平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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会議が始まりました。

勢いで進めているためキャラが動きます。

空気もいますが無視(笑)してください。

発言を認められている者がとりあえず話します。

大人数の会議は難しい。


60.会議2

「会議前に申し上げます。この度の案件は非常に大きなお話になります。大げさではなく、国を揺るがすほどのものです。つきましては、この会議に参加している者以外が、知ることがないように願います」

 

アルヴィスが開口一番に言い放った。

その表情に会議に参加している全員に緊張が走った。

 

「それでは会議を始めさせていただきます」

 

皆の表情が引き締まったのを見たアルヴィスは話を始めた。

 

「まず結論から申し上げますとクルト殿下にご息女がおられることが判明致しました」

 

事情を知っている者以外には衝撃が走った。

 

「なんだと!!!それは誠かアルヴィス卿!!」

 

まず反応したのはバイロンだ。

 

「はい。バイロン卿。間違いございません。ただ現在は行方不明のため、全力で捜索にあたっております」

 

アルヴィスは冷静に返答する。

 

「それが誠であれば大きなことだ。しかしアルヴィス卿、どうやってそのことを知ったのだ。間違いないとのことだが、その根拠をお示し願いたい」

 

リング卿がアルヴィスに訊ねる。

 

「そのお話をする前にもう一つご報告申し上げます。行方不明になっていた我が母シギュンが亡くなっていたことが判明致しました。亡くなる直前に娘を出産したとのことです」

 

アルヴィスは淡々と述べた。

 

アルヴィスの言葉はいつも通りだったが、その内容に更なる衝撃が走る。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

ほとんどの者が言葉を失う。アルヴィスの母シギュンが亡くなったことではない。娘を出産したことだ。このタイミングでの話からその娘の父親が誰なのか聞く者はいないだろう。しかし・・・・

 

「アルヴィス卿。お母様のこと心からお悔やみ申し上げます。さぞお辛かったのではありませんか?」

 

ラケシスは立ち上がり、涙を流しながら言葉を絞り出した。

 

アルヴィスはラケシスからの哀悼の意を受けて

 

「いいえ。ラケシス殿、もう覚悟はしておりました。ありがとうございます」

 

アルヴィスは深々とラケシスに頭を下げた。

 

席に座ると涙を流すラケシスをそっと隣のクロードが抱き寄せた。そして・・・

 

「ラケシス貴方は本当に素晴らしい人だ。心の底から私の妻になってくれてありがとうございます」

 

クロードはラケシスに言葉を紡ぐ。ラケシスはすぐに涙を拭った。それを見たクロードは。

 

「本来であれば、彼女以外の誰かが真っ先に言わないといけないことを言ってくださいました。私も含めて情けないと思う次第です」

 

クロードは申し訳ないと表情をアルヴィスに向けた。

 

「いいえ。私としてはラケシス殿をクロード殿に引き合わせて良かったと思っています。随分と夫婦らしくなられて嬉しい限りです」

 

アルヴィスはそう言って笑顔を向けた。

ラケシスはアルヴィスとクロードを見て少し顔が赤くなっている。

 

「全くじゃな。誰もがアルヴィスの母のことよりクルトの娘の存在に状況を奪われおってからに情けないわ」

 

アズムールが声を上げて周りを見渡す。

 

特にバイロン、リング、レプトール、ランゴバルトは気まずい表情を見せた。

 

すでに爆弾が放り込まれているのにも関わらずだ。

 

アルヴィスの母シギュンがクルトの娘を身ごもり、出産した事実が明るみに出たのだ。

 

「陛下、皆さまが殿下のご息女のことを気にかけてしまうのでは仕方のないことです。それだけこの国を憂いてのこと、これから大事なお話が続きますゆえ進めさせて頂いてよろしいでしょうか?」

 

アルヴィスがアズムールをなだめに入る。

 

「うむ。ここはアルヴィスとラケシスに免じて先に進めるとしよう。だが・・・・・・・・・」

 

アズムールの視線が射抜く。

 

「人はこういった時に本性が出るものだ。そこのラケシスが流した涙の意味を忘れるでないぞ」

 

その言葉にほとんどの者が下を向く。が

ラケシスは居心地が悪かった。一気に注目を集める存在になってしまったからだ。

 

ラケシスからすれば大恩あるアルヴィスの行方不明の母親が亡くなっていたのだ。7歳から当主として両親がいない状況もクロードから聞いて知っている。しかしクルトとシギュンの事情を知らない彼女からすれば、アルヴィスの「母が亡くなった」との言葉を聞いて思わず悲しみ、言葉を口にしたのは当然と言える。

 

(私は殿下のことを知らないし、アルヴィス様の母上と関係を持っていたってことは陛下の言葉で理解できたわ)

 

ラケシスは少しずつ状況がつかめてきた。彼女にとって不倫や浮気はアグストリアにいた時、嫌でも耳に入ってくる話だ。嫌悪感はあるが、冷静に対応はできている。

 

(アルヴィス様にとって妹のなるのよね。私とエルトシャンお義兄様と同じってことね。父親と母親は逆だけど)

 

ラケシスは心の中で整理していった。

 

「それでは話を続けさせていただきますが、よろしいでしょうか?」

 

