平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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大変投稿が遅くなりました。

クルト王子登場です。

アルヴィスとの対決。

まあ言い訳しようもない所業をしているので容赦なくいきます。


56.圧巻

(さてとクルトが痺れを切らしおったようじゃな。自分のあずかり知らぬところで色んな動きが出ておる。奴からすれば気になるところじゃろう)

 

アズムールはこのタイミングでのクルトの面会要請に慌てる様子はない。

 

「アルヴィスよ。入れ替わりで出て行ってもよいぞ。ワシが許可するが・・・・」

 

アズムールはアルヴィスに訊ねる。

 

「いいえ、陛下。もう隠してはおけないのではございませんか?」

 

アルヴィスは首を横に振りながら返す。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アズムールは一旦黙り込むが再度訊ねる。

 

「お主から伝えてくれるか。他にも言いたいことがあるのではないか?」

 

「もう遅いですね。今さら言ったところで何にもなりません。ですが陛下の許可とあれば・・・・」

 

アルヴィスはそう言うと薄い笑みを浮かべた。

 

(アルヴィスのあの顔は・・・容赦しないつもりじゃな。しかしそろそろあ奴にも気づいてもらわんと困るの)

 

アズムールはアルヴィスの心の底に眠る暗い笑みを見ながらため息をついた。

ちなみにデューも謁見の場にいるが完全に気配を消しており、アズムールは存在を確認できない。当然気配遮断の許可を出していた。

 

 

クルトは謁見の場に入るとそこには二人の人物が対峙していた。

 

「陛下、この度はお時間を取っていただき感謝いたします」

 

クルトはアズムールを見るなり臣下の礼をとった。

 

たとえ親子とはいえヴェルトマー家のアルヴィスが側にいるため礼節を忘れず対応する。

 

「クルトよ。丁度良かった。お主に話があっての。アルヴィス卿がわざわざ報告に来てくれた」

 

アズムールは穏やかな口調で声をかける。

 

「陛下、その前にお尋ねしたいことがあるのですが、エッダ家のロダン神父が他国の要人を襲ったというのは誠でございますか?」

 

クルトは真剣な表情を見せる。

 

「その話も合わせてアルヴィスから話す故、アルヴィスよ。頼めるか?」

 

アズムールはアルヴィスに促す。

 

「殿下、お久しぶりにございます。何度かご訪問頂きましたが、多忙ゆえに不在にしていました。誠に申し訳ございません」

 

アルヴィスはそう言いながら臣下の礼をとった。

 

「アルヴィス卿。婚約おめでとう。まさか先を越されるとは思わなかった」

 

クルトはお礼の言葉を述べる。

 

「ありがとうございます。元々は我が弟アゼルとフリージ家のご息女ティルテュ殿の縁談を進める中で私の縁談も決まりました」

 

アルヴィスは笑顔を見せながら続ける。

 

「ティルテュ殿より妹のエスニャ殿を是非にと紹介頂き感謝しております。私にはもったいないほどの器量を持っている女性です」

 

アルヴィスはそう締めくくった。

 

「ほう。君がそこまで言うとは。随分と年は離れているようだが、その様子だと問題はないようだね」

 

クルトはアルヴィスの惚気に思わず笑みがこぼれる。

 

(アルヴィスがこんな嬉しそうな表情を見せるとは・・・・。お相手はフリージ家の次女エスニャだったか?私の中では印象が薄いな。人は見かけによらないということなのだろうか?)

 

クルトは心の中でアルヴィスの状況を納得させていた。が・・・・

 

「今は亡き母上にもお見せしたかった」

 

アルヴィスはこのタイミングで暴露した。

 

「え!アルヴィス卿!今君は何と・・・・」

 

思わずクルトが訊ねた。

 

「実は我が母シギュンはすでに亡くなっていたことが判明いたしました」

 

アルヴィスは下を向いて答えた。

 

「そんな・・・・。シギュンが・・・・・」

 

クルトは膝から崩れ落ちた。

 

(シギュンがいないなんてそんな馬鹿な!あの時無理やりにでも引き留めていれば・・・・)

 

クルトは心の中で悔やむ。

 

「アルヴィスよ。つらい報告をすまぬな。お主にとっては大切な肉親であったろうにな」

 

アズムールはアルヴィスに慰めの言葉をかける。

 

「父上が亡くなった後、母上は思い詰めておられるようでした。私があの時もっと大人であったらと思ったことはありません」

 

アルヴィスはそう答えると続ける。

 

「しかし陛下のご尽力のおかげでこうして当主として任を全うすることができ、守るべき存在ができました。陛下には感謝しております」

 

そう言ってアルヴィスはアズムールに深々と頭を下げた。

 

その横でクルトは崩れ落ちたままの状態で動かない。

 

