提督の憂鬱   作:sognathus

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映画のソフトを見つけた大佐。
その日は晩酌をするつもりでしたが、映画鑑賞会にする事に決めたようです。
その日に呼ばれたのは伊勢と日向の姉妹。
さて、晩酌に付き合うつもりで来た2人の反応は?


第46話 「映画」

伊勢「映画......ですか」

 

提督「そうだ。何となく部屋の整理をしていたら、映画のソフトが出てきたんだ。多分、実家から荷物を持ち出すときに紛れていたんだな」

 

日向「大佐は映画が好きなの?」

 

提督「好き嫌いで言うなら、間違いなく好きな方だ。此処に着任してからも町の映画館には偶に足を運んでるくらいには好きだな」

 

伊勢「そうだったんですか。てっきり大佐の趣味は釣りと煙草くらいだと思ってました。あ、あとお酒か」

 

提督「酒はともかく、煙草は時間つぶしの目的に近いからな。本当の意味で趣味というとやはりこれか」

 

日向「この前、長門から聞いた分には映画が趣味というのは初耳ね」

 

提督「あの時は、いろいろ追いつめられていたからな。人間、余裕がなくなるとすぐ傍にある助けには意外と気づかないものだ」トオイメ

 

伊勢「一体、何を追いつめられていたの......?」

 

提督「些末な事だ。とにかく、せっかく出て来たわけだし一緒に観ないか?」

 

日向「てっきり晩酌の相手だと思ってたけど、こういうのもいいか」

 

伊勢「私はどっちかというとお酒はあまり強くないからこれは寧ろ歓迎よ♪」

 

提督「酒も一応用意してあるし、ジュースもある。これで口が寂しくなる事もないだろう」

 

日向「気が利いてるな。そういう心遣いは心ときめくよ」

 

伊勢「なに大袈裟な事言ってるのよ。でも、ジュースも用意してくれてたのはポイント高いわ。ありがと、大佐♪」

 

提督「誘った側の当然の配慮だ。気にするな。それでは観ようか」

 

日向「それはどんな映画?」

 

提督「所謂、海洋スペクタクルというやつだな」

 

伊勢「冒険的なやつ?」

 

提督「冒険と言えばそうだが、これはあくまで実際の世界が舞台だ」

 

日向「史実的な要素があるのね」

 

提督「そうだ。これは17世紀の英国海軍の、ある一隻の軍艦の船長とその船員達の物語だ」

 

伊勢「へぇ、昔の英国の海軍かぁ」

 

日向「面白そうね」

 

提督「興味を持ってくれて何よりだ。それじゃあ再生するぞ」

 

 

――観賞開始から30分辺り

 

日向「帆船の操船は大変だな」

 

伊勢「凄い。あんなに人が乗ってるんだ」

 

日向「あんな小さな子供まで......。しかも士官候補か。腕を亡失くしても気丈だな」

 

伊勢「あの船医さん、船長の親友なのね。ふふ、2人で楽器なんか演奏しちゃって」

 

日向「昔の軍人はいろいろ嗜んでいたんだな。見習いたいものね」

 

 

――観賞開始から1時間半後

 

伊勢「あの、士官候補の子可哀想だったね......ぐす」

 

日向「まだ科学がそれほど進歩していなかった時代だからな。神が唯一の拠り所だった人達からしたら、災いを誰かの所為にしないと耐えられなかったんだろう」

 

伊勢「ふふ、あの船医さん島へ行けるのが本当に嬉しいのね」

 

日向「昔の医者はどちらかというと博士に近かったのかもね。にしてもあの好奇心の旺盛さには感心するな」

 

 

――映画終盤

 

日向「追っていた標的を騙して奇襲、か。なんにしても船の性能の差を考えたらこれが成功しなければ後がないな」

 

伊勢「船長さん、凄く気迫に溢れてるのに興奮を感じさせずに本当に船員さんをよく纏めてる......凄いなぁ。えっ、船医さんも戦うんだ」

 

日向「できれば......あの子には生きていて欲しかったわね」

 

伊勢「ぐす......そうね。片腕の子、親友がいなくなって可哀想......。あ、でも身分が下が手伝ってくれてる......いいなぁこういう気配り」

 

日向「なんと、あの敵の船医が船長だったのか」

 

伊勢「船医さん、残念そうな顔をしたのに今は楽しそうに船長と楽器演奏してるね。以心伝心ってやつなのかな。不思議だけど温かい雰囲気ね」

 

