多くの国と里を巻き込んだ中忍試験の復興中、ナルト達は影分身を里に残し広大な田畑を含む地下空間へと集まっていた。
大量の劣化写輪眼の白ゼツ達は空間忍術で空間を広げる者、広げた空間に田畑を作り農作業に当たる者。白ゼツは疲れることもなく地面に根を貼れば飲食すら必要ないそんな彼らが作り出した地下農場はその広大さを広げ、さらに階層を増やしながら食料や薬草の類を増やしていく。
この地下空間は白ゼツ達の製造とは別に地下に幾つも製造している、中に入るためには神威による転移か飛雷神の術が必要の為白斬りカンパニー以外の者は侵入すらできない。
「ナルト君、本当にあの契約で通してよかったんですか?」
そう聞いてきたのは男女の白、彼が何を言っているのかといえば各農地の先物取引のことである。
先物取引とは去年はこの値段で買ったから今年はこの値段見込めるからこの値段で頼むという契約方法、今回に限っては前年度の1.5倍もの値段をつけておいた。当然農地を持つ側からしたら前年度よりも儲けが大きい方に売るため大多数が契約を結んだ。
「いいんだ、木の葉崩しにその中で起きた国内のいざこざ馬鹿じゃなければこのあと戦争が起こる可能性を必ず考える、そうなれば必要となるのは物資だどれだけ強い忍びが居ようとそれを支える食料や水、戦うための武器や防具、治療するための薬草ありとあらゆるものが必要となりその中のどれか1つでもなければ人は戦争できない。
暁や各国に教えてやろう戦いは武力だけでないことをな」
「おっかねえことを考えるもんだ。」
「まだまだこれからだぞ再不斬、食料の値段が上がれば当然それを買い叩く流れが生まれそれに引き上げられる形で全ての物価が上がる、とにかく時間との勝負だ兵糧丸等もを含めて買えるものなら何でも買え多少値段を釣り上げられても盗賊から搾り出した金と各国の裏金が大量にあるんだいくら使っても痛くもかゆくもない、それに暫くすれば逆に売りに出すそうなればそれ以上の稼ぎが見込めるからな。
ところでガトーそっちの方はどうなってる」
「はい、素晴らしい繁殖能力です一匹が一週間で6千ほどの卵を産み3日で成虫になりますそな倍々ゲームですので正直そろそろきついものがあります」
「取り敢えず不自然と思われない数を雲隠れの里に撒いとけ撒くのは雲隠れから離れた農地の無い雷の国の荒野からだ、そこから順次撒き始めるんだ。
それにどのみち馬鹿どもが食いつくまでの辛抱だな〜にそんなにかからんよ自分の金を失った欲に目ざとい奴らは必死で儲けようとするからな。
大蛇丸そっちはどうだ?」
「劣化写輪眼の方は上々よ特にサスケ君がいいわね、まさか写輪眼が交換することでさらに強化されるなんて初めて知ったわ、それから盗賊や犯罪者を使った実験体は想定以上の成果を出しているわよ」
「サスケは暴れないよう静脈麻酔は入れたままにしているな、いくら落ちこぼれといえど万華鏡写輪眼は危険な目だサスケにはこれから写輪眼の強化に協力してもらう必要がある決してやりすぎて壊すなよ、実験体は今後とも盗賊狩りと犯罪者狩りに回せ」
「うふ、わかってるわよ。でもあんまり反応が薄いとつまらないわせめて喘ぎ声くらいは聴きたいところね」
☆
木の葉の里では多くの忍び達が復興に向け作業を進めている。上忍下忍共に作業が多く人的被害がいかに少なくても里の機能は暫くは停滞するだろう。
その理由の1つに五代目火影の昏睡状態があった、残された眼球は保存液で保護しているが眼を抉られ背後からの一突き、心臓はギリギリ逸れたがそれでも重症には違いなかった。さらに火影の弟に当たるサスケの誘拐もありうちは一族の不満に再び火がついてしまっていた。
しわ寄せは三代目火影が火影代理として執務を行うことでなんとか事なきを得ているが難し地状況でもあった。
木の葉病院では厳重な警備の元五代目火影が治療を受けている。そんな中で中人試験でイノと戦いダルマにされたサクラは自分の四肢が無い事以上にサスケが誘拐され行方不明だという事にショックを覚えていた。
楽しかった修行や任務の日々が思い出され涙が溢れてもその涙を拭う事すら出来ず嗚咽をこらえる姿はあまりにも痛ましい、そんな病室に。
「あいも変わらず泣き虫なままねあんたは」
呆れ果てた声がした、振り向けばいつの間にかそこには花を持ったイノが居た。サクラの事を通してどこかを見ているようなイノは花を花瓶に入れながら。
