平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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体調不良のため更新が大変遅れてしまいました。

今後は不定期の更新になります。

何とか週1回投稿に持っていけるよう時間を作ります。

会話シーンが続きます。

ラケシスとエルトシャンに変化を促すため長めに取っています。




52.喪失

アルヴィスの容赦ない口撃にエルトシャンは反論することが出来なかった。

 

(実際のところ殿下はアルヴィス卿を信用されて色々と相談に乗っているようだ。臣下の私ではなく他国のアルヴィス卿にだ)

 

シャガールに引き続きアルヴィスにもやり込められたエルトシャンは元気なく下を向いた。

 

「アルヴィス様!!エルトシャン兄様よりシャガール殿下の方が王にふさわしいとおっしゃるのですか!」

 

隣のラケシスはたまらずアルヴィスにかみついた。

 

「その通りだよ。君からすれば清廉潔白で正義感にあふれ、ノディオン家の領主として人気が高い尊敬すべき兄上であってもだ」

 

アルヴィスは淡々と答える。

 

「ラケシス!!言葉を慎め!!!」

 

エルトシャンは思わず声を荒らげる。

 

「いいえ。どれだけお兄様が心を砕いてこられたかアルヴィス卿は分かっていません!!!」

 

ラケシスはエルトシャンに反論する。

 

(ラケシス!!自分が何を言っているのか分かっているのか!!)

 

普段ラケシスに甘いエルトシャンも今回のことは看過できないものだった。厳しい表情をラケシスに向ける。

 

その状況にエスニャはオロオロして落ち着かない表情で横のアルヴィスを見る。

 

「ラケシス殿。私はあくまでシャガール殿下が次期国王にふさわしい方と言っただけだ。エルトシャン殿を貶める気はさらさらないよ」

 

穏やかな表情でラケシスに語りかけて続ける。

 

「君の言動こそシャガール殿下を貶めていることに気付いていないのかい?だとすれば問題だ」

 

少し声のトーンを落として話す。

 

「シャガール殿下はエルトシャン殿を除く領主がグランベルとの戦争を望んでいる状況を必死で抑えて下さっている。それもただ押さえつけるのではなく上手く折り合いをつけているのだ。そのことをラケシス殿は御存じか?」

 

アルヴィスはラケシスに訊ねる。

 

「え!!!!!そうなのですか?」

 

ラケシスは思わずエルトシャンを見る。

 

「ああ。俺も最初は殿下も他の領主と同じ意見だと思っていたし、実際殿下はそのように動かれていたが、ここ最近はイムカ陛下と共に良好な関係を望んでおられる」

 

エルトシャンは答えた。そしてアルヴィスの方を向いて

 

「そのあたりはアルヴィス卿の方が詳しいのではないか。実際殿下はアルヴィス卿と交流を持たれるようになってから考えを変えられている」

 

エルトシャンは真剣な表情を見せた。

 

横で聞いていたラケシスも驚きを隠せない。

 

「シャガール殿下はエルトシャン殿に対抗意識を持っておられた。と同時にこうも思っておられた。自分は貴方には遠く及ばないともね」

 

アルヴィスは淡々と話す。

 

「エルトシャン殿。貴方はノディオン家の当主であり、魔剣ミストルティンの継承者。率いている騎士団クロスナイツは国内のみならず国外でも最強の騎士団と言われている。実際、あなたを次期国王に推す声も少なからず存在しているのは事実だ」

 

アルヴィスは表情を変えずに続ける。

 

「だが私の評価は違う。貴方は自分の立場がそれほど重要であるにも関わらず、自らが使える主君に対して周りの目も考えず、正論を言い放ちシャガール殿下と衝突していた。これでは殿下の立場ない。貴方はそのことを考えていたのかな?」

 

アルヴィスはエルトシャンに問いかける。

 

「俺は!!殿下に無用な戦は民を苦しめるとお諫めしただけだ!!」

 

エルトシャンは思わず反論するが・・・

 

「なぜそこでシャガール殿下が戦を望んでいる理由を訊ねない?実際私はシャガール殿下にお尋ねしたがね」

 

アルヴィスはエルトシャンの反論を封じ込める。

 

「それは・・・・・・・・」

 

エルトシャンは思わず口ごもる。

 

「シャガール殿下はエルトシャンお兄様より自分が優れていると周りに認めさせたかっただけです!!!」

 

ラケシスが横から強い口調でアルヴィスを責めるが・・・

 

「ラケシス様。シャガール殿下はそのようにおっしゃったのですか。戦を望んでいる理由を?」

 

横で聞いていたエスニャがラケシスに訊ねる。

 

「え!!それは・・・・・・・・・」

 

先ほどまでずっと黙っていたエスニャの質問にラケシスが口ごもる。

 

