平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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タイトル通りです。

キャラクター勢ぞろいです。

登場人物が多いですが、中心のみで進めていきます。


59.会議1

アルヴィスがクルトを糾弾してから2週間が経過した。クルトの謹慎はまだ解けていない。

 

理由はどうあれ、暴力で相手を威圧する行為はあってはならない。ましてや、国の中枢を担う人物であればなおさらである。

 

アズムールは今回の件を重く見ており、クルトの謹慎の期限を設けなかった。

 

しかし2週間も王太子が不在となれば不穏な空気も流れてくる。そこでアズムールは6公爵家の主要人物を集め会議を招集することにした。

 

議題はもちろん・・・・

 

「陛下、本当によろしいのですか。私としましてもこれ以上殿下を追いつめるつもりはございません」

 

会議の場に先行して到着していたアルヴィスがアズムールに訊ねる。

 

「ワシの気持ちは変わらん。全てを話す。お主のこと、クルトの娘のこと、暗躍している者のこともな」

 

アズムールはキッパリと答えた。そして続ける。

 

「クルトがお主にきちんと謝っておればここまでは考えなかった。しかし最悪の対応をしおった。話にならん。ここで変われないようであれば、廃嫡も視野に入れんといかんな」

 

「陛下!!失礼ながら、その決断は早急かと存じます。重要なことゆえ慎重にお考えください」

 

アルヴィスが慌ててアズムールに話す。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アルヴィスの言葉聞いたアズムールは黙り込む。

 

「・・・・・・・陛下?」

 

急に黙り込んだアズムールにアルヴィスは声をかける。

 

「アルヴィスよ。どうしてお前はあ奴を許せるのじゃ。奴を廃嫡すれば、お前がグランベルを出る必要はない。妻に苦労をかけることないじゃろう」

 

アズムールは真剣な表情で訊ねた。

 

「許してはいませんよ。今もこれからもです。ただ、私は沢山の人に助けていただきました。陛下は当然ですが、レプトール卿を始め他の5公爵家の方にとても感謝しています」

 

アルヴィスは真剣な表情で続ける。

 

「それ以外にも妻のエスニャ、デューやティルテュ殿、レックスに、弟のアゼルもです。私は両親を失いましたが、そのおかげでこんなに大切な人が身近にいることがどれだけ素晴らしいことかを知りました」

 

アルヴィスの表情は晴れやかだ。

 

「正直殿下をあそこまで追いつめるつもりはありませんでしたが、抑えきれませんでした。憎しみに囚われていたのです。失った者はもう戻ってきません。そのことに囚われず、これからの未来をよりよい方向に自分のやるべきことを向けていきたいと考えております」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アズムールは一切口を挟まずじっと聞いている。

 

「陛下はグランベル王国をよりよい方向に持っていくために、最善な選択をしていただきたく思っております。殿下は欠点だらけの方ではありません。良き面も見た上でご決断ください」

 

アルヴィスは締めくくった。

 

(殿下をあそこまで追いつめたのはやりすぎだった。私もまだまだ未熟者だ。陛下がここまで思い詰めておられたとは)

 

アルヴィスは心の中で呟く。

 

アズムールの言う通りクルトが廃嫡となれば、娘のディアドラに王位継承権が移る。となればアルヴィスが出奔する理由がない。しかしことはそう簡単ではない。

 

(廃嫡となれば殿下は納得しないだろうし、公爵家ではバイロン卿、リング卿は反対されるだろう。賛成になるのはレプトール卿とランゴバルト卿。クロード殿は中立の立場をとるだろう。残る私は反対派の筆頭に担ぎあげられるだろうな)

 

アルヴィスにとってそれは1番望まないことだ。

 

瓦解が起こり、最悪内乱に発展する可能性がある。それだけではない。現在暗躍しているロプト教団に隙を見せることになる。さらに言えばほぼすべての国と隣接しているグランベルは常に他国からの侵攻に備える必要がある。こういった内乱の場合に起こるのは他国の干渉だ。結局そのしわ寄せは領民に降りかかることになるのだ。

 

「ふうむ。わかった。アルヴィスよ。お主がそう言うのであれば慎重に考えよう」

 

アズムールは少しの沈黙の後言葉を絞り出した。

 

 

 

時は数刻進んだあと、会議の場には主要な面々が顔をそろえた。

 

 

 

