「で、このエロ……エロムラサキは何者ですの?」
いきなり本題に入ってきたというのは、それだけお冠と言うことだろう。
「アンの娘だ」
「アン……って言うと、お師匠様」
「ああ、ローブも同じモノだし、マリク以外は面識があるだろう?」
確かおばちゃんと始めに出会ったのは、イシス防衛戦のあとサイモンやシャルロット以外の勇者一行と再会すべくこのイシスを立って北西に進んでいた時のこと。
(砂に埋まってたおばちゃんを助けたのが最初だったわけだけど、助けたおばちゃんが加わってそれ程経たない内に元バニーさんや魔法使いのお姉さん達とは合流出来た筈)
魔法使いのお姉さんがせくしーぎゃるっていたと言うインパクト抜群の再会だったので、覚えているとは思うが、流石に口に出すのは憚られた。
「そう言えば顔もよく似てますね。あと……えっと、スタイルも」
「まぁ、な。今まで母親を捜していたらしくてな。離ればなれになっていた反動なのかどうかまでは知らんが、身内のパンツを覆面にした変態のお仲間というのが一番解りやすい説明だろう」
解りやすいというか、対象が違うだけで変態度合いはせくしーぎゃるったエピちゃんのお姉さんと良い勝負だと思う。
「それで、母親が好きすぎて興奮して倒れてな。このまま母親と一緒にしておくとまた倒れかねんこともあるし、お前達と顔合わせしておくべきかと思って連れてきたのだが……注意不足だった、すまん」
寝起きで間違えたと言うことだろうが、俺の背中で変態行為をしていた時点で気づくべきだったのだ、犠牲になる可能性があるのは、おばちゃんだけではないと。
「とりあえず、納得したかどうかはさておき、謝罪は受け取りましたわ。つまり、寝起きは昔のエロウサギに匹敵する危険人物と言うことですわね」
「すっ、すみません」
引き合いに出され、頭を下げてる元バニーさんには若干申し訳ないが、概ね間違っていない気がする。
「詳しい説明をすると長くなるからな。とりあえずイエスと答えておくとして、話を変えるぞ? シャルロットから聞いているかも知れないが、イシスに来た俺達は二手に分かれた。マリクが屋敷の方に居る可能性を考慮した訳だが……」
「僕が、ですか?」
「ああ。格闘場に皆いるなら良いが、念のためにな。で、屋敷に向かったまでは良かった……いや、まぁ母親をさがしていたコイツと出会ったり色々あったが、良かったとしておこう。屋敷について、マリクが戻っていないか聞いてるとマリクの母親がやって来てな」
ザマスさん達の処遇は早めに決めておく必要がある。
「……そうですか、母が」
「どうするかに関してはお前の修行の完成度合いも関わってくるからな。おろちの所にもう行っても問題ないようなら良いが、隠れて修行を続ける必要があるなら……」
「……すみません、気を遣って頂いたようですね。安心してください、とまで言っていいかどうかは不明ですが、竜に変身する呪文でしたら身につけました」
「ほう」
語末を濁した俺の発言に返ってきたマリクの台詞良い方の想定内。
(まぁ、発泡型潰れ灰色生き物とひたすら修行してればそうなるか)
となると、元バニーさん達賢者二名にもほのかに期待してしまうが、賢者は全職業中一番レベルが上がりにくかった。
(過度の期待は禁物だな)
それでもバラモス戦を想定して充分通用するレベルの戦力になっていて欲しいと思う。
「ならば、見せて貰おう」
ドラゴラムで変身した竜の容姿に個人差があるのかはチェックしておかねばなるまい。
「他の者がどれだけ成長しているかも気になるが、修行用に借りた部屋なら周囲に迷惑はかからん。それに、成長度合いによってはそれこそ次の目的地を変えることも可能だろうしな」
過度の期待は禁物と言ったばかりだが、解錠呪文を覚える所まで成長しているようであれば、鍵の入手を後回しにしてバラモスを倒しに行っても良いのだ。
「ですけど、良いんですか? 僕が言うのも何ですが、母は何をするか解りませんし」
「いや、お前の母ならこちらで見張りを付けている。心配には及ばん。むしろ、何をするか解らないならそれこそ急いで確認を終わらせるべきだろう」
竜の女王の寿命という問題もある。マリクの恋が実ったなら、一直線に竜の女王の城へ向かい、報告したい。
「わかりました。どうぞ、こちらへ……と、言わなくても場所はご存じですね?」
「まぁ、借りたのが俺だからな」
促すマリクに苦笑を返し、向かう先はもう決まっている。
「ふふふ、竜化の呪文の確認なら比較対象がいりますわよね?」
「そうなって来ますと、比較対象は多い方が良いかも知れませんな」
「と言うことですわ、エロウサギ。全員でドラゴラム、異論はありませんわね?」
「は、はい」
えーと、なんだかもう決定事項みたいに魔法使いのお姉さんが言っているのだけれど、つまり、修行をした全員がドラゴラムを覚えたとかそう言うことだろうか。
(なにそれ、こわい)
と言うか、どんな修行をしたらこの短期間でそこまでの高みに登れるのか。
(いくら発泡型潰れ灰色生き物とひたすら模擬戦出来るからって……)
一体どんな修行をしたというのか。
「これが、修行用の設備ですわ」
「は?」
部屋につき、示されたモノにまず目を疑った。はぐれメタル風呂だと聞いて、引きつった。
(えーと、と言うことは女性陣もこれやったんだよね?)
頭を抱えるべきか、そこまでして強くなった元バニーさん達に頭を下げるべきか。
(おれ には とても できない)
まぁ、やってもレベルカンストの俺では何の意味もないのだけれど。
「さて、お次は竜の姿ですわね。ドラゴラム」
「「ドラゴラム」」
「え」
はぐれメタル風呂に目を奪われて一瞬反応が遅れた俺は、まるで合いことばのように唱えられた呪文の方を振り返り、見た。
「「グオオォォッ」」
竜と化し吼える四人の姿を。
?「ドラゴラムは使うなよ」
?「了解、ドラゴラム」
ドラゴラムとトランザムってなんかちょっと響きが似てますよね?
次回、第四百六十七話「次の行き先」
ジパングへだとネタバレしちゃいますので、このサブタイもやむなしなのです。