前話の決断で結果は見えています。
なので1カ月後からスタートです。
ようやくキーマンが再登場。キャラが上手くできるか不安しかないですね。
最後まで頑張ります。
ラケシスがグランベルに到着してから1か月が経過した。無事エッダ家への嫁入りも完了している。
その二人はというと・・・・・・・
「クロード様!!馬は乗っている人の感情を読み取るのが上手です。怯えてはいけませんよ!!」
ラケシスの声が飛ぶ
「はい。しかし、ラケシス殿は本当にお上手ですね」
クロードはラケシスへ穏やか表情を向ける。
「物心ついてすぐに乗っていましたから、それにエルトシャンお兄様の役に立ちたかったので・・・」
ラケシスはそこまで言うとハッとして俯く。
「全然構いませんよ。ラケシス殿は本当にエルトシャン殿をお好きでいらっしゃいますね」
クロードは気を悪くした様子を全く見せず優しく声をかける。
ラケシスは顔を上げるとクロードに笑顔を見せた。
クロードはラケシスに勧められて馬上訓練を一緒におこなっている。ラケシスもエッダ家のしきたりなど必要な知識をクロードより学んでおり、非常に良好な関係を築いていた。
結婚相手として出会ってすぐは気ごちなさはあったものの、その際起こったトラブルによって一気に距離が縮まり、お互いのことを知り、今に収まっている。
ラケシスは現在クロードの一番近い位置にいる存在となっていることも大きいかった。
(ラケシス殿は本当に素晴らしい人だ。しっかりしているし、私の至らないところも受け入れてくれている。良縁を組んでくれたアルヴィス卿には頭が上がらない。近いうちにエルトシャン殿と会うので失礼のないようにしなければ)
クロードは心の中でラケシスを引き合わせてくれたアルヴィスへの感謝とともに義兄に当たるエルトシャンとの面会?に多少の緊張を感じずにはいられなかった。
(クロード様と上手くやっていけるか不安だったけど、本当に優しい人・・・。堅物なイメージがあったけど全然違う。少し頼りないから私がしっかりと支えていこう。エルトシャンお兄様にも元気な姿を見せないと)
ラケシスは心の中でクロードへの敬慕とエルトシャンとの再会を楽しみにしていた。
「クロード様!お兄様のことは大丈夫です。もし果し合いなんて言ったりしたら、兄妹の縁を切りますので安心してくださいね」
クロードの心を読んだのかラケシスはそう言うとクロードに笑顔を向ける。
「貴方の尊敬するお兄さんはそのようなことはしませんよ。と言いたいですが、もしそうなったら全力で戦いますので見守っていてください」
クロードは穏やかな表情でラケシスに返した。
クロードとしても守るべき存在が出来た以上その人の前で不甲斐ない姿は見せるわけにはいかなかった。
(まあ、私は武人ではないので、ミストルティンで切られることはないでしょう)
クロードは物騒なことを考えつつラケシスと過ごすこの時間を楽しんでいた。
一方その頃
「お主の思惑通りいったようじゃの」
アズムールは機嫌よく話す。
「はい。敵は完全にデューを侮っていました。しかし」
アルヴィスはそれ以降口を閉ざす。
「しかし・・・・なんじゃ・・・・」
アズムールは訝しげにアルヴィスを見る。
「アルヴィスはあまりにも上手くいきすぎて、驚いているんだよ。アズムールのおっちゃん」
アルヴィスの隣でデューがアルヴィスの代わりに話す。
「はい。敵がここまで・・・・・・・」
アルヴィスは途中で言葉を止める。
「愚かだとは思わんかったということか?」
アズムールがアルヴィスの心の中を読む。
「マンフロイの抜けた穴は思った以上に大きかったみたい。正常な判断ができる人がいないんじゃないかな」
デューが的確に答える。
「一瞬こちらが罠にかかったのではないかと勘繰ったぐらいです」
アルヴィスもようやく言葉を絞り出した。
「ふうむ。そう考えるとマンフロイを捕らえたのは大きかったようじゃな」
アズムールも大きくうなずく。
