カップリング同士のやり取りです。
前回まで殺伐としていましたので間にぶっこみました。
アズムールとの会談の後、アルヴィスとデューは別室で休息を取っている。
ソファーに向かい合わせで腰を掛けている。アルヴィスはど真ん中に深く、デューはアルヴィスから見て左端に浅くだ。デューは遠慮したがアルヴィスが座るように命じている。
「ついにこうなってしまったか・・・・。私もまだまだだな。デューのことは言えんよ」
アルヴィスが頭に手を充てて上を見ながら呟く。
こうなったとは当然クルトを糾弾し、追いつめた件だ。当初はここまで追いつめる気はなかった。しかし・・・・
「クルトのおっさん結局謝らなかったね。どうしてなんだろ。さらにぶちキレちゃってさ」
デューもアルヴィスに答える形で返す。きっちりクルトをおっさん呼ばわりだ。
「クルト殿下は非常に優秀なお方だ。しかし人の心や感情については全く理解しておられない。優秀過ぎるゆえにプライドがあるから、自分の過ちを素直に認められないのだろう」
アルヴィスはデューに投げ返した。
「それって人として最低じゃないの。でもそれが分からないからアルヴィスが今まで味方でいると思っていたんだよね」
デューは少し下を向いて答える。
「ああそう考えると哀れでしかないな。しかし対立をはっきりさせた以上これからのことを考えなければならないな」
アルヴィスはそう言いながら、立ち上がる。
それを見てデューも立ち上がる。そしてドアの方を向いて
「エスニャ、ブリギッド。入ってきていいよ。こちらの話は終わったから」
声をかけると「ガタン」と音がしたあと・・ゆっくりドアが開く。
恐る恐るといった感じでエスニャとブリギッドが入ってきた。
「デュー様。気づいておられたのですか?」
エスニャは部屋に入るなり訊ねる。ブリギッドは後ろでばつの悪い表情を見せている。
「うん。当然。たとえ1番安全な場所であっても警戒は怠らないよ。もしアルヴィスに何かあったらエスニャの前で腹を切らなきゃなんないし」
デューはそう言いながら肩をすくめる。
それを聞いたエスニャは唖然とした表情を見せるがデューの仕草にクスっと笑った
「相変わらずとんでもない男だね。アンタは」
エスニャの後ろにいるブリギッドも感想を述べた。
「どうして2人がここに?」
アルヴィスが訊ねる。
「バーハラ家から早馬が来てね。二人を迎えに行くように言われてね。私はたまたまエスニャと一緒だったから同行させてもらったんだよ」
ブリギッドがアルヴィスの問いに答えた。
「アルヴィス様。お顔の色が優れませんが何かあったのですか?」
エスニャはそう言いながら、アルヴィスのところに駆け寄る。
アルヴィスはエスニャを軽く抱き留めると、額にキスをする。
思わぬ行動にエスニャは驚いて顔を赤くするが、すぐにアルヴィスに体を預けた。
「早速お熱いね」
「どこでもお構いなしだからね」
ブリギッドとデューのやや冷たい声が響くが、目の前のバカップルには聞こえていない・・・多分。
「失礼します。陛下よりご伝言です。本日はゆっくり当家で休んでいくようにとのことです」
近衛兵が、目の前でいちゃつくバカップルがいないかのように言うことだけ言うと、すぐに退室した。
「アルヴィス。おいらはブリギッドと話があるから先に休ませてもらうね」
デューはそれだけ伝えると、ブリギッドを伴い部屋を後にした。
残ったバカップルは二人の世界に入り込んだままなかなか戻ってこなかった。
ようやくアルヴィスが・・・・・
「エスニャ、今日は少し疲れてしまってね。陛下のご厚意に甘えることにしよう。色々話したいこともあるしね」
アルヴィスは優しい表情を見せる。
「はい!聞かせてください!」
(アルヴィス様、少しどころの話じゃないわ。かなり疲れているみたい。ここが妻である私の役目!アルヴィスの支えにならないと!!)
