平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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アルヴィスにとって原作改変の重要ポイントになります。
そのキーマンとなる2人が初登場です。



8.縁談2

視点変更(アルヴィス)

 

 

 

「それは残念だ。できれば理由を聞かせてほしい。」

 

アルヴィスは上手く残念な表情を作りながらティルテュに訊ねた。

 

「はい。私は貴方の弟君のアゼル様をお慕い申し上げております。貴方のお言葉は本当に嬉しかったです。しかしアゼル様の好きな気持ちに嘘をつくことは出来ません。アルヴィス様は私が小さいころ「嘘は嫌いだ」とおっしゃっておられたのを思い出しました。ですから無理です。」

 

そうアルヴィスに告げてティルテュはレプトールの方を見る。

 

「お父様、申し訳ありません。この縁談は無かったことにしてもらえませんか?」

 

「ティルテュよ。今の言葉に偽りはないのだな。」

 

「はい。正直フリージ家を考えるならこの縁談は受けるべきものですが、先ほど申した通りです。アルヴィス様は嘘がお嫌いです。そんな状態で夫婦になっても上手くいくはずがありません。」

 

ティルテュは晴れやかな表情でレプトールに告げた。

 

(ティルテュはやはりいい子だな。これなら間違いなくアゼルを支えてくれるだろう)

 

アルヴィスは自分の選択が間違っていなかったことを確信した。

 

「ティルテュ。お前を試すような真似をしてすまなかった。」

 

レプトールはティルテュにいきなり頭を下げた。

 

「え。お父様何を・・・・・・」

 

「ティルテュ殿。私も申し訳ない。お父様を責めないでやってほしい」

 

アルヴィスもティルテュに頭を下げる。

 

「アルヴィス様もどうして・・・・・・・」

 

「ティルテュ殿。私はヴェルトマー家当主の座を弟のアゼルに譲る。そして改めてお願いする。アゼルの妻となり公爵夫人としてアゼルを支えてほしい。」

 

 

 

視点変更(ティルテュ)

 

 

 

(ちょっと待って。今アゼルに公爵家当主を譲るって言ったわ。つまり私がアゼルの妻になれるってこと!!)

 

またもティルテュは混乱のさなかにいた。

 

(そういえばアルヴィス様は「私の妻」ではなく「公爵夫人」と強調していた。最初から私の本心を確認したかったのね。きちんと私が自分の気持ちに正直になれるか試した)

 

状況がようやく飲み込めたティルテュは、はっきりと返す。

 

「喜んで受けさせていただきます。妻として公爵夫人としてアゼルを全力で支え続けることを誓います。」

 

ティルテュは最高の笑顔で2人に告げた。

 

視点変更(アルヴィス)

 

(よし!!この縁談が決まったことは大きい。これでアゼルも安心だ。)

 

アルヴィスはホッと一息ついたが・・・・・・・

 

「で・・・・アルヴィス様・・・・・」

 

ティルテュは笑顔のままアルヴィスに訊ねる。

 

(・・・・!!!!何だ!!この悪寒は!!!ティルテュが怖い、怖い、怖い)

 

アルヴィスはティルテュの笑顔に恐怖した。

 

「私が勘違いしたままお受けしていたら、そのまま妻にしていただけたのですか?」

 

ティルテュはとびっきりの笑顔をアルヴィスに向ける。

 

「・・・・・・・・・!!!!!!!!」

 

アルヴィスは恐怖のあまり言葉がでない。

 

「ティルテュ。今回の件を提案したのは私だ。アルヴィス殿がティルテュを選んだ理由を聞いたうえでな」

 

レプトールが2人に割って入る形でティルテュに告げる。

 

「お父様は黙ってください!!!!!私はアルヴィス様に聞いているのです。で・・・・・どうなのですか?」

 

「・・・・・・正直君が受けることは考えてなかったな。君がアゼルを慕っていたのは知っていたからね。とは言っても君を傷つけてしまったのは事実だ。すまなかった」

 

アルヴィスはティルテュに頭を下げた。

 