「それがシャガール殿下を貶めている行為になりませんか。私はそう思うのですが?」

 

エスリンもラケシスを追い詰める。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

兄妹共々最強カップルからの口撃に完全にやり込められている。

 

「・・・・ふう。ラケシス殿。エルトシャン殿が大切なのはわかるが言動には気を付けた方がいい。この様子では万が一、イムカ陛下に何かあったときシャガール殿下が亡き者にしたと吹聴しそうだ」

 

アルヴィスは少し呆れた表情を見せた。が続ける。

 

「あなたは今後グランベルとアグストリアの懸け橋として重要な役目を担う立場だ。今回の件をよく覚えておいてほしい。私は貴方がクロード殿を支えてくれる人だと信じている」

 

アルヴィスはそう締めくくった。

 

少し空気が重くなりかけたところに・・・

 

「失礼します!!!!ブリギッド様がご帰還されました」

 

近衛兵の声が聞こえた。

 

 

 

 

デューはブリギットとともにアルヴィスが会談している部屋に入り挨拶をかわす。

 

「お初にお目にかかります。私はユングヴィ家当主リングの娘ブリギッドです。この度はようこそいらっしゃいました。以後よしなに」

 

ブリギッドは深々と頭を下げた。

 

そして隣のデューの方を向いて紹介する。

 

「彼はアルヴィス卿が最も信頼するヴェルトマー家専属騎士のデューです」

 

促されたデューは無言で深々と頭を下げた。

 

エルトシャンとラケシスは立ち上がり、

 

「ノディオン家当主エルトシャンの妹ラケシスです。この度は良縁をありがとうございます。以後よしなに」

 

ラケシスはスカートの裾をつまみ優雅に礼をする。

 

「ノディオン家当主エルトシャンだ。今後とも妹をよろしく頼む」

 

エルトシャンは深々と頭を下げた。

 

一通りの挨拶が終わり、席に着く。デューのみブリギットの背後に立った。

 

「早速だがデュー。ハイライン家のエリオット殿との共同軍事訓練の報告を頼む」

 

アルヴィスが促す。

 

「はい。無事終了しました。ハイライン家のエリオット様を始め、けが人が出ましたが死者はございません」

 

デューは慣れない敬語で報告する。

 

「エリオット殿がケガをされたのか。具合は?」

 

アルヴィスが確認する。

 

「はい。私との模擬戦中、私が誤って顎と股間を強打してしまい、そのまま気絶されました。現在はエバンス城にて療養中とのことです。」

 

デューは表情を崩さず報告した。

 

そばで聞いているブリギッドは口を抑えながら笑いをこらえている。

 

エスニャとラケシスは顔を赤くしている。

 

エルトシャンは痛そうな表情を浮かべている。

 

「ははは。エリオット殿は災難だったな」

 

そう言いながらデューを手招きする。

 

それを見て一瞬でデューはアルヴィスのそばに移動した。

 

「デュー。報告ありがとう」

 

デューの頭を撫でた。デューは下を向きながら嬉しそうな表情を浮かべている。

 

それをエスニャはジト目で眺めている。

 

デューはチラっとエスニャを見るとアルヴィスに視線を合わせてエスニャに視線を向けた。

 

アルヴィスはデューの視線からエスニャのジト目を確認すると・・・・・

 

アルヴィスはエスニャの髪を撫でた。

 

いきなり髪を撫でられたエスニャはびっくりするがすぐにアルヴィスに甘えた表情を向けた。

 

それを見たラケシスは・・・・

 

(エスニャ様ったら今デュー様に嫉妬されていましたね。デュー様もアルヴィス様も凄い。一瞬で不機嫌になったエスニャ様を見逃さないなんて)

 

デューとアルヴィスの連携を脅威に感じた。

 

「しかしエリオットを相手にしないとは相当な剣の使い手とお見受けする」

 

エルトシャンは別のところでデューに一目を置く。

 

「ああ。彼はすでにシーフファイターの昇格を果たしている。陛下より銀の剣を賜り、下位ではあるが爵位も頂いた。先ほどの紹介の通り私が最も信頼している男だよ」

 

アルヴィスがデューをほめる。

 

「そして私の婚約者でもあるよ」

 

ブリギッドが二人に爆弾を投下した。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

少し前話とダブっている部分もありますが、強調も含めて意図的に入れています。

ラケシスがゲームでもイムカの殺害をシャガールがおこなった(実際そうだが)と言っているシーンがありますが、証拠もなく不用意ですね。

エルトシャンも同様に主君を諫めるにしても言い方があると思うのです。

そう言う意味ではマンフロイは恐ろしい男ですね。猜疑心の強いシャガールをあっさり懐柔しているわけですしね。

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