誰もが理解の範疇を外れたナルトとヒナタの試合は試合会場を覆う結界の崩壊により中断、二人の実力が並の上忍を凌駕している事により双方を中忍とする運びとなった。
今試合会場は土遁の使い手達の修復を受けている。
「いやはや凄まじい戦いですな、今年の木の葉は粒揃いだ」
「次はうちはだろう先程の日向に並ぶ木の葉最強と呼び名が高い一族、しかも火影の弟君ときた実に楽しみだ」
周囲の観客の熱も冷める事はなくこれから出てくるうちはに向ける期待は高まるばかりだ。
しばらくして修復された試合会場にハヤテが現れ。
「ゴホ…さて次の選手二名降りてきてくださいゴホ」
試合会場に砂の混じったつむじ風が巻き起こり晴れたその場には砂の鎧を纏い成長した我愛羅が現れた。
しかし対戦相手のサスケは現れることなく時間だけが過ぎて行く、流石に周囲の人々も何か問題でも起きたのではないかと疑問の声が周囲から上がり始める。
「どうしたんだ?」
「早くうちはをだせ!」
「怖気付いて逃げ出したんじゃないのか?」
更に時間が立ち観客もイライラが募り始めた頃につむじ風が巻き起こり風と共にサスケと五代目が現れた。
「あれがうちは」
「その横にいるのは五代目だぞ、確か病気で入院していたはずじゃなかったか?」
周囲の声を無視して向かい合うサスケとイタチ。
「サスケお前になら出来る、俺と過ごしたあの日々で得た事を忘れる事なく出し切るんだ」
「大丈夫だ兄さん、俺は負けない」
イタチが離れ、我愛羅とサスケが向き合い。
「ゴホ、それでは…始め!」
ハヤテの合図で動き出したのはサスケ、その動きは予備選では見られなかった早さがある、それを見ても我愛羅は動かない。
牽制にサスケが投げた苦無は砂に阻まれ届かない、砂を迂回して我愛羅に向うもドーム状に薄く覆う砂に切れ目は無く、痺れを切らし助走を付け加速した蹴りも薄い砂を押し込む事すら出来ずに会場の端まで弾かれた。
「クソ」
悪態を吐いても変わるわけではないが吐かずには居られない、我愛羅を睨みつけるもその場から動く事無くつまらなそうに見ている。
「その程度では無いだろう?…僅かでもあの人に教えを受けたんだ少しは気概を見せろ」
試合が始まって始めて発した言葉はサスケを見ての事でもうちはでも無く死の森で稽古を付けたナルトの事、目の前にいる自分の事など興味のない事がありありと伺えるその瞳と言葉に殺気を向けるも軽く受け流され。
「そら、ここで待っててやる全力を出して見せろ」
「そんなに見たきゃ見せてやる!(どうせ動く気が無いんならこの術にも時間がかかるからちょうどいい)」
写輪眼を発動させ火遁の炎を腕に集め一振りの刃を生み出した、チャクラを練り込む量を増やすにつれ炎の色が赤から次第に色を失い青色へと変わりそれと共に熱量も上がっていく。
「行くぞ」
限界まで練りこみ自分の出せる最高の炎剣を持って斬撃を放つ。
斬撃は薄い砂を焼き溶かすも我愛羅に迫るも触れる瞬間に掻き消えた。
「ナ…ニ?(俺の炎剣の温度は確実に鉱物の融点を超えてるはず、防げるはずがねぇ)」
「そう驚くな、砂を操るだけが俺の力だとでも?あまり舐めてるな。
これでお前にも見えるだろ」
砂のドームの内側に磁力で編まれた結界が浮かび上がり。
【磁遁・特殊磁界】
サスケは強い力で吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「ガ…!」
