ」

 

彼女「当然よ。私の自慢の娘だからね」

 

提督「いいコンビだ」

 

彼女「ふふ、ありがとう。あ、大佐」

 

提督「ん?」

 

チュ

 

天竜・漣「 」

 

彼女「......うん。これでいい。じゃ、またね」

 

ブォォォォォ

 

 

提督「......」

 

天龍「なぁ、大佐」

 

提督「なんだ」

 

天龍「今の、何?」

 

提督「なに、とは?」

 

漣「キスの事です!」

 

提督「ああ、仲直りをしたからな」

 

天龍「仲直りしたらキスをするのか!?」

 

漣「それって本当ですか!?」

 

提督「何を言っているんだお前達は」

 

天龍「......よし、俺は大佐に宣戦を布告するぜぇ」

 

提督「布告してどうする。戦争でもする気が」

 

天龍「喧嘩だ! んでもって仲直りしてキスだ!」

 

漣・提督「......」

 

漣「その発想はなかったです!」

 

提督「いや、違うだろ。明らかに思考がおかしいと思わないのか。故意に喧嘩をしては、仲直りも何もあったものじゃないだろ」

 

天龍「えっ、そ、そうなのか?」

 

提督「......今度龍田に教えて貰え」

 

天龍「龍田に喧嘩を売れって事か。解ったぜ!」

 

提督「......」(いい薬になりそうだから黙っておこう)

 

漣(え、止めないの?)

 

天龍「あー、でもいいなぁ。俺も彼氏欲しいなぁ」チラ

 

提督「那智なんかどうだ? 性格も凛々しくて、お前の事も守ってくれそうだぞ」

 

天龍「那智は女じゃねーか!」

 

提督「一応それに気づくくらいには頭は大丈夫だったか」

 

漣(ひどい......。でも、天龍さんなら仕方ない気もする)

 

提督「漣」

 

漣「え? あ、はい。なんでしょう?」

 

提督「お前も彼氏が欲しいのか?」

 

漣「ええ!? な、なんですか急に!?」

 

提督「いや、天龍を見てたら何となくな」

 

天龍「それってどういう意味だよ!?」

 

提督「(無視)で、どうなんだ? 答え難いなら別にいいが」

 

漣「あ、欲しいかも......です」

 

提督「そうか、判った。天龍、手を」

 

天龍「え? な、なんだよ......ほら」サッ

 

提督「漣も、いいか?」

 

漣「あ、はい。お願いします!」

 

提督「うむ」

 

ギュッ

 

天龍・漣「え?」

 

提督「おめでとう。カップル成立だな」

 

天龍「だから俺は女で、漣も女だろうが!」

 

漣「い、いくら男っぽい天龍さんでも漣は、ちゃんと男の人がいいです!」

 

天竜「誰が男っぽいだ!」

 

漣「いつもじゃないですか!?」

 

提督「こら、二人ともやめないか」

 

天龍「でも大佐、漣が......」

 

漣「何言ってるんですか! もとはと言えば天龍さんが男っぽいのが......」

 

提督「まぁ、そこまでにしておけ。ほら、天龍仲直りのキスだ」

 

天龍・漣「え?」

 

提督「ん? 天龍は喧嘩をして仲直りのキスをしたいんじゃなかったのか?」

 

天龍「大佐......最初から俺を躱す為に嵌めたな?」

 

漣「あざとい! あざといです大佐!」

 

提督「漣には悪いが、天龍を見ていると何となくな」

 

漣「あ、それ解ります」

 

天龍「なんでだよ!?」

 

ギャーギャー

 

それは、少将との別れを惜しむ気持ちを誤魔化す為だったのか、提督の狙いは見事的中し、その帰り道は基地に着くまでずっと賑やかだった。




あぁ、久しぶりに軽い話を書いた気がします。
こういうネタがポンポン浮かべばいいのですが。

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