平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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更新が大変遅くなりました。

リングが激高し最悪な行動に出ました。

もちろんそのままにはしません。

多人数の対応は難しいです。

ティルテュとレックスが空気です(笑)

ラケシスが存在感を何故か?発揮しています。


62.会議4

リングが崩れ落ちたと同時にシグルドがエーディンに駆け寄る。

 

「エーディン!!」

 

「シグルド!!」

 

シグルドがエーディンを抱き寄せた。

エーディンもシグルドに体を預ける。

 

二人は何も言わない。ただただ抱き合っていた。

その光景をほとんどの者が安堵の表情で見ている。

 

「父上・・・・」

 

アンドレイが崩れ落ちているリングに話しかける。

 

「皆、若いな。だが、認めるわけにはいかん。アンドレイよ、このままいけばどうなるか分かっているのか?」

 

リングはアンドレイを見ず絞り出すように質問する。

 

「父上が考えておられるのは王子推進派と反対派の衝突ですね。だからこそ殿下を庇う必要があった。このままいけば反対派が多数を占めます」

 

アンドレイは務めて冷静に返して続ける。

 

「ですがその前に父上はエーディンの言葉に対して暴力にて抑え込もうとされた。その時点で敗北しています。違いますか?」

 

アンドレイの言葉にリングは反論する。

 

「殿下はシギュン殿に同情されておられただけだ。実際ヴィクトル卿は複数の女性を抱え、シギュン殿をないがしろにしていたではないか?」

 

「それは貴方の想像であり、妄想だ。私の父を侮辱するとはどういうつもりだリング卿」

 

流石に話がヴィクトルまでくればアルヴィスが黙っていなかった。

 

「夫婦間の出来事など当人以外分かるはずもない。仮に殿下が同情したからだと言って、殿下の行動そのものが正当化されるわけではない」

 

容赦なくアルヴィスは続ける。

 

「リング卿も奥方が二人いらっしゃるようだが、どちらかが殿下と関係を持ったとしても仕方ないとおっしゃるのですかな?」

 

遠慮ない言葉で締めくくった。

 

「アルヴィス卿!!貴様!!」

 

リングは激高した。

 

「貴方の矛盾した論理をそのまま返しただけだが・・・何を怒っているのか理解できませんな」

 

アルヴィスはリングの激高を受け止め薄く笑った。

 

一触即発の空気が場を覆ったが・・・・・・・

 

「いい年した大人が何をしているのですか?」

 

空気を読めない言葉が聞こえると二人の場に割って入った。ラケシスである。

 

「アルヴィス卿、休憩中は会議の話はしないルールでしたよね。違いますか」

 

ラケシスはアルヴィスの視線を射抜く。その後リングを見ると

 

「リング卿、エーディン様にどのような理由があれど暴力はいけませんよね。彼女に謝ってください。それをまず、すべきことではありませんか」

 

鋭い視線で射抜いた。そして周りを見て

 

「皆さんも何故止めないのですか?今は会議の場ではありません。お互いの主張は会議の場で行うべきではありませんか。私はここのしきたりに詳しくありません。間違っていれば謝罪します」

 

全くもって正論だった。その言葉に反応したのは

 

「そうだよ兄さん。落ち着こうよ。ラケシス様、ありがとうございます」

 

アゼルだった。彼はアルヴィスを諭すとリングの方を見て

 

「リング卿も少し休まれてはどうですか」

 

とアゼルの口調は穏やかだった・・・・が・・表情は全く違うものになっていた。アゼルの表情を見たリングは少し怯えが見えており答える。

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

リングはそう言うとエーディンの元へ行き

 

「さっきは悪かった。今はそれしか言うことはできん。すまん」

 

それだけ言うと会議の場をあとにした。

 

少し静寂の後

 

「ラケシス殿、少しは落ち着かれましたか?」

 

アルヴィスがラケシスに声をかけた。

 

「ええ。でもこの場所は落ち着きません」

 

ラケシスはそう言いながら肩をすくめた。

 

「クロード殿は?」

 

アルヴィスが訊ねる。

 

「お祈りをしてから戻られるそうなので、邪魔にならないよう先にこちらに来ました」

 

ラケシスが答える。

 

「それは残念だ。クロード殿がいれば良かったのに・・・・・」

 

アルヴィスが呟くと・・・

 

「何か言いました?」

 

ラケシスの冷たい声が響く。

 

「気のせいでは?」

 

アルヴィスが即座に切り返した。

 

「兄さん!!何やっているの!」

 

アゼルがたしなめた。

 

「ラケシス殿。ごめんね。兄さんの悪い癖がでちゃって」

 

アゼルがラケシスに頭を下げた。

 

一方その頃

 

「エーディン、落ち着いたかい?」

 

「はい、シグルド。ありがとう」

 

新たなバカップルの予兆がうごめいていた。

 

なお先ほどのリングの謝罪はエーディンの耳には届いていないようだった。

 

 

 

会議が再開された。一部席の変更がなされている。

 

ヴェルトマー家の後ろの席にはデューがおらず、代わりにティルテュ、エスニャ、レックスが移動している

 

ユングヴィ家の後ろにはデューが移動してブリギッドの横に座っている。

 

シアルフィ家の後ろの席にエーディンが移動した。

 

全員が着席し、アズムールが会議の再開を宣言する。

 

「皆の者、頭は冷えたか。それでは会議を再開・・・と言いたいところだが・・・・・リングよ」

 

アズムールの声が冷たく響いた。

 

「・・・はい。陛下・・・・」

 

リングは返事をする。

 

