平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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土日が体調不良で寝込んでいました。

寒暖差が激しく油断してしまった!!!

そんなわけで何とか間に合いました。

次週飛んだらすいません。

デューのシーンからアルヴィスとエルトシャン、ラケシス会話シーンと続きます。

少し容赦ないかも


51.困惑

「ぐは!!」

 

エリオットが後頭部を強打され前に転ぶ。

 

「どうしたの?もう終わり?」

 

デューの冷たい声が響き渡る。

 

その冷たい声を聞いたエリオットの顔には恐怖が浮かぶ。

 

「そろそろ本気出してよ。じゃないと腕を切り飛ばしちゃう」

 

デューは淡々とエリオットに告げる。

 

エリオットは立ち上がるとデューに向かって突進する。そのまま持っている槍で鋭く突いた。

 

デューはその槍をギリギリで交わすと一瞬で懐に入り剣の柄でエリオットの顎を打ち抜く。

 

「ぐえ!!!!」

 

エリオットは悲鳴がこだまする。

 

「そろそろ終わりにしようか。次アルヴィスの悪口言ったら許さないからね」

 

そう言うとデューはエリオットの股間を蹴り上げた。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

エリオットは言葉を失い、股間を抑え崩れ落ちた。

 

それを見たほとんどの面々が思わず痛そうな顔をする。

 

デューはうめくエリオットを一瞥するとカザールのところに戻ってくる。

 

「父ちゃん。あんな感じでいいかな?」

 

デューはカザールに訊ねる。

 

「父ちゃん言うな!まあ両国間の訓練中の事故として報告できる」

 

カザールは答えた。

 

「おい!!エリオット殿を丁重に保護してエバンス城に送り届けろ。恐らくハイライン兵が待機しているはずだ」

 

その声にそれぞれの部隊の何人かでエリオットを丁重に扱う。

 

「デューの旦那。ここは私に任せてください」

 

カザールはデューに告げる。

 

「いいの?」

 

デューは確認する。

 

「娘が待っていますぜ」

 

カザールが目線を後ろの方に向けた。

 

そこには金髪を左右に揺らした女性が腰に手を当てて立っていた。

 

デューはその姿を確認すると顔をほころばせた。

そのまま速足でブリギッドのところへかけていく。

 

「ブリギッド。遅くなってごめんね」

 

デューは謝った。

 

「いいよ。それにしてもあいつを殺さなかったんだね。話は聞いたよ」

 

ブリギッドは少し怒った表情で答える。

 

「父ちゃんが止めてくれなかったら、腕か足は切り落としてかな。殺すだけじゃ生ぬるいから」

 

デューは飄々とした表情を崩さない。

 

「ふふふ。私との結婚は認めないって言われてやめたんでしょ」

 

ブリギッドはいたずらっぽい表情を浮かべる。

 

「そうだよ。それは一番嫌だったから」

 

デューは真剣な表情で答えた。

 

ブリギッドは笑顔のままデューのところに近づくと素早く後ろに回り込みそのまま抱き着いた。そして囁く。

 

「ありがとう。親父を「父」と認めてくれるんだ」

 

「うん。もう父ちゃんって呼ぶからね」

 

二人はその状態のまま当分動かなかった。

 

「親分。とんでもないガキが息子になっちまいやしたね」

 

「ブリギッドもどうやったらあんなになるんですかね」

 

部下のピサールとドバールがカザールに話す。

 

「知るかよ!!!それもこれもあの変な貴・・」

 

「「それ以上言ったらダメです!!!」」

 

二人が必死でカザールの暴走を止めた。

 

 

 

時は戻り

 

 

 

ラケシスとエルトシャンは目の前の光景に言葉を失っていた。お互い簡単な挨拶を交わした後用意された席に座ると

 

(アルヴィス卿・・・で間違いないわよね?)

 

ラケシスは思わず心の中で呟く。

 

人違いと思われているアルヴィスはエスニャと仲睦まじいところを無自覚にも見せつけていた。

 

ラケシスは隣のエルトシャンを見ると唖然とした表情で固まったままだ。

 

助けが欲しいラケシスはシグルドやエスリンを見ると苦笑していた。

 

「随分とお仲がよろしいのですね」

 

ラケシスはそれを言うのが精一杯だった。

 

「家同士の婚姻と聞いていたが・・・・・・」

 

立ち直ったエルトシャンもなんとか言葉を絞り出した。

 

「これからお互いのことを知っていく段階だからぎこちないところは勘弁してほしい」

 

とアルヴィスが笑顔で返した。

 

(どこが!!!!ぎこちないですって!!!)

 

ラケシスは心の中でツッコミを入れる。

 

「全くそんな風には見えないな。どうしてそこまで仲良くなれたのか聞かせてもらいたいものだ」

 

エルトシャンが無難な質問を投げかける。

 

「エルトシャン様!!ストップです!!エスニャ様も話さないでください!」

 

エスリンが思わず止める。

 

エスニャが話そうとしたが強く止めるエスリンに少しシュンとなる。

 

「アルヴィス様、本題に入っていただけますか?」

 

エスリンが促した。

 

促されたアルヴィスは立ち上がり

 

「そうだね。まずはラケシス殿。この度はクロード殿との縁談を受けていただいたことを心より感謝する」

 

ラケシスに深々と頭を下げた。

 

「エルトシャン殿。大事な妹君をグランベルに送り出すのに尽力してくださったことを心よりお礼申し上げる」

 

エルトシャンにも深々と頭を下げた。

 

それを受けたラケシスとエルトシャンは

 