「クルトよ。いつまでそうしておるのじゃ。つらいのは肉親を失ったアルヴィスじゃ。こやつは前を向いておる。お主がそのような状態でどうするのじゃ」

 

アズムールはクルトに厳しい言葉をかけた。

 

アズムールの言葉を聞いたクルトはそのまま立ち上がるとアルヴィスに訊ねる。

 

「アルヴィス卿。シギュンが亡くなったのは本当か?君は遺体を確認したのか?」

 

「クルト!!!!!いい加減にせんか!!!!!」

 

アズムールの怒りの声が飛ぶ。

 

「陛下、あまり感情的になられてはお体に障ります。殿下もいきなりの話で混乱されておられる。私からお話します」

 

アルヴィスは冷静な口調でアズムールをなだめる。

そしてクルトに向き直り、

 

「はい。間違いのない情報です。母上は亡くなられました。娘を残して・・・・・・・・」

 

アルヴィスは至って穏やかな口調で話す。

 

「!!!!!!!!娘だと!!!!!!!」

 

クルトは驚愕する。

 

「ええ、母上が失踪したときお子を身ごもっておられました。その子供を出産後すぐに亡くなられたのです」

 

アルヴィスは厳しい視線をクルトに送る。

 

その視線にクルトは思わず目を逸らした。

 

「殿下も存じていると思いますが、子供の父親はわが父ヴィクトルではございません」

 

アルヴィスは目線を逸らしたクルトに一発目の爆弾を投下する。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

クルトは思わず目を大きく開きアルヴィスを見る。

 

(アルヴィス!!君は一体何を言って・・・。まさか!!知っているのか・・・・私とシギュンとのことを・・・・・)

 

「殿下と我が母シギュンとの間に生まれた子供でバーバラ家唯一の直系になります。現在捜索にあたっていますがまだ見つかっておりません」

 

アルヴィスは淡々と二発目の爆弾を投下する。

 

「アルヴィス卿。君は何を証拠にそのようなことを言っているんだ」

 

クルトはアルヴィスの言葉に思わず反論する。

 

「殿下。我が父ヴィクトルが最後に残した手紙を幼いがゆえに私が読めないとお思いでしたか?だとすれば甘いと言わざるを得ませんな。これ以上嘘をつき続けて何を守りたいのですか?」

 

アルヴィスは怒りも悲しみもなく、淡々と三発目の爆弾を投下した。そして続ける。

 

「それにその娘を保護すれば貴方の所業がはっきりするのにも関わらず見苦しいですな」

 

アルヴィスは容赦なくクルトを追いつめていく。

 

(アルヴィス!!!なんて冷たい目なんだ!!彼は完全に分かっている。父上はどうして止めてくれないのだ)

 

クルトはアルヴィスの目線に耐え切れずアズムールを見る。しかし・・・・・

 

「クルトよ。自業自得じゃ。全て受け止めよ。ワシはこれ以上お前をかばうつもりは・・・・・ない!!!!」

 

クルトのすがるような視線にアズムールは息子を一喝した。

 

(・・・・どうする。いや。アルヴィスはヴィクトルの状況も知っているはずだ。それならば)

 

クルトが反撃の一手を打とうとしたとき・・・

 

「父ヴィクトルを失意のどん底に追い込み、そのタイミングで貴方が母上に近づいて関係を持ったところまでは上手くいったようですが、父の自殺と手紙は想定外だった」

 

アルヴィスは続ける。

 

「はっきりとさせておきたいのは、貴方が我が母に横恋慕し、略奪した事実は間違いない。貴方の恥も外聞もない行動で私は両親を失った。しかも貴方と母上の関係が美談にすり替えられる始末だ」

 

アルヴィスは冷静に締めくくった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

反論しようとしたクルトは言葉が出ない。

 

それを見たアルヴィスはため息をついた。

 

「ここまで言っても貴方は自分の行為を反省せず罪悪感もなく、言い訳を考えている。そして両親を奪われた私に謝罪一つもないとは・・・・・・」

 

アルヴィスは口調を一切変えない。そして告げた。

 

「クルト王子。私は貴方がグランベル王になりましたら国を出ます。我が両親を奪ったあなたに誓う忠誠心は一欠片も持ち合わせておりません」

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

クルトの娘ディアドラの存在は最後まで隠す展開も考えていましたが、そろそろこの辺ではっきりとさせた方がいいと判断しました。

クルト王子への対応も同様です。アルヴィスからすれば言いたくてしょうがないと思います。クルト王子は他人の妻と関係持ち妊娠させました。これは事実です。
そして関係を知った夫が自殺しました。これも事実です。
それがなぜか美談になりました。これも事実です。

だからクルト王子が1番嫌いです。彼の行動がアルヴィスの両親を奪ったのです。

なので告げました。1番言いたかった言葉を最後にです。

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