「クルトがなぜこの会議に出ておらぬのか分かっておるか?」

 

アズムールはリングに訊ねる。

 

「過労によって倒れられたと聞いておりますが・・」

 

リングは少し視線を向けて考えてから答える。

 

「表向きはそうじゃが、クルトの馬鹿者はそこのアルヴィスに暴力を振るおうとしたからじゃよ」

 

アズムールの声はさらに冷たく響いた。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

リングを含めたほとんどの者が驚愕の表情を浮かべた。

 

「兄さん、それは本当なの?」

 

アゼルが思わずアルヴィスに訊ねる。

 

「事実だよ。でもデューが側にいたからね。その後のことは聞くまでもないだろう」

 

アルヴィスは肩をすくめながら答えた。その言葉に全員が一瞬デューに視線を向けたあと納得の表情を浮かべた。

 

「アルヴィス卿、殿下と何があったのだ」

 

バイロンが立ち上がりアルヴィスに訊ねる。

アルヴィスは即座に答えようとしたが、

 

「バイロン卿、それはアルヴィス卿に訊ねることではありません。たとえどんな理由があろうとも暴力を振るおうとしたのは問題です」

 

クロードが穏やかな口調で話す。

 

「そうじゃな。リングよ。そのことを踏まえて問ううが、この後の会議に参加するのか?」

 

アズムールがリングに訊ねた。

 

「!!!!!!・・・・・・・・・・・・・」

 

リングは少し驚いた表情を見せた後、視線を下に向けた。

 

「陛下、気分がすぐれませんので、この後の会議は休ませて頂いてよろしいでしょうか?」

 

リングが訊ねた。

 

「うむ。自分の顔を鏡で見てみると良い。凄い顔になっておるぞ。1週間ほど自宅でゆっくり静養せよ」

 

アズムールは穏やかな表情で告げた。

 

リングは体調など悪くはない。しかしエーディンに対する暴力未遂に対する処罰を受けることになった。1週間の謹慎である。

 

「陛下、私の代理としてアンドレイに当主代行を務めてもらいます」

 

リングはアズムールに告げると後ろを向いて

 

「ブリギッド、デュー殿、アンドレイを頼む」

 

と二人に軽く頭を下げた。

 

会議が再開された。

 

「先ほどは失礼しました。私はヴェルトマー家当主の座をアゼルに譲り、クルト殿下が王位につかれましたら、グランベルを出ていきます」

 

アルヴィスが会議の口火を切る形で宣言した。

 

「理由は休憩の場で申した通りですが、改めて殿下は私の母シギュンと関係を持ち、それが原因で父ヴィクトルが自殺し、その後母シギュンが失踪しました」

 

アルヴィスは少し間をおいて続ける。

 

「陛下からは殿下の所業について謝罪され、若くして当主となった私を助けていただきました。陛下には感謝しかございません」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アルヴィス以外の面々は黙って聞いている。

 

「しかし、殿下は私に対して謝罪もなく、それどころか殿下と母シギュンの関係が美談になっている。全く反省していないと言ってもいいのではないでしょうか。残念ながらこのような人物を主君と仰ぐことは出来ません」

 

アルヴィスは最後まで言い切った。そしてバイロンを見る。

 

「バイロン卿。私は全て話しました。その上で貴方の見解を聞かせていただきたい」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

バイロンは・・・・・・・・・

 

「アルヴィス卿。貴方の気持ちは分かった。しかし、グランベルを出てどこへ行くつもりだ。さらに言うなら結婚しているエスニャ殿は納得しているのか?それとデュー殿はどうされるのだ?」

 

バイロンはそう言いながらアルヴィスの後ろにいるエスニャを見たあとデューにも視線を送る。

 

「エスニャとデューよ。発言を許す。デューはいつもの口調で話せ」

 

アズムールが発言の許可を出した。それを見たデューがエスニャに視線を送る。

 

「私はアルヴィス様について行きます。その覚悟もできております」

 

エスニャが答えると

 

「おいらはグランベルに残ってアゼルを助けるよ。エスニャがいればアルヴィスは安心だからね。アルヴィスは恩人だけど、アゼルも親友だからね」

 

デューは飄々と答えた。それを聞いたアゼルが嬉しそうな表情見せる。隣のティルテュも同様だ。

 

「バイロン卿、聞いての通りだ。後は私だが、すでにいくつかの国から打診は頂いている。その筆頭はシャガール殿下だ」

 

アルヴィスは少し意地の悪い表情を浮かべた

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

バイロンは驚愕した。

 

「まあ、そうですよね。シャガール殿下がアルヴィス卿をほうっておくわけないですものね。もし行かれるのでしたら私からも申し伝えますのでいつでもおっしゃってくださいね」

 

ラケシスが間に割って入った。

 

「ありがとう。ラケシス殿。とは言ってもすぐではない。グランベル以外の国も混乱の兆しが見えている。それを解決するまでは出ていくわけにはいかない。クルト殿下のご息女も保護しなければいけないしね」

 

アルヴィスがそう言った笑顔を見せた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

リングが穏便に済ませたい理由も分かります。

バイロンも言いたいことはあるが、リングの件があるので別の質問を投げかけました。

ヴィクトル卿の行為に対して思うところがあるというご意見もごもっともと思います。実際アゼルの存在がありますからね。

しかしクルトの行動はやっぱり問題だと思うのです。次期国王となる人です。

さらに付け加えるなら「世継ぎを残す」という大切な役割を放棄しているように思うのです。これは良くないですね。

皆様のご意見色々とあると思いますが、私は突き進みます。

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