小説の林堂 二次創作 小説「ソードアート・オンライン この現実世界にて」   作:イバ・ヨシアキ

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 皆様ご無沙汰ぶりでございました。

 イバ・ヨシアキです。

 今月も何とか更新できました。

 とりあえず今月はいくつか載せそうな気がしますので(気かよ!)

 まずは最初の一弾を!

 ……お気に召したら幸いです。

 では、どうぞ。


 巣立ちの日に。

 

「うわぁ♪ 優衣お姉ちゃんすごくきれいだよぉ♪」

 普段はスースーするとの理由にスカートを履かない桐ケ谷木綿季は、今日は姉を門出を祝う為にと、特別な日だからと蒼のドレスを着ている。

 姉の今の姿を見て、心から感動している木綿季は混じりけのない感想を声を躍らせるように言う。

優衣は、とても綺麗だった。

純白と純赤の色彩と、まるで開花した花のようなイメージを抱かせ、その花に抱かれ包まれているような妖精を連想できそうな、もしその姿を見れば誰しもが、そう思わざるえない、ウェディングドレスを来た桐ケ谷優衣にそう感嘆の声を漏らし、姉の晴れ姿を見つめていた木綿季に、

「ありがとう木綿季ちゃん」

 その愛らしい容姿を崩すことなくも、より美しくに彩らせた化粧に、その愛らしさに輝きが増したかのような笑顔で、優衣は木綿季に感謝を言葉にして返す。

「本当に綺麗だよ、優衣姉さん」

 姉のそんな幻とも思えてしまうような儚げで美しい、花嫁姿を素直に優治緒も、感動し涙を流し始めた木綿季と同じように言葉にし、どこか胸に込み上げてくる、寂しさと嬉しさに満ちた気落ちを押さえるようにして、自分の姉の旅立つ晴れ姿を、本当に美しいと思っていた。

 そんな素直な優治緒の声にムッとするように、

「綺麗なのは当たり前。優衣お姉ちゃんは世界で一番きれいなんだから!」

 木綿季は不満そうに言い、

「ほんっと優治緒はデリカシーがないんだから! もっと女性が喜ぶこと言わなきゃだめじゃん。そんなんじゃアリスさんに振られちゃうよ」

「な、なんでアリスの名前が……か、関係ない……」

「あ、今、アリスさんがお嫁さんだったらって想像したのかな?」

「お、おまえだって──」

 照れる優治緒にアリスと言う単語は木綿季の強みでもあった。

高校の時に海外から来た転校生のアリスは、今、優治緒の恋人だった。

どこかで遠い世界で一緒に過ごしていたかのような、そんな雰囲気のある彼女に、一目見て好きになったと、優治緒がアリスに告白した経緯を木綿季は知っており、今日に至るまでのやや劣勢だった二人の対決も、最近このアリスと言う単語にクールな兄もやや取り乱してしまうそんな二人を見ながらも、末の妹の沙知は、

「……優衣お姉……ちゃん……」

 グスグスと涙を流しながら、姉の今の幻のような美しいその姿を、瞳に焼き付けるようにじっと記憶していた。

可愛げのある薄ピンク色のドレスを着た沙知。

 彼女も先程まで木綿季に可愛い、可愛いと、抱きしめられてそのドレスを褒められていたが、優衣の居るこの部屋に来て、花嫁姿に身を纏った姉の姿に感動してしまい、終始泣いてしまっていた。

 ハンカチが涙で湿ってしまう程に、涙を流してしまう。

 今朝。

沙知が目を覚まし起きた時、どこか物悲しい気持ちがあった。

優衣が、姉が、もうこの家から、嫁ぎ先へと行ってしまったんだと、そしてもう優衣姉さんは、この家に帰って来ないと、空虚な寂しい気持ちがあった。

 でも心のどこかでは、今朝も台所でお母さんの手伝いをしているんだと、早く一緒に手伝いに行こうと下に降りるも、そこには木綿季がいて、いつものように明日奈の朝食準備を手伝っていた。

