平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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若い二人の反論。

アルヴィスは困ります。

若い面々の動きが活発になります。

一触即発があちこちと

なんでこうなったんだろう(笑)


61.会議3

(困ったことになってしまった。まさか、アンドレイ、シグルドが反対意見を言うとは・・)

 

アルヴィスは落ち着いた表情を見せつつも内心は困惑していた。

 

実はこの状況はアルヴィスだけではない。

 

レプトールとランゴバルドの内心は

(ほう!!まさかユングヴィ家とシアルフィ家の次期当主がアルヴィスの引き留めに入るとは。良き俊英を持ったものだ)

 

リングとバイロンの内心は

(二人の言っていることは正論だ。しかしこの状況は非常にまずいな。このままいけば後継者争いになりかねん)

 

とそれぞれの思惑は違えど困惑のさなかに陥っていた。

 

それを見たアズムールはほくそ笑む。

 

(まあ、こうなるか。アルヴィスよ。お前の功績はそのくらい大きいのだ。妙なところで自分を過小評価するからの、あやつは)

 

会議は沢山の思惑が絡み合い膠着状態になるがここでも発言できる者が存在する。

 

「アルヴィス卿、質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

ラケシスが膠着状態をあっさりと打ち破り訊ねる。

 

「ラケシス殿。どうぞ」

 

アルヴィスがラケシスを促す。

 

「失礼を承知で申し上げますが、アルヴィス様はグランベルを出ていきたいのではありませんか?」

 

ラケシスが特大の図星爆弾を放り込んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

その言葉を聞いたアルヴィスと隣のアゼル、そしてアズムールはポカーンとした表情を浮かべた。

 

レプトールとランゴバルドは下を向いている。

 

「ラケシス殿、発言を慎まれよ。何を言っておられるのか?」

 

リングが呆れた表情を浮かべる。しかしラケシスは

 

「状況を整理しますと、陛下はアルヴィス卿を引き留めているとおっしゃられました。そしてアンドレイ様、シグルド様のお話のある通り、ここまで功績を残しておられます。ここにおられるほとんどの方がアルヴィス卿を追放したいとは思っておられません」

 

ラケシスは真面目な表情を崩さず続ける。

 

「にも関わらずアルヴィス卿は頑なにされておられます。どう見てもアルヴィス卿自身が望まれているとしか思えないのです。マイラだのロプトだのは関係ないのではありませんか?」

 

ラケシスは締めくくった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

沈黙が続く中

 

「アルヴィス、ラケシスの問いに答えよ」

 

アズムールは促した。

 

アルヴィスは横のアゼルを見る。アゼルは笑いをこらえている。他も見るが秘密を知る全員が笑いをこらえていた。ラケシスの問いがアルヴィスに逃げられない状況を作ってしまった。そしてアルヴィスは

 

・・・・嘘をつくことができない・・・・・

 

アルヴィスが発言しようとした瞬間

 

「ラケシス殿!!!マイラだのロプトだのとは、どういうつもりだ!!我が愚息の親友の妹とは言え発言を考えろ!!無知にもほどがあるぞ!!」

 

バイロンが激高した。その言葉にラケシスは怯えの表情が走った。しかしこの言葉に反応したのは・・・何と

 

「バイロン卿、私の妻を侮辱するとはあなたこそどういうつもりですか。発言を撤回していただきたい。」

 

クロードが口調こそ穏やかであるが、発言そのものは冷たいものが流れていた。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

この言葉にバイロンが驚愕した。他の当主や会議の参加者全員が驚いている。

あのクロードがバイロンに対してやり返してきたのだ。

 

一触即発の空気が流れた。しかし

 

「バイロン卿・・・・・・・・」

 

静かな口調で声が発せられた。アルヴィスだ。

その声に全員に静寂が走った。

 

「クロード殿の言う通り、失礼なのはあなただ。人が発言しようとしているところに横やりを入れるとは何様のつもりだ」

 

アルヴィスがバイロンを糾弾する。

 

「なぜあの者を庇う!!グランベルに対して、ここまで貢献した貴方に国を出たいのかと問うているのだぞ。そんなことはあり得ない話だ!!」

 

バイロンも負けじと返した。

 

「ならば答えてやる。そのような浅慮な見識であれば、シグルド殿に当主の座を譲られることをお勧めする。ラケシス殿の言う通り、私は国を出たいのだ」

 

アルヴィスが更なる爆弾を投下した。

 

「アルヴィス卿・・・今何と?」

 

バイロンではなくリングが声を上げる。

 

「私はクルト王子が王位につかれたら国を出ていきます。残念ですが、クルト王子に捧げる忠誠心は一滴も持ち合わせておりませんな」

 

アルヴィスがはっきりと宣言した。

 

「マイラだのロプトだのは私を追放する理由づけに過ぎない。ラケシス殿の言う通りだ。まさかこの場でそのことに気付く者がいるとは思いませんでした」

 

アルヴィスがそう言うとラケシスに笑顔を向けた。

 

そして

 

「一旦会議を休止する。頭に血が上っている者がいるようだ。少し頭を冷やせ。」

 

アズムールが宣言すると各人がそれぞれの居場所に駆け寄ってきた。

 

「皆さま、先ほどは失礼しました。妻を少し休ませたいので、会議の場を離れます、私も熱くなってしまったので陛下のおっしゃる通り頭を冷やしてきます」

 