休む間も無く今度は引き寄せられ空中で停滞させられる、引き寄せようとする引力と吸い寄せようとする斥力がサスケを押し潰そうとその身にかかる、我愛羅にとっては軽めにかけているつもりだ、実際先の戦いではこの数百倍の特殊磁界で音速戦闘をロック・リーはこなしナルトやヒナタでは足止めにも成らない。
「その程度か?…(こんな雑魚になぜナル兄は気にかけるんだろ…殺す価値も無いけど生かす価値はもっと無いかな、彼が死ぬのを五代目が見ればナル兄の目的は果される)
死ね…」
吐き捨てる様に言い放ち圧力を強めサスケを押し潰しにかかる。
「ぐぁ…(このままじゃ死ぬ…この程度の雑魚にぃ)」
ろくに足掻く事も出来ず先程の戦いと比べて余りにも盛り上がりに欠ける試合に会場の熱も下がる。
そんな会場を覆うように白い羽が舞い降りる・人々は次々と眠りにつく。
カカシやガイその他にも何人かが幻術返しで術を逃れるも殆どが深い眠りに落ちていく、そんな中で。
「始まったねナルト君」
「ああ、白・ザブザ各地に潜入させた奴らに動くよう連絡をその後木の葉崩しが終わった後で草に情報を流せ」
「はい」「おう」
幻術に嵌る事もなく二人に指示を出したナルトは離れて行く二人に見向きもせずに中央の物見櫓を見る、その上では風影に抱えられた三代目がいた。
(我愛羅は予定通り里の外へ行きそれを追ってテマリ・カンクロウも里を出た、サスケの奴も追いかけ…)「行くぞ…都合よく動きが有ったお前ら仮面と外套を忘れるなよ」
☆
中央の物見櫓の上では三代目が大蛇丸と対峙している。彼等を囲うよう四人の音忍が四紫炎陣を張り外から入れないようにした。
「大蛇丸よ…何が有ったのかだいたいの事は知っておるこれ以上罪を重ねるな、アンコにはワシからも言っておく戻ってくるのじゃ」
抱えられた三代目は大蛇丸以外には聞こえないように囁く。
「ふざけないでよ三代目私は何度も貴方に助けを求めたわ、確かに直接言った事は無かったけれど、それでもアンコの担当上忍を外して欲しいって言ったじゃない‼
あの時私がどんなに苦しかったか辛かったか貴方にわかるかしら」
大蛇丸の悲痛な叫び三代目とてわからないではない、彼もまた弱みを抑えられ大蛇丸をアンコから助けたくても助けられない事情が有る、決して自分可愛さではないのだ木の葉の為には三代目は必須覗き程度の事で国に問題を抱えるわけにはいかないのだから。
「(断じて木の葉丸に「爺ちゃんなんて大っ嫌い」と言われる事を避けたいなんてこれっぽっちも思っていない…本当じゃぞ、本当だからな‼)
そうか…お前をそんな風にしてしまったのは木の葉の里のせい何じゃな…その為にお主は復習に来たのじゃな」
「違うわ…こんな里どうでもいいのよ、むしろアンコが居る時点で戻ってくる気なんてさらさら無かったわ…でも仕方ないじゃない抜け忍の私には身を寄せる組織の指示に従う以外に無かったんだから木の葉と戦うのと暁に敵対するのでは私は前者を選んだだけよ」
大蛇丸は三代目を離し距離を取り。
「貴方にも木の葉にも恨みはないの解毒剤を渡して頂戴そうすれば命だけは助けてあげるわ」
三代目は哀れむような目で一つの錠剤を取り出す、満足気に笑う大蛇丸の前でそれを飲み込んだ。
「は?…」
訳がわからない周囲を余所に三代目の身体に異変が起こる、身体から煙を出してもがき苦しむ姿は段々と変容しシワだらけの肌は張りを取り戻し老いて弱った筋肉は服の上からもわかるほどに隆起していく、煙が晴れたその場所には全盛期の姿に戻った三代目の姿が有った。
「覚悟は良いかのぉバカ息子…もはや拳骨では済まさんぞ」