強くて逃亡者   作:闇谷 紅

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第三百四十八話(仮)「ほうこくをすませるまでがおつかいです?」

 

「え、ええと……」

 

 シャルロットが見せたのは、答えづらそうな態度と所在なさげにさまよう視線。

 

「そうか」

 

 だいたいののことはそれで察せた。

 

(割と長い時間買い物したり逃げたりしてたと思ってたんだけどなぁ)

 

 気のせいだったか、それともその長い時間でもせくしーぎゃるった自分にダメージを受けた二人を復活させるには短すぎたのか。

 

「お姉さんの方だけは何とか」

 

「な」

 

 勝手に自己解決しかけていた俺が自分の思い違いに気づかされたのは、その時だった。

 

「将たるもの精神的なタフネスがなければやっていけないんですよ」

 

「あ」

 

 話題の主がふらっと現れたのは、シャルロットの言に俺が驚いた直後。

 

(あぁ、そういえばイシス侵攻軍の総大将だったっけ。けど、それならその総大将を一時的とはいえ戦闘不能にしたせくしーぎゃるの後遺症って相当なモノがあるんじゃ)

 

 こうなってくると、いまだ復帰してないもう一人、エピちゃんんも方もほんのちょっぴりとは言え心配になってくる。

 

(とはいえここでエピちゃんの話を振るとなぁ)

 

 目の前の元イシス侵攻軍の総大将はあの変態モードとはいかなくても、残念才女ぐらいにはなってしまう気がする。

 

(仕方ない、後で様子を見に行こう)

 

 ノックとかすれば、着替え中にばったりみたいな悪意しかない展開も待っていないだろうし、キーマンであるエピちゃんのお姉さんが復活した以上、仕入れてきた情報を渡してどうすればいいかを聞くべきだろう。ただ、パンツをかぶれと言われたら拒否するが。

 

「……ちょうどいいところに来た。実は買い物に出かけて今帰って来たところでな。いろいろ情報も手に入り、お前達にも意見を聞きたいと思っていたところだ」

 

 言いつつ俺が取り出すのは、当然、あの情報屋に渡されたリストだ。

 

「お師匠様、それは?」

 

「ああ、このダーマ内でミリーの『おじさま』に協力してる店のリストだ。あのがーたーべるとの押し付けを快く思っていない古参の商人が結構いてな、その一人に貰った」

 

 覗き込んでくるシャルロットへ応じつつ、ただし、渡す相手は別の者。

 

「全部覚えたとは言い難いが、買い物で紙と筆記具を買って来てある。後で返してくれればいい」

 

 知恵を借りる以上、そう言って最初に渡すのはエピちゃんのお姉さん以外にありえなかった。

 

「では遠慮なく……ふーむ、裏付けの取れていないものを信用するのは危険と言いたいところですが、ダーマの情報屋なら問題はなさそうですね」

 

「知ってるのか?」

 

 リストを受け取るなりいきなり爆弾を投げてくるウィンディに驚愕をできる限り隠しつつ問えば、返ってきたのはバハラタでも名を知る者はいると言う答え。

 

「実は探していたんですよ。戦いにおいて一番重要なのは情報ですから。イシスでの戦いにしても、もう少し真面目に情報収集をしてくれれば……おっと、失礼」

 

「いや、まぁ、気持ちはわかる。もっとも、あの時はこっちが情報を隠ぺいしていたからな」

 

 クシナタ隊なんて存在は寝耳に水だったことだろう。

 

「正直に言いますと、あなたのこ」

 

「おっと、そこまでだ」

 

 言いたいことは推測がつくが、ここにはシャルロットがいる。

 

「ああ、これは失礼」

 

「え?」

 

 意味の分からないシャルロットだけが唐突な流れにぽかーんとしているが、それは仕方ない。というか。

 

(今の、俺の本当のスペックをシャルロットにばらそうとしたんじゃ?)

 

 普段はエピニア一直線で残念だが、こんなところで俺のようなポカをするとも思えない。

 

(俺がいろいろ秘匿するのを迂遠とみたのかな)

 

 相手はある意味でチートを疑いたくなる智謀の持ち主であり、軍師とかそういうキャラって合理的な考えをするものだと思っている。

 

(確かに、人目を気にせず、呪文を使えるようになれば、遥かにやりやすくはなるけどなぁ)

 

 ただ、今すべてを打ち明けるわけにはいかないのだ。エピちゃんのお姉さんにもプランはあると思うが、こちらにはこちらで予定がある。

 

「それで話を戻すが、このリストと外で見聞きしたことを基に策を練」

 

「ああ、それならもうできました」

 

「「早っ」」

 

 とりあえず話題を変えようと思ったら、まさかの答え、シャルロットと反応がかぶったのは仕方ない。

 

「その見聞きしたことを伺って修正を加える余地はあると思いますけどね、それは他の方が集まってからの方がいいでしょう」

 

「あ、そ、そうだな」

 

 頼りになるというか、なんというか。

 

(バラモス……)

 

 ここまで ゆうしゅうな ぶか を なんで あんな あつかい してたし。

 

(いや、侵攻軍の総大将に据えはしてたし、一応認めてはいたのかな?)

 

 エピちゃんのお姉さんの采配かバラモスの采配か、侵攻軍はイシスの戦力のみなら十分蹂躙できるだけの戦力は揃っていた。

 

(救援がシャルロットかサイモンだけだったなら、ディガスかもう一人で抑え込めるし、バニーさんはあの時点でまだ遊び人、上空からの大部隊に対処できるのは魔法使いのお姉さんの呪文と僧侶のオッサンのバギ系呪文とニフラムくらいかも)

 

 改めて考えると、クシナタ隊が居なければあれはどうなったかわからない戦いであった気がする。

 

(それと、俺の呪文攻撃が想定外の要素か)

 

 ふつうに考えるなら、イシスに辻イオナズンで爆破してくる敵戦力が伏せられてると考える方がオカシイ。

 

(って、あれ? だったら秘匿の意味だってあると思うんだけど)

 

 考えていると余計に疑問が生じるが、流石にシャルロットがいる前で堂々と聞くわけにはいかない。

 

「わかった。では、シャルロット、すまんが皆を呼んできてもらえるか?」

 

「あ、はい」

 

 だからこそ、俺はシャルロットに連絡を頼み。

 

「……さて、さっきの件だが」

 

 シャルロットが去ったのを見てからどういうつもりだと俺はエピちゃんのお姉さんに問いかけた。

 




ウィンディ、本気出し始める。

そんなことよりおうどん食べたい。

あ、今日はうどんの日らしいですよ?

次回、第三百四十九話(仮)「真意」

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