平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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久しぶりの更新になります。

大変遅くなり申し訳ありません。

資格試験は残念ながら落ちました。来年目指して頑張ります。

ここでは親子会話編になります。

どちらもキャラが作りにくいです。


68.親子

アズムールは現況についてクルトに全て話した。

 

当主の交代、クルトの娘の存在、アルヴィスがグランベルを出ていくことなどだ。

 

アズムールが話す間、クルトは一切質問をせずに聴いていた。その表情には苦悶がにじみ出ている。

 

そして・・・・

 

「ここまでが現在の状況じゃ・・・・さてクルトよ」

 

アズムールは締めくくると切り出す。

 

「この状況を今後お前はどうするつもりじゃ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

クルトは沈黙する。

 

「アルヴィスはお前の味方と思っていたようじゃが、どうすればそのように思えるのかわからん」

 

アズムールは容赦なく切りつける。

 

「3歳の子供に4年間も植え付けた傷は大きい。ましてやそれが両親ともに失うきっかけになったのだからのう」

 

アズムールはクルトがアルヴィスの母シギュンとの関係を持った状況を突き付けて攻め上げる。

アルヴィスは3歳の時に7歳になるまで見せつけられる形となったからだ。

 

「ヴィクトルが自殺した時の遺書の内容まで嘘をついて父親を貶める。その後、反省した様子もない。アルヴィスが見限るのも当然じゃな」

 

そこまで言うと鋭い視線をクルトに向けた。

 

「父上はこの状況を良いと思っておられるのですか?」

 

クルトは反論する。

 

「すでにユングヴィ家、ヴェルトマー家の当主は聖なる武器の所有者ではございません。炎魔法ファラフレイムの所有者であるアルヴィスはグランベルを出奔すると申している状況です」

 

クルトは続ける。

 

「周りの諸国とほぼ隣接しているグランベルにとってこの戦力低下は大きな火種を生みます。それを知ったうえでお許しになるのですか?」

 

クルトは苦悶の表情を崩さずアズムールを見る。

 

「クルトよ。それがお主の言いたいことか?」

 

アズムールはやや呆れた表情を見せる。

 

「国の一大事と個人的な恨みを天秤にかけるわけにはいきません。それを誤って不幸になるのは民です」

 

クルトは言い切った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アズムールはクルトを見る。

 

(最後まで過ちを認めず、アルヴィスを非難するのか。もう仕方ないのう。最後の手段じゃ)

 

「クルトよ。お主の娘が見つかったとき、わしはお前の王位継承権をはく奪する」

 

アズムールは冷たく告げる。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

クルトが驚愕の表情を見せる。

 

「父上!!!」

 

「お主にこのグランベルを任せるわけにはいかん。お前の取った行動がアルヴィスという得難い人財を失う結果になったとなぜ気づかぬ!!!!!」

 

アズムールは続ける。

 

「わしはお前の廃嫡を考えておった。だが、アルヴィスは強く反対した!!!!!」

 

アズムールは叫ぶ。

 

「!!!!!!!!!!!!」

 

クルトは声を失う。

 

「そしてバイロン、アンドレイもお主を見捨ててはおらんかった。だが、お主がそのような態度ではいずれ誰からも見捨てられるのが目に浮かぶようだわ!!!」

 

アズムールは怒りの表情を浮かべた。

 

「クルトよ。これが最後じゃ。アルヴィスにこれまでの愚行を心から謝罪をするように。これは王命だ!出来ぬのならばこの時点で王位継承権をはく奪する」

 

アズムールの言葉にクルトは顔面蒼白になる。アズムールの表情から本気であることを感じ取ったからだ。

 

「父上!!正気ですか!!」

 

クルトは叫ぶ。

 

「無論だ!王は一人では国は守れぬ。配下の言葉を聴き、労り、調和を持って成り立つ。お前ではこの国は将来どうなるか目に浮かぶようだわ!!」

 

アズムールはクルトの叫びに切り返した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

クルトは下を向いて震えている。その表情には怒りが見え隠れしていた。

 

(そんなに自分の過ちが認められんか。クルトはなぜそこまで固執する?ただ頭を下げれば良いはずなのじゃがな。ううむ。わからん)

 

アズムールは本気で廃嫡を考えてはいない。

 

流石にクルトの娘が見つかり保護できたとしても、誰かとの婚姻により婿を取らせる必要がある。

そもそもその娘が仮にその時点で結婚していたとなれば、ややこしい事態になる可能性も否定できない。当然娘の人生を奪う行動をアルヴィスは良しとは考えないだろう。

 

