原作改変のスタートです。
視点変更(アルヴィス)
(よく考えれば俺のこの状況はヴェルトマー家当主の座をアゼルに継がせることができる格好の材料だ!!)
アルヴィスはマンフロイに2度目の頭を下げながら思う。
(これでクルト王子に仕えなくてよくなった。マンフロイには感謝しかないな)
目の前のマンフロイは固まっている。
「おっといきなり申し訳ないな。これでクルト王子を主君と仰がなくて済む理由ができたのが、なにより嬉しいのだ。」
アルヴィスはそう言ってマンフロイから手を離した。
「・・・・どういうことですか?」
マンフロイが尋ねる。
「言葉通りだ。私はヴェルトマー家当主の座を弟のアゼルに譲る。そしてクルト王子が次期国王となったらグランベルを離れるつもりだ。」
アルヴィスは清々しい表情で答える。
「なんと!!なぜなのです!!」
マンフロイは悲鳴のような声を上げる。
「私はクルト王子によって父と母を失った。そんな奴に仕えたいと思うか?」
アルヴィスは怒りを露わにして続ける。
「7歳の時だ!!父の亡くなった姿を見つけ、遺書にクルト王子が何をしたのか全て書かれていた。私はその遺書について知らないふりをしてクルト王子に尋ねたら見事な噓八百を並べてくれたよ」
「・・・・・・・・・・アルヴィス卿」
「ぶん殴ってやりたかったよ。しかしその時は母上もいた。陛下に助けてもいただいた。今、私が当主としての役目を全うしてこられたのは陛下のおかげだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
マンフロイは何も言わず聴き続ける。
「マンフロイ、あなたに家族がいるかどうかは知らないが、仮にこのようなことをする人間を主君として仰ぎたいと思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「しかしあなたのおかげで私は当主の座を譲らざるを得なくなったということだ。」
アルヴィスはまた不気味な笑みを浮かべた。
「マンフロイよ。残念だが私はグランベルの王位に興味は無い。あなたの思惑を外したようで申し訳ないがね。クルト王子は憎いがあれでも陛下の大事なご子息なのでな。悲しませることはできない。」
「・・・・・!!!!!!」
マンフロイは驚愕の表情を浮かべる。
「どの神を信仰するかは自由だし、それを咎める理由はない。だが、子供を生贄に捧げるような教団に協力できない。当たり前だろう。そんなことをする奴は人ではない。悪魔だ。私は外道に落ちる趣味はないぞ。」
アルヴィスは続ける。
「付け加えるなら兄妹で結婚などあってはならない。マンフロイ、お前に聴きたい。暗黒神ロプトウスを復活させて何がしたいのだ」
アルヴィスは強い視線でマンフロイを見た。
「あなたは一体・・・・・・・・・・・・」
マンフロイは立ち上がり、臨戦態勢を取る。
「待て、マンフロイ。私はあなたに感謝している。だから知りたいのだ。暗黒神復活がロプト教団に取って最善の方法なのか?」
「貴様などに我々の苦しみが分かるものか!!!」
マンフロイは怒りを露わにして、魔導書を持ち、戦闘態勢に入る。
「少し頭を冷やしてもらおう。デュー!頼む」
アルヴィスは合図を送る。
「あいよ。それっと」
声が聞こえるとマンフロイの足元の絨毯が横に勢いよく動き、バランスを崩した。
「な!!」
マンフロイは不意を突かれて転倒し、魔導書が手元から離れた。
「小癪な!!!」
マンフロイは叫んで立ち上がろうとするが、そこに小さな影が馬乗りになる。
「おっちゃん。ごめんね。」
デューと呼ばれた少年はそう言って持っていた剣をマンフロイの右肩に突き立てた。
「ぐわ!!!」
マンフロイは悲鳴を上げる。
「よし!!発動した。」
デューの言葉とともにマンフロイは動かなくなった。
「デュー、よくやってくれた。」
アルヴィスが小さな少年に声をかける
「おっちゃん、死んでないよね。」
デューはマンフロイの体を触りながら答える。
「ああ。スリープの剣だからな。うまく発動してくれた。」
「じっとしているのも疲れたよ。アルヴィス。」
デューは立ち上がってアルヴィスの方を向いた。
「それにしてもこんな単純な罠に引っかかるなんて、意外と間抜けだよね。」
「まさかこんな仕掛けになっているとは思ってもみなかっただろうな。デューもうまく気配を消してくれていたから完全に不意を突くことができた。ありがとう。」
