俺の目の前には白き救済者…メサイアがいる…。
刈り取る者から放たれた弾丸はそいつによって防がれた。
早くしねぇと俺が出欠多量で死ぬ…!
回復魔法とかしてほしいなぁ…と思ったが、そんなことしてる内に刈り取る者に攻撃されたらその時点でアウトだ…。
なら、急いであいつを倒す…とまでは行かずとも、撃退しなければならない。
「あれは…」
聖天子は俺の枕元にへたり込んで茫然とメサイアを眺めている。
俺は未だに地べたに仰向けで倒れたまま、メサイアと刈り取る者を見ている。
声は掠れて何を言っているのか自分でも聞き取りづらいし声を出すと全身…特に腹が痛いが、それでも声を出す。
「メサイア………ぶっ飛ばせ」
それくらいのお願いしかできなかったがメサイアはきちんと理解してくれたようだ…。俺の傷を治そうとすれば、その隙に刈り取る者は俺か聖天子を殺すことができる。
だから、そいつを撃退するしか、俺が助かる道がない…。
普通なら死んでるであろう出血量だが、なぜか死なない…ペルソナ能力の恩恵だろうか?しかし、そろそろ視界も霞んできたし、体が言うことを聞いてくれない…。
唯一の救いは…まだ弾丸に打ち抜かれた腹が痛い…ということだろうか?
痛いということはまだ生きている証だからな。
メサイアは手を挙げ、羽を広げる…そして空を仰ぐ。
すると三つの青白く光る、力の塊が天から落ちてきて、絡み合いながら地面で激突する。
ピンッ…という音が響いた瞬間
ドヴァッ!!
という爆発音のような…でもまったく別の何かということを感じさせる音が響く、視界は紫と白と青を混ぜたような鮮やかな閃光を放つ。
メギドラオン…万能属性の最強技…。当たりの物はすべて吹き飛ばされ、消し飛ばされる…俺と聖天子はなぜか無傷だが…ペルソナに原理求めちゃいかんのだろうか?
刈り取る者はそれを受け、怯む…。
そして立て直し…しばらくこちらを眺めていたが、刈り取る者はなぜか背を向け、どこかへ消え入るようにいなくなってしまった…。
―――おめでとう、奇跡は果たされた―――
その瞬間…世界はすべてがもとに戻った…。空の色、ところどころにある血がたまったような地面の色、近くには棺桶のオブジェはなかったので、棺桶のことはわからないが…。
気づけばメサイアも消えていた。
最後に脳裏をかけた言葉…あいつと対峙しておきながらの生還…まさしく奇跡だったのだろうな…。
助かった…そう思った瞬間、喉の奥から生暖かいどろりとしたものがのぼってくる…こらえきれずに口から吐き出す、その液体は真っ赤だった…。
って…これ…血じゃねぇか…。やべぇ…これは…。
意識が遠のく…。俺の周りは血だまりができていて、自分でもかなりやばい状況だということがわかる。
聖天子が着ている純白の服が俺の血で汚れるのも気にせずに俺の顔を覗き込み、必死に…涙を流しながら何かを叫んでいる…けど聞こえない…。
「――――! ―――あ――の―――聞いて無―――! ―――生きてください!」
聞こえないはずなのに、生きてくださいはやけにはっきり聞こえたなぁ…。視界がかすんでいき…どんどんどんどん…落ちていく感覚がする…意識は水の底へ沈むような感覚で…。
そして俺は…意識を手放した。
「ん…いてぇ…」
ゆっくりと目を開けるが、その瞬間脇腹に激痛が走る…、ここはどこだろう…?
そう思い、あたりを見回す…白い部屋、そして白い簡素なベット、腕にはなんか点滴…。
そこまで見渡して気づく…。
ああ、ここ病室か…。
「すー…すー…」
俺の声とは違う声でとても穏やかな…でもどこか心配そうな寝息が聞こえる…。
ベットの脇に、もたれかかり、寝ている白い髪の美しい少女がそこにはいた。
寝顔は穏やかだ…時折顔をしかめることから、あまりいい夢を見ているわけではないらしい。
少し迷ったが、寝ている聖天子の頭の撫でてみる。
髪の毛はさらさらでずっと触っていたくなるくらいの気持ちよさだ。
ちなみに迷ったのは国家元首の頭を撫でても不敬罪とかにならないだろうか?とかどうでもいいことを考えたからだ。
「おはよう…心配かけたみたいだな…ごめん」
俺は仮面の道化師としてではなく、一人の個人、桐夜仮夢として話す。
こんなに馴れ馴れしくしてもいいのかとは思うが、今ぐらいはいいだろうと、思う…。
頭を撫でていると、穏やかな寝顔になったので、俺は病室を見渡す…。すると、俺の荷物がすぐそこのテーブルにおいてあった。
召喚機もあったので、それを手に取る…。よくこんな危ないものを病室に入れてもいいって許可が下りたな…見た目は銃だから駄目だと思うんだが…。
聖天子あたりがなんとかしてくれたのだろうか?