「泣いてもいいと思うわよそのあと立ち上がるためにはね、でもあんたはいつだって足引くばかりでなんの役にもたたなかった置いてかないで私を見てそればっか。
いつだってそう悲劇のヒロイン気取って誰かが助けてくれるのを待つばかり。散った花は戻らない過ぎ去った時はどんなに足掻いても戻らないのよ。だからこそ今を必死に生きるんじゃない。私は前に進むわ貴方はここで腐って枯れてなさい。
じゃ帰るわ」
言いたい事だけを言い病室から出て行くイノの背に涙で濡れたその瞳を向け失ったその手を伸ばした。
「あ〜全く何してんだか、まいっか」
イノは一応やりすぎたと思ったから謝りに来たのに何故か説教して、なんでサクラなんかに説教なんかしたのかわからないまま病室を後に病院を立ち去った。
説教したのはその姿にイラついたから、でも感情が揺さぶられた時点でイノはさくらを少しは認めている事に気がつかないまま。
一人病室に残されたサクラは失った手を伸ばす。
自分だって理解していたナルトは誰よりも強かった、サスケ君はアカデミーでも優秀だったけど任務に出てからはどんどん強く離れてしまう。
おいてかれる自分は悔しかったのだ認めたくなかった自分の下がいる事で、そばで好きな人が居てくれるだけでそれだけで満足していると思い込んでいた。
今更手を伸ばしても遅いと知っている、物理的に既にないのだからそれでも手を伸ばす次こそはと。
☆
赤い雲が描かれた外套を纏い編笠を深く被った男達が木の葉の里の茶屋で寛いでいた。
「さてどうしましょうか、ペインから囚われた大蛇丸の奪還か暗殺を命じられましたが、何か良い手はありませんか水月」
「ぼくにどうしろって言うんですか干柿先輩どうしようもありませんよ」
周りに聞こえない声で話す彼らな茶屋の外にはカカシがナルトと待ち合わせをしていた。そんな彼の元に同じ上忍のアスマと紅が来て。
「よう、お前が甘味とか珍しいじゃねぇかカカシ」
「ちょっと待ち合わせしててね」
「そう、ところで彼等を?」
先程までいた暁の二人の席を見た紅とアスマに頷き後を追わせた。
「カカシセンセー来たってばよ。カカシ先生俺ってば甘い物よりラーメンが良いってばよ」
ナルトはお茶とお菓子が置かれた席を見てカカシに言うとカカシも頷き。
「じゃあラーメン食いに行くか一楽で良いよな、ナルト先行っててくれ俺もすぐ追いつくから」
「わかったってばよ!」
走り去るナルトを穏やかな笑顔で見送ったカカシはアスマと紅の後を追う。
木の葉の里を流れる川横の道、干柿鬼鮫の目の前には木の葉の上忍二人が道を塞いでいる。
「ちょっとお話し良いかな?」
気さくに声をかけるアスマの横で紅は今は見えない相方がいつきても動けるよう周囲一帯に意識を向ける。
「この前木の葉崩しなんてのがあってさ里の中は厳戒態勢なんだ、そんな中で背に長物を持ってたら怪しさ半端ないからお話し聞かせてもらえないかな」
「ご心配なさらず、里の外で友人と待ち合わせしていますのですぐに出て行きます」
丁寧な言葉でもこちらを何の脅威としても見ていない事は明らか、事実干柿鬼鮫は目の前の二人を何の脅威としていない。
「いやいやそういうわけにもいかないんだ。出来れば君たちの所属する組織暁について…とぉ‼︎」
アスマの言葉を遮る形で鬼鮫は長物を振り下ろしアスマは紙一重で地面に接するよう躱し一息で懐に入るとナックル付きの特殊ナイフ・アイアンナックルで下から斬りかかる、その斬撃を足で受け鬼鮫はアスマの力と自身の脚力で間合いを開けた。
「やれやれ何処でその名を聞いたんですかねぇ、これは殺すしかありませんか干柿鬼鮫覚えなくても良いですよ」
「紅もう一人いたはずだ周囲の警戒を怠るなよ」
「ええ任せて、ついでに援護もしてあげるわ」
「私を前にお喋りとは随分と余裕ですね」
自分を無視して話している紅とアスマに若干イラつきながら間合いを詰め再び振り下ろす。
アスマは特殊ナイフ・アイアンナックルに風属性に性質変化させたチャクラを流し込み長物を迎え撃つ。アスマは木の葉上忍の中では最も風属性を使いこなす忍びその切れ味は鉄の武器も鎧も熱したナイフでバター斬るほど容易い。
しかし目の前の男の長物は切ることができなかった。
(チャクラが吸われただと!それになんて膂力だ)
鬼鮫の長物はアスマの刃を押し肩に触れた瞬間引きアスマの肩を削る。
「私の鮫肌は斬るのではなく削るんですよ」