会議の場には縦に大きな長方形の机があり一番奥の席にアズムールが座る。

 

アズムールから向かって左から手前に

フリージ家、ドズル家、ヴェルトマー家

そして右は

シアルフィ家、ユングヴィ家、エッダ家の席となる。

 

フリージ家は当主のレプトール

ドズル家は当主のランゴバルト

ヴェルトマー家は当主のアルヴィスと弟のアゼル

シアルフィ家は当主のバイロンと子息のシグルド

ユングヴィ家は当主のリングと子息のアンドレイ

エッダ家は当主のクロードと妻のラケシス

 

がそれぞれ与えられた席に座る。

 

それ以外に出席を認められた者は各当主の後ろの離れた場所で席についている。

フリージ家は長女ティルテュと次女エスニャ

ドズル家は次男レックス

ヴェルトマー家は護衛のデュー

ユングヴィ家は長女ブリギッドと次女エーディン

 

以上になる。

 

会議において基本発言権があるのは当主と同じ席に座っている者のみだ。本来同席が認められるのは、次期当主だが、クロードがラケシスの同席を強く求めたため実現している。彼女はノディオン王家から嫁いできており、ここは立場を尊重した形だ。

 

これによりクロードの妻のラケシスに発言権はあるが、アルヴィスの妻のエスニャに発言権は無いことになる。

 

但し例外としてアズムールが許可を出したものは発言を認めている。

 

なおレプトールの子息ブルームとランゴバルトの子息ダナンは定例の軍事任務のため今回の出席は見送られた。クルト王子は謹慎が解かれていないためこちらも欠席となっている。

 

全員が揃ったのを確認しアズムールが

 

「ただいまより会議を始める。ここからの進行についてはアルヴィスに任せる」

 

開催を宣言した・・・・・・・が

 

「陛下。その前に発言をお許し願えますか?」

 

バイロンがアズムールに許可を請う。

 

「許可しよう。発言せよ」

 

アズムールが許可を出す。

 

「はい。今回の会議の場にふさわしくない者がいると思いますが、どういった意図で同席させているかお教え願えますか?」

 

バイロンの視線はヴェルトマー家を向いている。

その先はアゼル、そしてデューである。

本来この二人に参加資格はない。アゼルはアルヴィスの弟であり、デュー至っては公爵家の者ですらないのだ。バイロンの質問は当然と言えた。

 

「そうであったな。先にそちらの話をしなければならんな。アルヴィスよ。ワシから話すが構わんか?」

 

アズムールがアルヴィスに訊ねる。

 

「陛下のお心のままに・・・」

 

アルヴィスは会釈で返した。それを見たアズムールは立ち上がると宣言した。

 

「アルヴィスは当主の座を近いうちアゼルに継がせることが決定しておる。そこのデューはリングの娘のブリギッドとの結婚が決まった」

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

バイロンは驚愕の表情を浮かべた。

 

(なんだと!!!!!アルヴィス卿が当主を降りるだと!!!それだけではない!!あの少年がユングヴィ家のご息女と結婚とは!!!!!!)

 

バイロンは別の当主の反応を見るが、変化はなかった。

 

(他の当主に変化は・・・リング卿とクロード殿は多少驚いておられるが、レプトールとランゴバルト知っておったか)

 

「アゼルは次期当主、デューはブリギッドの婿にあたるため今回の出席を認めておる。異論はないであろう?」

 

アズムールはバイロンに訊ねた。

 

「異論はございません。アゼル殿、デュー殿。失礼した。無礼は謝罪する」

 

バイロンは立ち上がり、ヴェルトマー家へ体を向けると頭を下げた。

 

それを見たアゼルは立ち上がり

 

「バイロン卿、頭を上げてください。事前にお伝えしていなかったのはこちらの落ち度でした。私の方こそ申し訳ありませんでした」

 

バイロンに頭を下げた。後方のデューも頭を下げている。

 

「もうよいぞ。これで誤解はなくなった。会議を始めよう。アルヴィス頼む」

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

バイロンの質問は状況としてごもっともなものです。

ですので参加資格がある面を強調させました。

デューについては苦しいですが、いいのです。私が好きなキャラなので認めます(笑)

バイロンであれば悪ければきちんと謝るキャラクターかなと思いました。

よくも悪くも武人ですので、理由などそれ以上のことも訊ねさせませんでした。これ以降わかる話なので。


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