「ダメです。許せません。それならば私のお願いを1つ聞いてください。それで許してあげます」

 

「そうだな。わかった。但し私にも出来ることだろうね?」

 

「はい。それでしたら・・・・・・・」

 

ティルテュがお願いを話し始めようとしたとき

 

「兄さん!!!」

「お姉さま!!!」

 

客間の入り口のドアが勢いよく開けられた。

 

赤い髪に赤い礼装の10代半ばの童顔の少年と茶色がかった髪に紫の礼装を羽織った同じ年くらいの少女が肩で息をしている。

 

「アゼル!!」

「エスニャ!!」

 

アルヴィスとティルテュは同時に声を上げる。

 

「兄さん!!どういうことですか!!」

「姉さん!!どういうことですか!!」

 

アゼルとエスニャと呼ばれた2人が同時に声を上げ、さらに続ける。

 

「2人が結婚するって本当ですか???」

 

2人は勢いよくアルヴィスとティルテュに詰め寄った。

 

「2人とも落ち着きなさい!!!!」

 

レプトールが一喝した。

 

「場所を考えなさい。今からきちんと説明する。座りなさい。話はそれからだ。」

 

レプトールはピシャリと言うと侍女に飲み物を人数分持ってくるように伝えた。

 

レプトールの一喝が効いたのだろう。2人は少しずつ落ち着きを取り戻す。少ししてからアゼルはティルテュに駆け寄り

 

「ティルテュ。ごめんね。昨日は酷いこと言って。許してほしい。」

 

アゼルは勢いよく頭を下げる。

 

「ううん。私も悪かったから。アゼルの気持ちも考えず無神経なこと言ってごめんなさい。」

 

ティルテュも頭を下げる。

 

「レプトール卿。急なご訪問の上、失礼な行動をとってしまい申し訳ありませんでした。エスニャは責めないでもらえますか?私が案内をお願いしました。」

 

アゼルはレプトールに頭を下げる。

 

「アゼル卿。君のとった行動は軽率すぎる。残念だが謝れば済む問題ではない。とは言っても娘にわざわざ謝りに来てくれたことには礼を言う。かなり気にしていたようだからね。」

 

レプトールはティルテュを見ながら肩をすくめた。

 

「お父様!!!!!!!」

 

ティルテュは顔を赤くして下を向いた。

 

「しかし、アルヴィス卿にも迷惑をかけたことには変わりない。しかしここは娘に免じて私のお願いを1つ聞いてもらうことで無かったことにしよう。」

 

「承知いたしました。ありがとうございます。そのお願いとは何ですか?」

 

アゼルはレプトールに訊ねる。

 

 

 

視点変更(エスニャ)

 

 

 

(良かった。アゼル様とお姉さまが仲直りできて)

 

ティルテュとアゼルの様子を見てエスニャは安堵する。

 

(でも、お姉さまはアルヴィス様と結婚される。お父様の差し金かしら?なんとか止めたいけど・・)

 

エスニャはアルヴィスとレプトールを見る。

 

(でも変だわ。お父様はアゼル様に向ける表情がすごく優しい。アルヴィス様もそれを微笑ましく見ているわ)

エスニャは首を少しかしげる。

 

「承知いたしました。ありがとうございます。そのお願いとは何ですか?」

 

アゼルはレプトールに訊ねた。

 

「ティルテュをよろしく頼む。お転婆なところがあるが、アルヴィス殿曰く君を十分に支えてくれる立派な女性とのことだから幸せにしてほしい」

 

「え!!!それはどういうことでしょうか?」

 

「言葉通りだ。アルヴィス卿は君の縁談相手に私の娘ティルテュをとの話だったのでね。ティルテュも喜んで君の妻となって支えると誓ってくれたよ。」

 

アゼルはティルテュを見ると赤い顔がさらに赤くなっている。しかししっかりと自分を見つめている。多少震えているようだった。

 

(え!!!それって。お姉様!!アゼル様と一緒になられるのですね。でも・・・・お姉様震えている。でもアゼル様は大丈夫ですよ。だって私にはっきり言いましたものね。)

