幸い修理業者さんより格安のパソコンが購入できました。
ロダンの処遇についてなどの話になります。
次の展開を決めるにも時間がかかりました。
デューの容赦ない言葉にクロードとラケシスは何も言い返すことが出来なった。
(デュー殿のおっしゃるとおりだ。ロダン神父は私の大切な人に危害を加えようとした。さっき私はバイロン卿に対して妻を侮辱されて、怒りのあまり言い返したのではなかったのか)
クロードは自分の不用意な発言を後悔する。
(私が嫌われてでも、クロード様を止めなければいけなかった。ロダン神父は国家転覆を図った重罪人よ。陛下がおっしゃったことなのに、それに対して何を考えていたのかしら)
ラケシスも罪悪感に打ちひしがれていた。
「陛下、アルヴィス。おいらの言っていることに間違いはないかな?」
デューは二人に訊ねた。
「全くその通りだ。デューよ。よく言ってくれた」
「デュー。ありがとう。助かった」
アズムールとアルヴィスはそれぞれデューにねぎらいの言葉をかけた。
デューはペコリと頭を下げると自分の席に座る。
「陛下、先ほどデュー殿がクロード殿の責を問わぬとのことですが・・・・・・・」
アンドレイがおずおずと訊ねる。さっきの件の後ということもあり、言葉を丁寧に選んでいる。
「うむ。本来であればクロードに何らかの処分が必要ではあるが・・・・・」
アズムールがそこまで言うとチラっとアルヴィスを見て続きを促す。
「クロード殿はアグストリアより来られたラケシス殿と結婚されたばかり。ここでクロード殿を処分してしまうのは少し問題があると考えます」
アルヴィスが続いた。
「アルヴィス卿、何が問題なのだ。今回は国家転覆の重罪人がエッダ家の重鎮となればクロード殿の管理責任は問わねば示しがつきませぬぞ」
これに嚙みついたのはバイロンだ。明らかにリングの謹慎や先ほどの会議でのクロードの反論に対する意趣返しに近い。
「バイロンよ。お主もよく分かっておらんようだな。すまんがデューよ。遠慮はいらん。いつもの口調で話せ」
アズムールが再度促す。
「バイロン卿。今回のクロードとラケシスの縁談はシャガール殿下が主導で動いている。っていうかラケシスが国内の縁談を断りまくって、シャガール殿下が困っていたところをグランベルが助けた形になっているの」
デューはそこまで言ってラケシスに視線を送るとラケシスは気まずそうに視線を逸らす。
「そのお願いを聞く羽目になったのは、エーディンがシャガール殿下からの交際申し込みを即断ったのが原因だけどね」
デューは次の標的のエーディンに視線を送ると、ラケシス同様エーディンも気まずそうに視線を逸らす。
「クロードとラケシスの結婚は二つの国にとって非常に大きなものになっている。それを壊そうとしたのがグランベルの、さらにはエッダ家の重鎮だとなればどうなるか想像つかない?」
デューの言葉にバイロンは「うっ」と唸る。
「このことがアグストリア側にばれたらせっかくの両国間に亀裂が走っちゃうよ。だから陛下はクロードを処分しないことにしたんだよ。と同時に・・・・」
デューは一息入れる
「ロダンのおっちゃんには死んでもらわないといけない。絶対にね」
デューはそう言って締めくくった。
その言葉に長い沈黙が走った。
「おおむねデューの言っていることであっておる。どうもワシやアルヴィスだと遠回しな言い方しかできん。あと付け加えるなら・・・・・」
アズムールがデューの後を引き継いで続ける。
「ノディオン王家のラケシスがエッダ家のクロードに嫁いでくれたことはグランベルにとって大きなものであったことは間違いない。二人を見ても良き関係になっていきそうじゃな」
アズムールが二人に優しい表情を向ける。
「陛下」
「陛下」
クロードとラケシスは思わずアズムールを見る。アズムールの表情に二人の表情にも硬さが消えた。
「ワシからは以上じゃ。何かこの件に反論はあるか!!!」
アズムールは全員に視線を投げる。特にバイロンにはキツイ視線を向けた。
「・・・・・・・・ございません・・・・・」
バイロンは深々と頭を下げた。
その後・・・
エッダ家重鎮ロダンの企てについては国内で内密に処理することが決まった。
中心となったロダンは処刑。一族については地位はく奪と無期限の謹慎処分となった。
ことの大きさを考えれば一族についても厳罰にしたいところだが、責任者であるクロードに大きな処分を下せない以上、謹慎に留めるのが妥当と判断された。
ロダンの後任は妻であるラケシスが一旦引き継ぐ形となった。彼女は実務経験がないため、まさに形だけのものだ。
「ロダンの処刑についてはわかりましたが、対外的にはどのようにするのですか?」
レプトールから質問が飛んだ。当然の質問だ。エッダ家の中心人物がいなくなったとなれば当然理由がいる。
「病死で処理します。持病を抱えていたことはエッダ家の者から確認を取っております」