エスニャは心の中の決意とともに元気よく返事をした。
一方その頃
デューとブリギッドはあてがわれた部屋にてお互い向き合っていた。そして・・・
「アルヴィスが色ボケ王子にね・・・」
「それを聞いた色ボケ王子がキレて・・・」
「アズムールのおっちゃんがね・・・・」
「おいらとブリギットの祝言を・・・・」
デューはブリギッドにアルヴィスとクルトの間に起こった出来事、その後のアズムールの話も包み隠さず話した。
全てを聴き終えたブリギッドは・・・・
「ホント、殿下と結婚しなくて良かった」
ブリギッドの第一声がこれである。そして、
「リングのおっちゃんがブリギッドのこと言ってくれてなかったから本当に最悪な結婚だったよ」
デューもブリギッドに返す。
そもそもクルト王子とブリギッドの縁談は、アズムールが積極的に進めていたものだった。リングのブリギッドの想い人発言がなければ、縁談は決まっていた可能性は高かった。
「そう考えると、父上に感謝しないとね」
腰かけたソファーに持たれながらブリギッドは上を向きながら呟く。
「リングのおっちゃんの思惑とは違ったけどね」
デューはそう言って肩をすくめた。その後立ち上がると・・・
「ブリギット・・・・・」
デューは真剣な表情で名前を呼びながら近づく。
ブリギッドはデューの視線を真っ直ぐ受け止める。
デューはブリギッドの前で片膝をつくと
「ブリギッド。アズムール陛下より祝言を挙げるように言われました。ようやくここまできたよ」
デューは続ける。
「ブリギッド。私と結婚してくれますか」
デューの声はかすかだが震えていた。表情にやや怯えが見える。
「はい!こんなアタシで良ければぜひ貰ってください」
ブリギッドは笑顔で受け入れた。
男は元盗賊デュー。
女は元海賊ブリギッド。
しかしブリギッドは公爵家の令嬢であり、本来であれば出会うことすら敵わないはずが一人の男の行動によって導かれ、こうして結ばれることになった。
一方その頃・・・・
「重くないかい?エスニャ・・・」
「いいえ大丈夫ですよ。ゆっくりしてくださいね」
アルヴィスは横になっている。見上げるとエスニャの顔が見える。
いわゆる膝枕状態になっていた。
アルヴィスとエスニャもあてがわれた部屋にてくつろいでいた。部屋に入るなり、アルヴィスはソファーに倒れこむように座ったが、それを見たエスニャが膝枕を申し出たのだ。
無論アルヴィスに断る理由などありはしなかった。
お互い無言のままだが、心地良い空間が二人を支配する。しかし・・・・
「エスニャありがとう。少し落ち着いたよ。あまり楽しくない話だけど大事なことだから今話してもいいだろうか?」
アルヴィスはエスニャに訊ねる。
「はい。殿下と何があったのか知りたいです。お教え願えますか?」
エスニャは答える。アルヴィスは何も彼女に話していない。
(私とブリギッド様が来た時、王宮内が慌ただしかった。入ってくる声から殿下が倒れて、別室に運ばれたみたいだったから、恐らくアルヴィス様と何かあったのは間違いないわ)
エスニャは心の中で確信する。
「君は私の心が読めるのかい?」
アルヴィスは多少驚きの表情を見せる。
「ふふふ。アルヴィス様のことは私が1番知っていますから」
エスニャは優しく返した。
「クルトに全てぶちまけた。そして容赦なく叩きのめした。無論言葉でね。奴からは謝罪一つなかったよ。それどころか私に襲い掛かろうとした」
アルヴィスは不敬を口にする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エスニャは表情をやや崩すが笑顔は崩さず、黙って聞いている。
「エスニャ。君という守りべき大切な人と一緒になって正直迷った。クルトが自らの行為を反省し、謝罪してくれていたら、出奔を考え直したかもしれない。あんな奴でも大恩ある陛下のご子息だ」
「・・・・・・・アルヴィス様・・・・・・・・」
アルヴィスの言葉にエスニャはアルヴィスの名前を呟くことしかできない。
「無理だったよ。奴に仕えることはできない。君に苦労をかけることに・・・・いうっ・・・・・」
エスニャがそれ以上言葉を紡げないよう実力行使に出た。膝枕を素早く崩して横になっているアルヴィスに抱き着いてキスをする。がっちり頭を抱えている。
いきなりの行動にアルヴィスはエスニャの両腕に手をかけようとしたが・・・できなかった。
二人はそのまま長い時間を過ごした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どこまで甘ったるく書こうかな(笑)と考えましたが一応ソフト(笑)におさめました。
アルヴィス以外の年齢表記は行っておりません。他のキャラについては皆さんのご想像にお任せします。
こういった関係性を自由に描けるのが小説のいいところだと思います。
ちなみに私はゲームにおいてこの年の差カップル成立させたら面白いな・・・(笑)とか考えながらカップリングさせたりしていました。あくま私の想像年齢ですが(笑)