アルヴィスが全員に訊ねる。全員が頷いた。

 

「ここで母シギュンが亡くなったこと、娘を残したことをなぜ知ったかのお話ですが、それには母シギュンの素性が関わっております」

 

アルヴィスが表情を引き締める。

 

「シギュン殿の素性とな」

 

レプトール卿が反応した。

 

「はい。彼女は・・・・・・・・・・・」

 

アルヴィス一呼吸置くと続けた

 

「ロプト一族、マイラの血を引いております」

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

その言葉にほぼ全員が驚愕の表情を浮かべた。

 

「なんと!!!!!!!!!!!!」

 

真っ先に反応したのはバイロンだ。

 

「まさかあの忌まわしき血の者が・・・」

 

リングも言葉を紡ぐ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

レプトール、ランゴバルトは無言。

 

「そうだったのですね・・・・・」

 

クロードは目を閉じて両手を組み、祈りながら呟いた。

 

そのまま全員が言葉を発せず黙り込んだ。

ほとんどの者がその重さに次の言葉を発することが出来ずにいた。しかし1人例外がいる。

 

「アルヴィス卿、ロプト一族、マイラの血とはなんなのですか?」

 

ラケシスである。彼女はグランベルの者ではない。なので一族や血の話をされても理解が追い付いていない。彼女からすればそこから話をしてもらわないと状況が把握出来ないのだ。

 

「ラケシス様、ありがとうございます。詳細は省きますが、ロプト一族、マイラの血を引いている者は迫害の対象となります。過去の歴史を紐解いて頂ければわかると思います。それだけこの問題は重いものであることをご理解ください」

 

アルヴィスはラケシスに皆の沈黙の理由を話す。

 

「はい。ありがとうございます。となりますとアルヴィス卿もその血を引いておられることになるのですね」

 

ラケシスは良くも悪くもストレートな物言いをする。周りの反応も過敏になっている。

 

「はい。その通りです。このことが明るみにでれば当家にとって大きな枷になると思いました。そこで当主の座をアゼルに譲り、ティルテュ殿との縁談を進めました」

 

アルヴィスは丁寧に説明する。

 

「つまりそれがヴェルトマー家の秘密だったのですね」

 

ラケシスは確認する。

 

「それだけではありませんが、ほぼそれであっています」

 

アルヴィスは答えた

 

重苦しい空気になるはずの会議がスムーズに進む。ラケシスの存在が大きいものになっていた。

 

ラケシスは納得したようにうなずくと、隣のクロードに少し申し訳なさげに頭を下げた。当主を差し置いて発言を続けていたからだ。

 

クロードは微笑むとラケシスの肩を軽く引き寄せた。

 

「陛下はこのことをご存知であられたのですね」

 

リングがアズムールに訊ねる。

 

「無論だ。ワシはアルヴィスの言を受け入れて今回の家督相続を認めることにした」

 

アズムールが答える。

 

「陛下。それでアルヴィス卿をどうなされるのですか?」

 

リングの隣にいるアンドレイが訊ねる。同時に

 

「私も同意見です。まさか追放されるのですか?」

 

バイロンの隣にいるシグルドも同様だ。

 

「お前ら口を「構わん!お前たちはどうしたい!」

 

リングとバイロンが息子を叱責しようとした言葉に重ねてアズムールが二人に質問を返す。

 

発言を認められた二人は少し考えると・・先にアンドレイが言葉を紡ぐ。

 

「アルヴィス卿は行方不明の我が姉ブリギットを保護し、エッダ家のロダンの謀略を防いだ大きな功績があります。ここで彼を追放するなどあってはなりません」

 

アンドレイが熱弁をふるいアルヴィスを守ろうする。

 

「陛下。アルヴィス卿は私とエーディンとの仲を取り持って頂き、我が親友の妹ラケシス殿もグランベルに嫁がれることにご尽力くださいました。これにより、アグストリアとの良好な関係が築かれたのです。これほどの国に尽くしてくれた忠臣を追放することになれば、自国だけなく他国の信用も無くしてしまうことになります」

 

シグルドもアルヴィスを守るために必死に声を上げた。

 

二人の言葉を聞いたアズムールが目を閉じて数回うなずくと

 

「二人の言はわかった。ワシも引き留めておるがアルヴィスが頑固でな。さて・・・・・・」

 

アズムールがアルヴィスの方に視線を向けると

 

「アルヴィスよ。必死で引き留めている者がおるぞ。どうするのじゃ」

 

アズムールが意地の悪い表情を見せた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

ラケシス、アンドレイ、シグルドに発言権を与えました。

特にラケシスの存在は大きいです。ここまで発言するかな?と思いながらも「まあいいか」と爆走させました。(笑)

お悔やみの言葉はラケシスだからこそ出てくるかなと想い、ここは外したくありませんでした。結果的にはラケシスの存在価値が大きくなり、想定外でした。

事情を知っている人はともかく、国の行く末に思考が先行してしまっている人は注目はクルトの娘の存在になります。

その後も実質ラケシスが主導権を握る形となり、アンドレイ、シグルドの爆走に繋がりました。二人ならこう言うかな?と思いながら「まあいいか」とそのまま熱く語らせました(笑)

いつもより勢いで書いているのでどうでしょうか?

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