アルヴィスはそう言ってデューの頭を撫でた。
デューは少しうつむき嬉しそうな表情を見せた。
視点変更(デュー)
(やっぱり、アルヴィスは変わっているな)
デューはアルヴィスに頭を撫でられながら思う。
(おいらのことを信頼してくれたのは嬉しいけど、何かヤバいことを聞いちゃった。暗黒神だの色々あったけど、クルト王子だっけ?その人への憎しみは間違いなく本物だ)
「アルヴィス。おいらの口は封じなくてもいいの?」
「なぜそのように言うのだ?そんなつもりは全くないぞ」
「だって、さっきの話は聞いたらいけないことだったじゃないのか?」
(おいらは当然言うつもりはないけど、アルヴィスには大きな恩があるからな。最悪そうなってもしょうがないと思ったけど・・・)
デューはアルヴィスの目を見つめる。
「はっはっは。馬鹿を言うな。そんなことをしてみろ。一生アゼルに恨まれる。逆に今回の件でお前を危険な任務に駆り出してしまった。引き受けてくれたことを本当に感謝しているぞ。アゼルには言わないでくれると助かるな」
アルヴィスはそう言って笑いながら肩をすくめる。
「言わないよ。知ったらアゼルが卒倒するから」
デューも肩をすくめながら笑った。
(しかし、おいらもまさかこんなことになるとは思わなかった。1盗賊が公爵家当主に仕えてその弟と友達になるなんてどんな冗談だよ。でもいい人に巡り合えたな)
「で、このおっちゃんどうするの?」
「それについては心配するな。殺すつもりはないよ。さっき言った通り頭を冷やしてもらおう。デューすまないがカルラとパリーシャを呼んできてくれるか」
「・・・・・・・・・・もう来ているよ」
デューが答える。
「デュー。ケガはない?」
「デュー。アルヴィス様にケガはさせてないだろうな?」
黒髪で長身の女性がデューに背後からガバッと抱き着き、その後ろにやや薄い茶色の髪でがっちりとした女性が立っている。
「カルラ、大丈夫だから離れてよ」
デューはそう言ってカルラと呼んだ女性を押しのけた。
「アルヴィス様。この男を本当に始末しないのですか?」
デューにアルヴィスの状態を尋ねた女性がアルヴィスの前に片膝をついて確認する。
(パリーシャは相当マンフロイに対して怒ってる。まあ当然だろうな)
「パリーシャ。君の言うことはもっともだと思うが、ここは私の指示に従ってもらえないだろうか」
アルヴィスはパリーシャに優しい口調で話す。
「・・・・・・・アルヴィス様がそうおっしゃるのでしたら私に反対する理由はありません。出過ぎた真似を致しました。申し訳ございません。」
パリーシャは立ち上がり改めてアルヴィスに深く頭を下げた。
「パリーシャ、カルラ。マンフロイを拘束し、準備していた部屋へ丁重にご案内するように」
「承知いたしました」
「はい」
「この件について後日きちんと話すつもりだ。くれぐれも内密に頼む」
2人は臣下の礼を取り、早速倒れているマンフロイところへ行った。
「デューも疲れただろう。部屋に帰って休むように。今日は本当にありがとう」
アルヴィスはそう言って笑顔を見せた。
「うん。わかった。アルヴィス、おやすみなさい」
デューも笑顔で部屋を後にした。
(それにしても色んなことがありすぎたよ。アルヴィスからのお願いで部屋に潜んでいたら、大物がやってきて、ロプト一族だのマイラの血だの、あげくには暗黒神ロプトウスだっけ、わけわかんない)
デューは自分の部屋に向かう道中で思案する。
(確かにおいらに頼んだ理由もわかるな。絶対に裏切らない人間にしか頼めないし。そう言った意味で信頼してくれているのは正直嬉しかったな。マンフロイはかなり怖かったけど)
デューの表情に笑みがこぼれる。
(おいらは、アルヴィスとアゼルに尽くしていくことを決めた。今後どの道を進もうとついて行くからね)
デューは心の中で改めて誓い言葉を述べた。
カルラとパリーシャはオリジナルキャラクターです。
ちなみにデューはゲームで全てのカップリングを唯一行いました。ベストカップルはアイラですね。
ティルテュとのカップリングにおいて子供のアーサーはマージナイトクラスチェンジ後に勇者の剣を持たせていました。(笑)
「ちから」が「魔力」を凌駕し、まさに魔法剣士です。(活躍できたかはさておいて(笑))
体力の低さはネックですが、それ以上に成長率の高さと値切りのスキルは貴重です。