 やっぱり、お姉ちゃんはもうこの家に居ないんだと、姉の居なくなった世界を、改めて受け入れ、これから優衣の代わりにお母さんのお手伝いをしなきゃと、寂しい気持ちを切り替えながら、木綿季と明日奈の朝食の手伝いを始める優衣。

 進学し、大学に通い下宿を始め家を出た優治緒も、今朝は久しぶりに実家で朝を迎え、父である桐ケ谷和人と、朝から互いの研究について熱い論議を交わしていた。

 最近、そんな兄にも彼女が出来たらしく、同棲に近い関係だと木綿季に聴いていた沙知。

 いったいどんな人なんだろうと、早く紹介してほしいなと思う反面、お兄ちゃんも結婚するのかなと、また寂しい気持ちが湧き上がってしまう。

 木綿季は、まだそんな人はいないと言ってはいるが、仲良くしているあの人と一緒になるのかなと、何気に考えてしまう。

 

 ──私も、いつか結婚するのかな……

 

 慶太君と、ふと考えてしまう。

慌てて頭を振ってしまう沙知。

何を顔を真っ赤にしているのと木綿季にからかわれ、そんなにぎやかな朝を過ごし、昼前に優衣が結婚する式場へと到着すると、和人と明日奈は相手の親族に挨拶をしに行き、沙知たちは姉──優衣がいる部屋へと行き、ウエディングドレスに身を包んだ優衣に感動してしまっていた。

 

その時、ああ、優衣お姉ちゃんは本当に結婚してしまうんだと、ずっと心に抑え込んでいた感情が涙となって溢れ出てしまう。

綺麗な、昔、優衣お姉ちゃんと呼んで甘えていた、あの頃から、沙知は優衣に憧れを抱い柄歌。

友達にも、沙知のお姉ちゃんは綺麗だねと言われると、すごく誇らしかった思い出がいくつもある。

沙知も、そんな姉にいつも憧れを抱いていた。

まるでおとぎ話に出てくる様な、お姫様みたいと物心が形成されていく中で、ずっと沙知は優衣に憧れていた。

父、和人と同じように勉強もでき、母、明日奈と同じように料理もでき、二人の両親と同じような優しさと、愛らしい姉としてずっと、その姿を追いかけていた。

そんな姉にずっと憧れを抱いていた沙知。

でも姉が好きな人と、和人と同じ雰囲気を持つ男性と出会い、その人に真剣に恋をして、時間をかけて想いを重ねていき、互いに想いを遂げて、心から結婚を決意した姉を、その人と共に心から祝福していたが、心の中ではどこか、寂しいと思っていた。

 

結婚してほしくない。

 

そんな子どもみたいな思いがあった。

なんで結婚しちゃうの? ずっとお姉ちゃんでいてよと、子どもみたく泣きたかった。泣き腫らし、必死に姉を止めたいと疼く気持ちを、押さえていた沙知。

でも今の、沙知のその花嫁衣装の姿を見て、今まで鬱積していた感情が流れるように、ただ姉の幸せを喜んでいた。

「……お姉ちゃん……優衣、お姉ちゃん……」

何か言って上げたかった。

 

綺麗だよ。

 

と。

 

本当に綺麗だよ

 

と。

 

優衣に告げたい言葉が思うように紡げずに、ただ涙を流す沙知。

こんな時、木綿季お姉ちゃんみたいに、素直に喜べたらと考えてしまう。

感情を素直に面に表せる姉──木綿季。

沙知が尊敬する、もう一人の大好きな姉。

活発だと、元気が良いと、兄──優治緒にからかわれているけど、その裏表の無い明瞭なありのままの感情をそのまま表に出せるそんな姉を、沙知は憧れていた。

運動もでき、勉強もできる次女。

兄に負けたくないと、負けず嫌いなお姉ちゃん。

陸上競技で全国大会で優勝した時も、その凛々しい姿が一番目に焼き付いている。そんな誇らしく尊敬できる木綿季は、母──明日奈のかつての大切なお友達の名前を貰ったと聴いている。