「この度はグランベルからありがたい申し出に心から感謝いたします」

 

ラケシスは深々と頭を下げた。

 

「大事な妹をよろしくお願いする」

 

エルトシャンも深々と頭を下げた。

 

そしてお互い同時に席に座りなおした。

 

「では私たちは一旦席を外させていただく」

 

シグルドはそう言って立ち上がる。それに合わせてエーディン、キュアン、エスリンが立ち上がった。

 

「大事な話になるからまた落ち着いたら声をかけてくれ。エルトシャン」

 

シグルドはエルトシャンに笑顔を見せる。

 

「ああ。承知した。またあとでな」

 

エルトシャンも笑顔で返した。

 

4人がいなくなり、今はアルヴィス、エスニャ、エルトシャン、ラケシスの4人が残った。

 

「さてと。本題に入る前にあなた方を追ってきた一団について心当たりはありますかな?」

 

アルヴィスが訊ねる。

 

「・・・・・・ハイライン家のエリオットだな」

 

エルトシャンが不機嫌な表情で答えた。

 

「あのバカ、ヴェルダンに侵入してまで追いかけてきたの」

 

ラケシスの言葉も容赦ない。

 

「あのエリオット様とは?」

 

エスニャが訊ねる。

 

「アグストリアの有力貴族の一つハイライン家の当主だよ」

 

アルヴィスは答えた。そして続ける。

 

「その件だがわが軍と急遽実践訓練行なうことになってエリオット殿がケガをされたそうだ。今はエバンス城にて保護している」

 

アルヴィスは何事もなかったのように答えた。

 

「なるほど、それは不幸な事故だったな」

「日頃の行いも悪かったから罰が下ったのでは?」

 

二人は何事もなかったように返した。

 

エスニャを除く3人は状況を正確に把握している。両国間に亀裂が入らぬように落としどころを決めたのだ。エスニャは戸惑いの表情を見せている。

 

実際エリオットがしたことは他国への無許可侵犯行為で国家間の大問題にあたる。しかしお互いにことを荒立てたくないのは共通認識であるからだ。

 

(それにしてもハイライン家の動きを察知して伏兵を敷いていたのはびっくりしたわ。私も気づかなかったし。それを撃退したうえに公にならないように訓練中の事故で済ませたところも凄いわね)

 

ラケシスはアルヴィスの用意周到さに多少圧倒されつつある。

 

「訓練中の事故であれば死んでもらってもよかったんだがな」

 

エルトシャンが容赦ないことを口にする。

 

「流石に訓練中の事故で死んだとなれば責任問題が降りかかる」

 

アルヴィスはそう言って肩をすくめた。その仕草を隣で見ているエスニャはクスっと笑う。

 

「そうところは負いたくないとは考えているな」

 

エルトシャンが薄く笑った。

 

「アルヴィス様。お聞きしたことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

ラケシスがアルヴィスに訊ねる。

 

「なにかな。ラケシス殿」

 

「この度の縁談はアルヴィス卿が殿下に進められたと聞きました。何故私なのですか?」

 

ラケシスは核心を訊ねる。

 

「シャガール殿下からお二人の話を聞くことが多くてね。特にラケシス殿のことはね」

 

アルヴィスが答えると続ける。

 

「いくつかの縁談をフイにして、エルトシャン殿が理想の男性であることを公言しているとかね」

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

アルヴィスの言葉にラケシスは驚愕する。

 

「実際、領民の間でもお二人は恋人同士のようだったと噂になっていたようだね」

 

アルヴィスは止まらない。

 

「シャガール殿下はそんな状況はまずいと嘆いておられたのだ。そんな折にクロード殿より良き人を紹介してほしいと私に話があり、両国間にとっていい良縁になると思ってお勧めしたんだよ」

 

アルヴィスはそう言って締めくくった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ラケシスは言葉が出ない。ずっと隣で聞いているエスニャも声をかけることが出来ない。

 

「まあ、私からするとエルトシャン殿に問題があったと思うがね」

 

アルヴィスはそう言いながらエルトシャンを見る。

 

「なんだと。どういう意味だ。アルヴィス卿」

 

アルヴィスの物言いにエルトシャンは思わず反論する。

 

「君は妻や子供がいるにも関わらず、ラケシス殿に深く関わりすぎた。たとえ異母兄妹とはいえ領民からそんな噂を招く行動は慎むべきだった。さらにラケシス殿に来ていた縁談についても、君が断ったりしていたと聞いているよ」

 

アルヴィスは淡々と話す。

 

「それは・・ラケシスにふさわしい男か見極めようと」

 

エルトシャンが返そうとするが

 

「それは君が決めることじゃない。溺愛は結構だが、王家に生まれた以上、義務についてラケシス殿にきちんと教えておくことが君のすべきことだったはずだ。違うかい?」

 

アルヴィスは容赦ない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

エルトシャンも言葉が出なかった。

 

「もう済んだことだからいいが、エルトシャン。シャガール殿下は次期国王になられる人だ。正論を振りかざしていさめるのは結構だが、やりすぎては殿下の立場がない。貴方のすべきことは殿下を支えて国を良くしていくことだろう。世の中に完璧な人間など存在しない。そのことを踏まえた上で殿下に接するべきだと思う。少なくとも王としての資質は貴方よりも殿下の方が上だよ」

 

アルヴィスは遠慮のない言葉を打ち付けた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

まあ後半の会話はラケシスの質問から容赦ない状況になりました。

どんな感じがいいかな?と考えた結果二人をフルボッコにしました。


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