「はい。これで国内における敵は一掃したと言ってよいでしょう。ですが、他国はこれから大きな動きが予想されます。出来るところから手を打っていきたいです」
アルヴィスは真剣な表情をアズムールに向ける。
「ロダンと他の一味の処遇についてお前の意見を聞きたいがどうする?」
アズムールは訊ねる。
「ロダン神父は現実を見る気も自身を変える気もない。そのような者を生かしておいてもしょうがないでしょう。クロード殿には気の毒ではありますが、今はラケシス殿がおられます。彼女であれば十分に支えになってくれるでしょう」
アルヴィスはキッパリと言い切った。
「デューよ。お主はどうじゃ?アルヴィスと一緒は無しじゃ」
アズムールはデューに視線を向ける。
「おいらもロダンのおっちゃんは怖いかな。手足を切っても狂気から逃れられないと思う。ラケシスがいれば全然問題ないよ。正直あの二人がここまで親密になるとは思わなかった」
デューも肩をすくめる。
「人は変わることも出来るが、狂気の方向に変わってしまうこともあるとはな。ロダンは何を見たのであろうな。・・・・・・・・・・」
アズムールは呟くと少し目を閉じた。そして・・
「ロダンは死罪とする。他の者は命を助けるが当分は罪に服してもらうとしよう」
決断した。すると・・・・
「失礼します。陛下!殿下が面会を求めております!!」
近衛兵の声が響いた。
視点変更(クルト)
(ロダン神父が他国の要人を殺害しようとしただと!そのようなことがあるわけがない。父上は何を考えておられるのだ!)
現国王アズムールの息子にして唯一の王位継承権を持ち伝説の武器ナーガを使うことができるバーハラ王家のクルトは苛立ちを隠し切れていなかった。
クルトはここ最近の6公爵家の動きに全くついていけておらず孤立している状況にも不満を抱えていた。
(ヴェルトマー家とフリージ家の縁談、ユングヴィ家長女ブリギット殿の保護、シアルフィ家とユングヴィ家の縁談、そしてエッダ家とノディオン家の縁談と立て続けに決まっている。そしてその裏には全てアルヴィス卿がからんでいる)
特にアルヴィスが反王子派を掲げているフリージ家との縁談を決断したことはクルトに衝撃を与えた。それも兄弟と姉妹によるものだ。
(アルヴィス卿の真意が知りたかったが、なかなか会うことができずに困っていたところだ。今日は父上とのお約束の日だ。ロダン神父の件も含めて問いただす!!)
クルトは近衛兵に面会の要請をアズムールにお願いして待っている。すると
「殿下。陛下がお会いになられるとのことです。どうぞこちらになります」
そう言って近衛兵がアズムールのところへ先導していく。
「ありがとう。陛下はお一人でおられるか?」
クルトは訊ねる。
「いいえ。アルヴィス卿と・・・ご一緒されておられます」
近衛兵はアルヴィス卿と言った後、間をおいて答えた。
「他に誰かいるのか?」
クルトは訝しげに近衛兵に訊ねる。
「アルヴィス卿の護衛のデュー殿がおられます」
近衛兵が答えた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
クルトは驚きの表情を浮かべる。
「なぜ陛下の謁見の場に護衛が必要なのだ。アルヴィス卿は何を考えている」
クルトは近衛兵に強い口調で訊ねる。
「ここ最近功績を上げ続けており、陛下が気に入られたようです。確か銀の剣を賜り、爵位も得たと聞いております」
(確かアルヴィス卿がどこからか拾ってきた子供であったか。とは言っても謁見の場に軽々しく入ってきても困るな。ここは釘を刺しておこう)
アルヴィス卿に対する不満もあってか、そう決めるとアズムールの待つ謁見の場に向かった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
エッダ家の内紛はデューとブリギッドが叩きのめして終わりが見えているのでスキップしました。
クルト王子登場です。イメージは書きながら創っていきます。
そしてこの対決は書きたいと思いました。
次話を楽しみにしていてください。