 

――観賞終了

 

提督「どうだった?」

 

伊勢「凄く良かったわ!」

 

日向「そうね。スペクタクルって言ってたからもっと派手な視覚効果があると思ってたけど、割と地味で堅実な作りだった。現実的という意味では確かに迫力もあったわ」

 

提督「楽しんでもらえたようで何よりだ」

 

伊勢「うん? なんだか大佐、意外そうな顔をしてる?」

 

日向「私達が楽しんでいたのがそんなに意外だった?」

 

提督「ああ、いや。この手の映画はあまり女性にウケが良くない事が多いからな。そういう意味で少し嬉しさ半分驚き半分だったというだけだ」

 

伊勢「確かに。女の子からしたらあまり面白くないかもしれないけど、私、戦艦だし。こういうの結構好きよ?」

 

日向「同じく。そして更に軍人だ。内容的にはとても興味を惹かれたよ」

 

提督「そうか。改めてお前たちに見せて良かったと思った」

 

伊勢「ええ。良い映画を観せてくれてありがとう大佐」

 

日向「感謝するよ、大佐」

 

提督「ああ。また何か面白いのが用意できたら誘わせてもらおう。構わないか?」

 

伊勢「勿論!」

 

日向「逆に誘ってくれないと機嫌を損ねてしまうぞ?」クス

 

提督「ふっ。気を付けよう。それじゃあ映画も終わったし、時間ももうだいぶ遅いからこれで解散に......」

 

日向「大佐」

 

提督「ん?」

 

日向「映画に出ていた船長だけど、この人は最終的に生きて祖国で愛する妻に会えたの?」

 

提督「ふむ......実はこの映画はシリーズもので、内容的には割と長編らしい。今回の映画はその一部という事だ」

 

提督「俺も原作は読んだことがないから、そこまでは分からないな。すまん」

 

日向「いや、いいんだ。そうか、会えるといいな。ところで話は少し変わるけど」

 

提督「なんだ?」

 

日向「船長には愛する妻が居たように、やはり大佐にもそういうのが必要だと、私は思うんだけど」

 

伊勢「ひゅ、日向?」

 

日向「大佐はどう思う?」

 

提督「まあ......軍人とは言え、心の支えになってくれる人がいるのはありがたいだろうな」

 

日向「だろう? なら......」

 

伊勢「! あ、えっと......た、大佐それ、なんというか私もなりたい......いい......かな?」

 

提督「......随分、予想外な所からのアプローチだな」

 

日向「すま......ごめん。実は機会を伺ってた。小賢しく思えたら......その、ごめんなさい」

 

伊勢「大佐、日向のこと悪く思わないで。わ、私も気持ちは同じだったから......」

 

提督「......ふぅ」

 

日向・伊勢「......っ」ビクッ

 

提督「結婚とまではいかないかもしれんが......お前たちさえよければ......少しの間俺を支えてくれるか?」

 

日向「! 勿論......!」パァ

 

伊勢「私も......!」パァ

 

提督「そうか。ありがとう。これからもよろしく頼む」

 

提督「では重要な件も終わった事だし、本当にこれで今日は......」

 

日向「一緒に寝て欲しい......」ボソ

 

伊勢「ひゅ!? あ、ごめん......私も......」カァ

 

提督「......まだ、そういうのはダメだ」

 

日向「私達が寝付くまで側にいるくらいならいいだ......でしょ?」

 

伊勢「う、うん。私もそれでいい!」

 

提督「いやそれも......」

 

日向「お願い......」ジッ

 

伊勢「大佐ぁ......」ジッ

 

提督「む......」

 

提督「分かった。寝付くまでだからな?」

 

日向「! ありがとう!」パァ

 

伊勢「大佐、大好き♪」ギュ

 

提督「ふぅ......それじゃあお前たちの部屋に行くか」

 

日向「あ、待ってくれ。先に戻って下着を替えてくるから」

 

伊勢「ええ!? そ、その方がいいの?」ポ

 

提督「日向、何いきなり前言撤回をしているんだ」




少し個人的な趣味の内容になりました。
タイトルこそ明確に出してませんが、内容からネタに使われている映画を分かる人いるでしょうか。

日向は普段クールだけどいざという時は子供っぽく攻める......はず。
いや、攻めて欲しいです!

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