アルヴィスがその質問に答えた。
「流石はアルヴィス卿。そのあたりの抜かりはないか」
ランゴバルドは納得した表情を浮かべた。
「とは言っても秘密は洩れない越したことはないですが、先手を打ち、アグストリアの方々へはこちらからロダンの病死を伝えます」
アルヴィスは冷静に話す。
この行動は仮にロダンの処刑が明るみになったとしてもグランベルの先手行動により、アグストリア側は追及してこないとの判断だ。
どの国でも余計な火種は内部で消したいのは同じだ。イムカやシャガールはせっかく良好になったグランベルとの関係に亀裂は走らせたくないと考えるだろう。
「なぜわざわざこちらからロダン神父のことを伝える必要があるのですか?」
この質問はアンドレイだ。クロード、ラケシスも同様に頷いている。
「こういった情報が一番洩れてほしくないのはイムカ陛下やシャガール殿下ではなく、それ以外のアグストリアの有力貴族だ。彼らが何らかの形で先に情報を掴んでしまうと、それを利用してこちら側に干渉を仕掛けてこないとも限らない」
アルヴィスは一息つくと続ける。
「グランベルとしては先にロダンを病死とアグストリアへ正式に伝えてしまえば、イムカ陛下やシャガール殿下は仮に別の情報が有力貴族からあったとしてもグランベルの正式な情報を盾にできる。ここで大切なことは隠さないことだよ」
アルヴィスはここで冷たい笑みを浮かべると
「それに嘘は言っていない。ロダンは病気だ。暗黒神に魅入られ、地位も信用もすべて失った。自分がどれだけ大それたことをしたのかも気づいていない哀れな男だよ」
アルヴィスはそう締めくくった。その言葉に全員の緊張が研ぎ澄まされた。
アルヴィスは嘘をつくことができない。その自身の教示を曲げてでもそれを突き通すつもりあることが全員に伝わった。
「それでは最後の議題に入ります」
アルヴィスが宣言した。
「さて先ほど話があったが、ロプト教団の暗躍はグランベルだけではない。他国にも伸びておる」
口火を切ったのはアズムールだ。
「とは言っても他国に対して我が国が干渉するわけにもいきません。そこで・・・・・・」
アルヴィスが続ける。そしてユングヴィ家の方を向き
「ブリギッド殿。デューともに各国の状況を見てきてもらいたい」
アルヴィスがそう言って頭を下げる。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
ブリギッドは驚愕する。隣のデューは表情を変えていない。
(え!!アタシが密偵をするってこと?デューと一緒に!!)
「今回の人選の理由としては、内密に進めてもらわないといけないこと。そのため各国の町や村に溶け込んでもらう必要がある。残念ながらここにいる他の面々では難しい」
アルヴィスが続ける。
「そしてロプト教団が相手となるため、いざ戦闘となったとき独自で動けて対処できる者でなければならない。以上のことからブリギッド殿とデューであれば可能と判断した」
そう言うと周りに対して
「意見のある人はおられますか?」
と全員を見渡し意見を求めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
意見は出てこなかった。この任務は生粋の貴族では務まらない。次にロプト教団の動向に対応できる戦闘力も必要になる。デューはクリアーしている。ブリギッドは貴族ではあるが生粋ではないため、町や村に溶け込むのは難しくはない。
「ブリギッド、デューよ。発言を許す。
アズムールが促した。
「アタシで務まるかな?」
ブリギッドは自信なく答える。
「大丈夫だよ。おいらがいるから」
デューがブリギッドに笑顔を見せる。それを見たブリギッドは・・・・・・
「承知したよ、アルヴィス卿。アンドレイ。かまわないよね?」
そう言ってアンドレイに訊ねる。
「もちろんです姉上。重要な任務になります。どうかお気をつけてください。それと・・・・」
アンドレイはデューの方にいたずらっぽい表情を向けて
「姉上をよろしくお願いします。義兄上!!」
と元気よく言うと頭を下げた。
「!!!!!任されたよ。アンドレイ」
デューは「義兄上」発言に一瞬戸惑ったが、すぐに返した。
最後までお読みいただきありがとうございました。
デューとブリギッドは大きな展開を迎えることになりました。
アルヴィスとエスニャを動かす案も考えましたが、やはり二人は目立ってしまいます。
それはブリギッドも同様なので迷いましたがこちらのカップル(笑)にしました。
ロダンについては細かく書かせていただきました。
その対応も慎重さが必要である部分も含めてです。過剰かもしれませんが、止まりませんでした(笑)
申し訳ございません。個人的な話ですが、来年の資格取得を目指して今週より通学することになりました。更新スピードが遅くなります。月2、3回は投稿できるよう頑張ります。