しかし、クルトの状況をこのままにしておけないのも事実である。クルトに不信感を抱いている者が多い中で、自らの過ちを認めないのは、これから王となったときに色んな火種を生むだろう。

 

「クルトよ。何がお前をそこまで頑なにするのだ」

 

アズムールは落ち着いた口調で問いかける。

 

「私はシギュンを愛していました。心の底から。初めて人を好きになりました。彼女もそれに答えてくれました」

 

クルトは絞り出すように言葉を紡ぐ

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アズムールは沈黙する。

 

「過ちだったとは思わないし、実際夫であるヴィクトルも複数の女性と関係を持っていて、シギュンは悲しい表情をしていることが多かった」

 

クルトは続ける。

 

「ヴィクトルは自殺したが、彼がシギュンを信じられなかったせいもあると思っています。ただアルヴィスには申し訳ないと思っています。実際彼が両親を失ったのは事実です」

 

クルトはそこまで言うとアズムールに顔を向けた。その表情には怯えはなかった。

 

「アルヴィスはその時まだ7歳の子供だった。両親を失う原因である私に対して憎しみがあるのは当然です。ですが、彼は私とシギュンの関係を穢れたものとして見ている。私とてそれを絶対に認めるわけにはいきません」

 

クルトはそう締めくくった。

 

「お主、それをアルヴィスの前で言えるのか?」

 

アズムールは淡々と訊ねる。

 

「ええ。言えます。彼とて貴族であり、もう成人している。彼が良い父親だったと言っていたヴィクトルは私にとっては愛するシギュンを傷つけた卑劣な男です」

 

クルトは凛とした表情で返した。

 

「廃嫡と言われてもそれは認められないということか・・・・・・・・」

 

アズムールはつぶやくと目を瞑った。

 

「お主の言い分はわかった。これ以上は言わん。だがアルヴィスの出奔は避けられぬぞ」

 

アズムールは厳しい表情を向ける。

 

「これは異なことおっしゃる。陛下がアルヴィスを説得してくださればよろしいのではないでしょうか。ヴェルトマー家の行く末を考えれば・・」

 

クルトは淡々と話す。

 

「心配には及ばぬ。ヴェルトマー家当主アゼルは聡明でしっかりしておるし、奥方にはフリージ家のティルテュ、さらに相談役にドズル家のレックスがついておる」

 

アズムールはクルトの皮肉を切り返して続ける。

 

「ヴェルトマー家直属騎士デューに奥方のユングヴィ家のブリギッドがいる布陣のどこにスキがあるかのう」

 

「父上。一つお聞きしたことがあります」

 

クルトが真剣な表情を見せて訊ねる。

 

「なんじゃ?」

 

「デューとは何者ですか?」

 

「知らん。アルヴィスが拾ってきた」

 

アズムールはそっけなく答える。

 

「全く素性の知らない者に公爵家の者を嫁がせるとは、一体何を考えておられるのですか?」

 

クルトはアズムールを責める。

 

「それについては説明したはずじゃ。元々ブリギッドはお前に嫁がせる予定で進めておったが、デューと相思相愛であると知ってしまったからのう」

 

アズムールは続ける。

 

「ヴィクトルの二の舞は避けねばならんかった事情もあったからな。それにブリギッドは海賊生活の方が長く、今さら生粋の貴族社会に染まった者へ嫁がせるのも難しい。その点、デューは狂信的とも言っていいぐらいアルヴィスに心酔しておるし、現当主アゼルの信頼も厚い」

 

皮肉を込めて締めくくった。

 

クルトは自分が原因で自殺したヴィクトルの件を持ち出され口ごもった。

 

「付け加えるなら、デューはシグルド、エルトシャンと剣で互角にやりあえる実力を持っておるよ。最近は部隊の指揮も学んでおるようじゃ」

 

アズムールは淡々と話した。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!」

 

クルトは言葉を失った。

 

「言っておくが、デューはグランベルに残り、アゼルとアンドレイを助けたいと申しておる。得難い人財じゃな」

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

クルトは最後まで認めませんでした。

プライドはあるでしょうし、シギュンを想っていたのは間違いないと思います。

ですが、許されていいわけはありませんね。

最後はデューを持ち上げまくる。いいんです。一番好きなキャラですから(笑)

うまく文章ができているか少し不安ですが、お付き合いいただければと思います。

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