まあ、ここに召喚機があることに感謝しよう…。
召喚機を側頭部に持っていき、引き金に指をかける…。
「ペルソナ アリス」
そういいながら引き金を引く。
アリスがベッドの脇にひょっこり出てきて、無邪気に笑う。
「約束、守ってくれたね!」
約束…生きて帰るって奴か…。
まあ、そりゃあ守らなきゃ俺死んでたし。
「当たり前だ、そう簡単に死んでたまるかってんだ」
「うん…そうだね………じゃあ、そろそろ治そうか…ディアラハン」
アリスがそういった瞬間、俺の腹の傷は大体治る…。
ディアラハン…生命力の回復をする魔法…喪われた四肢などの再生はできないが、こういう怪我ならちゃんと効く。
普通に動いても支障がないくらいには治った…。傷跡は残りそうだな…。まあ、気にしないけど。
さてと…行くか…。廊下を通ったら多分誰かに止められるから…窓から外に出よう…。これならだれにも止められないだろうしな。
アリスは丁寧にお辞儀して消えていった。
窓に足をかけ、飛び降りようとしたとき…
「待ってください! まだ危険です!」
うわぁ…起きちゃったよ…。
チラッと後ろを見る…ベッドにもたれかかって寝ていたはずの聖天子はしっかり起きていた…。
どうしようかなぁ…。
「いえ、傷はもう治りましたので…それに、今日で
仕事モードで会話する。このまま帰らせてもらうのが一番なのだが…めっちゃ怪我のことを心配してらっしゃる聖天子様にどう説明したものか…。
「そ、そんなすぐに傷が治るはずありません!」
信じてくれそうにない…仕方がないので傷が見えるように服を上げる…。聖天子様は顔を赤くしたが、それと同時に傷が治っていることに対してすごく驚いている…。
まあ、普通はこんなすぐ治らんわな…。アリスに感謝しなきゃなぁ。
「そういうわけです、では、仮面の道化師、依頼達成いたしました、今後ともご贔屓に」
そういい、丁寧にお辞儀する。
さて、行くか…そう思い、飛び降りようとすると…
「待ってください!」
呼び止められた…そろそろ行かせてほしいんですが…。
と思いつつもちゃんと止まってしまう…体が勝手に動くんだ!なんでも屋やってると勝手にこうなるんだって!別に美少女に言いとめられてるからとかじゃないから!
「はい?」
振り向かずに、すぐに窓から降りれるように準備する…ちなみにここは結構高いところにある部屋みたいだ…この病院クソでけぇな…。
「あ、あの…名前…教えてくれませんか…?」
?どういうことだろう…?名前…というなら仮面の道化師…と呼んでくれればいいのだが…。と思いつつ、沈黙で返すと、聖天子は少し慌てたように言う
「い、いえ…あの…なんでも屋としての名前ではなく…あなた個人の名前を教えてくれませんか? 馴れ馴れしく感じたのなら謝ります…でも、どうしても聞いておきたくて…」
俺は聖天子の前のベッドに落ちるように二枚の名刺を投げる。
聖天子は、その名刺を見る…。
投げた名刺は…片方は…なんでも屋、『仮面の道化師』の連絡先。
もう片方は…。
「桐夜…仮夢さん…」
俺のプライベートの連絡先…電話番号とメールアドレス…。
俺はプライベート用と仕事用でケータイを二つ持ってるからな…。
「そうだ、桐夜仮夢だ、暇だったら電話かメールでもしてくるといい、こっちは年がら年中暇で、たまに来る依頼くらいしかすることはないんだからな」
俺は知り合いに話すかのような口調で聖天子に話しかける…なんでも屋、仮面の道化師ではなく、俺個人、桐夜 仮夢として…。
聖天子はそういう意図がわかったのか、少し嬉しそうな声で言う。
「はい! ありがとうございます!」
俺はそれを聞いてから、振り向き、深く優雅に一礼しながら…
「
そのまま後ろ向きに、窓で倒れこむように落ちていく、落ちながら体制を建て直し、ペルソナ能力とか色々駆使して、その場から速やかに去って行った。
―――回想終わり―――
「仮夢さん?」
「ん?どうかしましたか?」
「いえ…何か考えているご様子でしたので…」
少し思い出すことに没頭しすぎていたようだ…。
まあ、そんなことがあったわけだ…。
ん?アリスへのお礼?ああ…なんでも一つ言うことを聞く…って言うのがお礼だったのだが…まあ、何をお願いされたかは後々わかるだろう…。
今はそれよりも…そう思い、思考を切り替える。
「すいません、緊張感が少しかけていましたね…」
「そんなことはありませんよ、大丈夫です」
そう、今は仕事に集中しなきゃな…このまま何もなければ終わり、襲撃とかがありゃ…聖天子を守る。
それだけだ…頑張るとするか!
刈り取る者に勝ったとはいいがたいですが、生き残れただけましと考えましょうか…。
護衛対象ありでの戦闘で生き残れたのですし、さらに新たなペルソナに目覚めたのですから、まあ、よかった…のでしょうかね?
大けがしましたけど…
感想、待ってます!
ちなみに感想をくれるとやる気がUPします(笑)
次回も頑張って編みます!