 

「レプトール卿。ありがとうございます。その願いお受けいたします。私はティルテュを愛しております。一緒になりたいです。結婚をお認めいただけますか?」

 

「もちろんだ。よろしく頼む」

 

「はい。彼女を幸せにすることをお約束いたします」

 

レプトールにはっきりと伝えると次はティルテュに歩み寄る。

 

「ティルテュ。私と結婚してくれますか?」

 

「はい!!喜んで!!」

 

2人は人目も憚らず抱き合った。

 

エスニャはそれを見てほほ笑む。

 

(良かった。お姉さまもアゼル様も幸せそう。羨ましいな。私もアルヴィス様と・・・・・・。

ううん。無理ね。あんな凄い人の奥方なんて)

 

「2人ともお熱いところ申し訳ないが、話はまだ終わってないぞ」

 

レプトールはいつまでも世界に入っている2人に声をかけた。

 

声をかけられた2人は慌てて離れる。

 

「さてこれからの話を始めようか」

 

アルヴィスが全員に声をかける。

 

「アルヴィス様。・・・いいえお義兄様。その前に大事なことを忘れておりますよ」

 

ティルテュはそう言うと片目を閉じて開いた。

 

それを見たアルヴィスは何かを思い出したようにうなずく。レプトールも同様だ。

 

(あれ?何かお姉さまが2人に合図を送ったように見えました。)

 

エスニャはティルテュの不思議なしぐさに気づく。ティルテュはエスニャに、いたずらっぽい表情を向けた。

 

「お義兄様は独身でいらっしゃいますよね。ご紹介したいお相手がおりますので、よろしければ前向きにご検討いただけないですか?」

 

ティルテュはそう言いながらエスニャの後ろに回りその肩に手を置いた。

 

「エスニャはお義兄様をお慕いしています。私よりもしっかりしていますし、アルヴィス様を支えてくれます。姉妹共々ヴェルトマー家にご厄介になってもよろしいでしょうか?」

 

ティルテュはアルヴィスに笑顔を向ける。

 

(え!!お姉さま!何を言っているの!そんなお願いをお父様もアルヴィス様も聞いてくれるわけが・・・・)

 

「それは良い!!アルヴィス殿、是非お願いしたい。いかがだろうか?」

 

レプトールも同調する。

 

「エスニャ、君が良ければ私の妻となって支えてほしい。」

 

アルヴィスはエスニャに笑顔を向ける。

 

(え!!!)

 

エスニャは固まってしまった。

 

(えええええええええええええ!!!私がアルヴィス様の奥方になれるの?アルヴィス様は私にプロポーズをしてくれた。ええと返事しないとdhjkghghsgしf)

 

エスニャはパニックになり言葉が出ない。

 

「エスニャ殿はいきなりの話なので混乱されているようだ。ティルテュ殿、その前に今回の縁談について話をしたい。エスニャ殿もいきなりすまなかった。返事は今で無くても構わない。できればいい返事であれば嬉しい。」

 

アルヴィスは落ち着いた様子で伝えた。

 

エスニャはその言葉を聞いて落ち着きを取り戻していく。

 

(アルヴィス様に気を遣わせるなんて、私はダメだわ。でもお姉さまの縁談については聞いておきたいわ。確かアゼル様に家督を譲られるみたいだし)

 

「アルヴィス様、ティルテュの申すことに偽りはありません。ずっとお慕い申し上げておりました。正直嬉しいです。喜んでお受けします。そして今回の縁談についてお聞かせいただけますか?」

 

「ありがとうエスニャ。そうだね。では話をさせていただこう」

 

アルヴィスは答えると今回のことについて話し始めた。

 




このアゼルとティルテュのカップリングは予定通りで乱入は考えてなかったのですが、その方が面白いと思いました。
エスニャのパニック文面は最近見たアニメを参考にしました。
次話は4人による会話がメインです。複数の会話を文章で描くのはとても難しいですね。

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