クロードが声を上げるとラケシスを伴い会議の場から出て行った。

 

会議の場においてはルールがある。

休止中は休憩する。

その間当主及び次期当主は、他の公爵家同士で会話はしない。無論雑談程度なら構わないが、念のため、根回しをさせないための措置になっている。ただ家の内での話し合いは許可されていた。

 

ユングヴィ家とシアルフィ家の面々はアルヴィスの発言の真意を訊ねたいが、会話が禁止されているため動けない。

 

エーディン、アンドレイはブリギッドの所に行こうとしたが、デューがガードしている。

 

「ダメだよ。教えないよ。」

 

と二人ともアルヴィスの所に行ってしまった。

レックスも同様だ。

当然この三人は事情もルールも知っているので余計なことは言わないし言うつもりもない。

 

アルヴィスはデューを見つけると

 

「デュー、クロード夫妻の様子を見ておいてほしい」

 

「了解したよ。行ってくるね」

 

デューは気配を絶った。

 

「みんなも私を気にせず休憩してほしい。私も少し落ち着きたいので一人にしてもらえると助かる」

 

自身を心配して集まってくれた面々に声をかけた。

声を聞いた面々はそれぞれに分かれた。

 

レックスとアゼル、そしてブリギッドとティルテュとエスニャだ。

 

一方レプトールとランゴバルドも小休止で部屋を後にしている。

 

そしてシアルフィ家とユングヴィ家はアルヴィスの爆弾発言に混乱が収まる気配がなかった。

 

「父上・・・・・・・・・」

 

シグルドがバイロンに声をかける。

 

「アルヴィス卿は何を考えているのだ?殿下に仕えたくないだと。ふざけるのもたいがいにしろ!」

 

バイロンの荒い口調は収まらない。

 

「父上は殿下とアルヴィス卿に何があったかご存知なのですか?」

 

シグルドが訊ねる。

 

「さっき聞いた通りだ。殿下はアルヴィス卿の母シギュン殿と関係を持ったのだ。それが原因で、アルヴィス卿の父ヴィクトル殿が亡くなり、ほどなく母シギュン殿が失踪した。恐らくそのことを恨んでいるのだろう」

 

バイロンは答えた。と同時に

 

「父上、それは本当ですか!!!!!!!」

 

隣でアンドレイが声を上げた。

 

「アンドレイ、声が大きいぞ。他の者が迷惑する」

 

リングがアンドレイをたしなめる。

 

「申し訳ありません、父上。それではアルヴィス卿の両親がいなくなった原因は、殿下にあったということですか」

 

アンドレイは幾分落ち着きを取り戻し、リングに確認する。向こうも同じ話をしていたようだ。

 

「待てアンドレイ。全てが殿下のせいではない」

 

リングがクルトを庇おうとするが、その言葉に反応した者がいた。

 

「父上、殿下の所業を認めるということは、仮に私が殿下とやむをえず関係を持って、それでシグルドが自殺しても同じことが言えますか?」

 

普段穏やかなエーディンがいつになくキツイ口調でリングを責める。

 

「エーディン!!口を慎め!!不敬に当たるぞ」

 

リングが思わず声を上げる。

 

「殿下は貴族生活に慣れないシギュン様に付け込んで関係を持った。殿下とシギュン様の関係は対等ではありません。当然、彼女も強く拒むことは出来なかった。その結果がヴィクトル卿の自殺に繋がり、彼女も失踪。アルヴィス卿は僅か七歳で両親を失い、当主になられたのですよね。」

 

エーディンは引かない。そして続ける。

 

「私はシスターとして、貴族とそうでない方の関係で苦しんでいた人を何人も見てきました。まさか、グランベルの次期国王となられるお方がそのような軽挙妄動に走られるとは思いもよりませんでした。そしてそのような人を庇う父上にも失望しています」

 

エーディンは最後に締めくくった。

 

「それ以上発言するな。エーディン!!!」

 

リングは激高して持っていた杖を振り上げる。

その形相にエーディンに怯えの表情が走った。

普段温厚なリングが激高するとは思っていなかった面々は動けない。

 

・・・・・・・一人を除いては・・・・・・

 

「暴力はだめだよ。リングのおっちゃん。いや父上」

 

声が聞こえたと同時にリングの動きが止まった。

デューである。リングの喉元には剣がある。

 

「大声が聞こえてきたから飛んで帰ってきたよ。ねえ、父上、大切な娘でしょ。それにおいらの妹になるんだからね。ふざけたことしたら承知しないよ。それにそんな杖で殴ったら死んでしまうかもしれない。それを分かってやっているの?」

 

デューの声は淡々と感情がない。それが恐怖をあおる。少しすると、リングは崩れ落ちた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

思っていた展開と大きく変わりました(笑)

エーディンが無双する・・・潔癖な彼女なら怒るだろうなと思いました

クロードがキャラ変する・・・まあいい嫁さんもらいましたからね

デューが現れた・・・デューだからいいんです(笑)

さて次回も大きな動きがあります。特にバイロンはエーディンの言葉をどう受け止めますか?リングは聞かないふりをして逆ギレしました。

最期にデューはエーディンの義理のお兄さんになるんですよね。セリフはそのときに気付いて作りました

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