お母さんに勇気をくれた大切な友達。

その子の様に育ってくれていると、父──和人と嬉しそうに話をしている時の、明日奈の笑顔を沙知は一番きれいだと思っている。

そしてその笑顔を作れる姉の事を誰よりも尊敬していた。

そんな木綿季も今、気になっている人がいるらしい。

いつか、今結婚しようとしている優衣と同じように姉の木綿季も花嫁衣装を着て、結婚する日が来て、その日を見送る自分がいるのかなと思うと、ちゃんと今の姉みたくに、泣いて祝福してあげられるのかなと、今自分の胸にこみ上げているこの感情をどう抑えればいいかわからずに、じっと二人を見つめている沙知に、

「ほら、沙知ちゃんもお姉ちゃんに何か言って上げて」

 木綿季に背中を押されて沙知は優衣の前に出てしまう。

 心の準備がと、慌てるも、何の準備もないままに優衣の前に出てしまい、

「……お、おねえちゃん……」

素直に綺麗だよと言いたいのに、胸がいっぱいで言葉が出ない。

こんなにも綺麗な姉を見て、何も言えないでいる自分が恥ずかしく、一生懸命に言葉を紡ごうとするが、言葉がうまく出ない。

 そんな沙知に、優衣はそっと手を繋ぎ、笑顔で、

「……沙知ちゃん……」

 小さい頃からずっと見せてくれていた笑顔を向けてくれる優衣。

 

 大丈夫だよ。

 

 ちゃんと解ります。

 

 そう笑顔で告げてくれる優衣の優しさから深奥から込み上げてくる熱い思いに、沙知はポロポロと涙を流して、

「……おめでとう……お姉ちゃん……」

 やっと言えたその言葉に、

「……すごく……本当に……綺麗だよ、お姉ちゃん……」

 ようやく胸の中に貯めていた沢山の言葉を優衣に告げる沙知。

「……ありがとう、沙知ちゃん……」

 ぎゅっと沙知を抱きしめる優衣。

 ポロポロと泣き出す沙知は優衣を抱きしめ、

「……本当に……すごく、すごく綺麗だよ……お姉ちゃん……し、幸せに、なってね……」

「はい」

 笑顔でそう答える優衣の笑顔に、沙知は涙で視界を濁してしまい、手に握り締めていたハンカチで涙を拭うも、涙は止まらなかった。

 

 ……良かった。

 

……ちゃんと言えて。

 

……お姉ちゃんに、おめでとうって言えて、本当によかった。

   

 と、ようやくに告げることのできたその言葉に、沙知は安堵の息を漏らし、今まで抑えていた感情のままに泣いた。

「やっと言えてよかったね。沙知ちゃん」

木綿季に背中から抱きしめられ、頭を撫でられると、少し気持ちが落ち着いていく。

「沙知、がんばったぞ」

 優治緒も後ろから沙知の頭を撫で、二人の兄と姉に笑顔を向け、

「うん」

 涙が引いた笑顔を向け、笑いあう三人。

 

 すると、

 

「優衣、準備できたかい」

 と、桐ケ谷和人が明日奈を連れて室内へと入ってくる。

「あ、お父さん、お母さん」

 ウエディングドレスを身に纏った優衣に、和人と明日奈は見惚れるように言葉を失い、二人はそのまま晴れやかな花嫁になった娘を見詰めていた。

「じゃあ、父さん、母さん、俺たちはこのまま式場で待っているから」

「しっかりエスコートしてあげてね、お母さん、お父さん」

 優治緒と木綿季は、父と母と優衣だけにしようと、この場を去り、

「優衣お姉ちゃん、待っているね」 

 と、沙知も同じように部屋を後にする。 

 二人の娘である優衣と、この世界で自分の両親になってくれた、和人と明日奈だけが残り、三人だけの、最後の時間を向かえた。

「……お父さん、お母さん……いえ、パパ、ママ……」

 ずっと言いなれていた懐かしくもどこか気恥しい、二人を読んでいた頃を思い出す優衣。

 ただのプログラムだった自分を、人間の様に接し、そしてこの人間と変わらぬ身体を、二人の血肉を分けて創りだしてくれた事に感謝なんてしきれない。

 人間と何も変わらない身体。

 子どもを産むことはできないかもしれないが、自分を一人の女性として見てくれたあの人と、この世界で愛を育めたことと、そして今、結婚し、共に人生を歩んでいく、人としての幸せをこの二人に貰ったんだと思うと、一生をかけても返せないような幸運を二人がくれたんだと、優衣は胸に去来する想いに言葉を詰まらせてしまう。

