提督の憂鬱   作:sognathus

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今日の秘書艦は長門です。
久々にお仕事しているようですが、ちゃんと毎日やってます。



第43話 「爽やか」

提督「最近、陸奥と叢雲がやたら俺のことを見ている気がするんだが」

 

長門「なんだ、ノロケか? 私もその材料に使って貰っても構わないぞ」

 

提督「惚気てるつもりはないし、お前の希望にも応えかねる」

 

長門「相変わらずお堅いな」

 

提督「仕事に誠実なだけだ」

 

長門「そうか? 普段も結構堅物なイメージだが」

 

提督「時間があるときは酒や煙草をやってるだろ」

 

長門「青春時代の不良か」

 

提督「言われてみれば確かにそんなイメージだな。だが、釣りは不良でもなんでもないだろう?」

 

長門「そういえば、偶に一人でぼんやり港に座ってるのを見掛けるな」

 

提督「釣りをしている、をつけ加えろ。座ってるだけじゃ、まるで老後の年寄のようだ」

 

長門「釣れているのを見たことがないからな。釣りをしていないようなもんだろう?」

 

提督「ああいうのはやること自体に意味があるんだ。心の安らぎだ」

 

長門「大佐は酒と煙草と釣りしか心の安らぎがないのか?」

 

提督「......言われてみれば少ない気もするが、特にこれ以上何かを求める気にもならないな」

 

長門「それ、老後の年寄じゃないか?」

 

提督「......むぅ」

 

長門「ははは。ついに反論できなくなたか」

 

提督「口惜しいが、何も言う事がきない」

 

長門「気にするな。なら、これから少し私に付き合わないか?」

 

提督「この後か......まぁ大丈夫か。何をするつもりだ?」

 

長門「お、付き合ってくれるか。嬉しいな」

 

提督「何処かに行くのか? 遠出はできないぞ?」

 

長門「分かっている。なに、すぐそこだ」

 

提督「分かった。じゃあこの仕事をさっさと終わらせるか」

 

長門「腕が鳴るな」

 

提督「お前も意外に事務処理が得意だよな」

 

長門「戦艦だと侮るなよ? 別に力があるだけじゃないんだ」

 

提督「では、その実力如何なく発揮してくれ」

 

長門「ふふ。了解した」

 

 

~玩具屋、ヌイグルミコーナー

 

提督「また此処に来るとはな」

 

長門「なんだ、来た事があるのか? 意外な趣味だな」

 

提督「いや、俺にこの趣味は無い。矢矧に付き合った事があってな」

 

長門「ほう。矢矧はヌイグルミが趣味か。同好の士が見つかって嬉しいな」

 

提督「今になってあいつがその趣味を隠していた事を思い出した。悪いが、あまり口外しないでくれ」

 

長門「別に隠すような事ではないと思うんだがな」

 

提督「お前は一切隠さないんだな。正直、意外だ」

 

長門「そうか? 私は可愛い物は大好きだぞ?」

 

提督「はっきり肯定するものだな」

 

長門「好きな趣味を隠していては楽しみ難いからな」

 

提督「なるほど。実に清々しくお前らしい」

 

長門「はは。よしてくれ恥ずかしい」

 

提督「可愛い物が趣味という事は、ヌイグルミだけがその対象というわけではないという事か」

 

長門「そうだな。キーホルダーの様な小物やマグカップなどの生活用品も、可愛いデザインなら趣味の対象だ」

 

提督「なるほど」

 

長門「因みに、大佐もその私の趣味の対象だぞ?」

 

提督「......なに?」

 

長門「ほら、これ」

 

長門がそう言って見せたのは、ロケットペンダントに収められたある写真だった。

それは何時かの歓迎会の時に不甲斐なくベッドで寝かされていた提督の寝顔であった。

 

提督「お前も来ていたのか......」

 

長門「いや、青葉が大佐の寝顔の写真を撮って焼き増ししてばら撒いていた」

 

提督(......後で説教だ)

 

提督「まぁとにかく、それの何処が可愛いんだ」

 

長門「意外じゃないか。こんな安らかな顔してる大佐なんて。可愛いぞ?」

 

提督「やめてくれ。男が女にそんな事言われても恥ずかしいだけだ」

 

長門「はは。その反応もなかなかいいな」

 

提督「ぐ......」

 

長門「ま、気にするな。私は私でやっぱりこれが気に入っているし、可愛いと思ってるんだ」

 

提督「だからと言って、自分の寝顔の写真を持ち歩かれているというのは何とも気恥ずかしいものだ」

 

長門「私はわざわざその為にペンダント用に写真を加工までしてもらったからな」フンス

 

提督「威張りながら言うな。恥ずかしい」

 

長門「はは。照れるな照れるな」グリグリ

 

提督「後ろから抱き着くな。......っく、抜け出せない」

 

長門「逃がさんよ♪」ムニムニ

 

提督「程々にしてくれ......」

 

長門「お? 潔いな。好きだぞ」

 

提督「あっさり告白みたいな事を言ってるぞ」

 

長門「いや告白だ。好きだ大佐......付き合え」

 

提督「......お前らしいといえばお前らしいが、命令のような告白だな」

 

長門「大佐からは言ってくれそうにないからな。強引にいかせてもらった」

 

提督「そうか」

 

長門「で、返事は?」

 

提督「この淫蕩、と罵ってくれ」

 

長門「はは、なんだそれ。自虐か」

 

提督「こうでもしないと自分を保てそうにない」

 

長門「気にするな。大佐の中で誰が一番だろうと、私の心には大佐しかいない」クル

 

長門はそう言って、後ろから抱きしめていた提督を自分の方に向かせた。

 

提督「おい、まさかここで」

 

長門「大丈夫だ。この時間帯は人も殆どいないし、カメラからもここは死角だ」

 

提督「そういう問d」

 

チュ

 

長門「......」

 

提督「......」

 

長門「......ふぅ」

 

提督「本当に強引な奴だ」

 

長門「すまない。だが、ありがとう」

 

提督「礼を言われても困る」

 

長門「ふふ。いい思い出を貰った。これからもっと作っていこうな♪」

 

提督(女性に告白されたというのに、なんだこの複雑な気分は......)

 

長門「どうした?」

 

提督「いや、別に......」フィ

 

長門「っ、可愛いなぁ! もう♪」ギュー

 

提督「おい、やm......むぐっ」




実に爽やかな長門さんでした。
ですが、この人潔過ぎて、はいろいろと隠したりません。(ナニヲ)
提督の理性はいつまでもつのでしょうか。

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