 でも先程沙知にしてあげた事と同じように和人と明日奈が、

「……優衣……すごくきれいだよ」

「本当に……綺麗……本当に、良かった……」 

 むせび泣く明日奈を和人は背中から抱きしめ、その上から優衣が二人を抱きしめる。

「パパ、ママ、ありがとうございます……私を、娘にしてくれて……あの人と巡り合わせてくれて……本当にありがとうございます」

 本当なら、この世界を知らないまま、プログラムの一つとして消えていた自分を、本当の人間として、この世界に導いてくれた両親に、優衣は精一杯の言葉を告げた。

 

いつか、パパとママみたいな家族を持ちたい。

 

でも私はプログラム。

 

この現実世界に入れない。

 

そう思い諦めていた時期もあった。

 

それを変えてくれたのは、今自分が抱きしめている両親が、私を受け入れてくれたから成せたことなんだと思うと、あの日の事を思い出してしまう。

 

沢山の負の感情を受けてしまい、記憶を失い、自分がプログラムの一つである事を忘れ、幸福の温もりを求め、二人を探し、彷徨っていた自分を受け入れてくれた、あの包まれる温もりは、今もこうしてあり続けている。

 

「……私は、絶対に幸せになります……パパとママみたいに……」

 

 そう告げる優衣の言葉に、和人は、

「ああ、絶対に幸せになれるよ……彼なら……優衣を幸せにできるから」

「はい」

 娘として甘える最後の温もりなんだと、和人が撫でてくれる手の温もりをしっかりと子の身体に記憶していると、

「優衣ちゃんが好きになった、あの人なら……大丈夫だよ……だって優衣ちゃんが好きになった人だからね」

 明日奈も和人と同じように、自分の頭を撫でてくれる。

 

 いつか、こんな温もりを私の子供たちにも上げたいと、明日奈のような母親になりたいと、心から思う。

 もう自分は両親から巣立つんだと、そして、私もいつか親になれるんだと、優衣は微笑みながら、

 

「パパ、ママ……優衣のパパとママになってくれてありがとうございました。私、幸せになります。パパとママみたいにきっと……」

「ああ」

「うん」

 優衣の右手を明日奈が持ち、和人は左手を持ち、

「さあ、行こうか」

「花婿さんが待っているよ」

 優衣は、

 

「はい♪」

 

 白いブーケとウエディングドレスを眩かせながら、教会へと向かう。

 

 一人の花嫁として。

 

 巣立ちの日に END

 





 あとがきです。

 え……とりあえず、色々な突っ込みがあると思うのですが、取りあえず小生の小説の中では、優衣ちゃんは人間と同じ身体を手にしている設定になっております。
 
 本来なら小説として書くべき内容だったのですが、一応裏設定としましては、和人さんが電子関係の科学技術を収めた後に、生命工学に着手し、助手の明日奈さんと共に、優衣ちゃんの身体を、和人さんと明日奈さんの遺伝子情報で構築し、電子情報を脳内電気に変換し、人間と変わらない子どもとして生まれたと……なんか書いてみると色々と突っ込みがありますね……。

 まだ未熟な手前、しっかりとそういう設定を消化できるようにしなければ。

 では、最後まで読んでくださりありがとうございます。

 おかげでお気に入りも298人の方々に登録していただき感謝いたします。

 未熟で粗忽者、また色々とおなざりなところがありますが、これからもよろしくお願いいたします。

 ではまた。

 追伸・シノンさんとケイさんの後篇。
    なんとか完成できそうです。

    全速力で頑張ります。

    (またコケなきゃいいけど)

    とりあえず予定は8月までに!

    (首を絞めなきゃいいけど)

    では失礼します。

    また次回に。

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