平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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シグルドとエーディン、キュアンとエスリン初登場です。

ラケシスの結婚となると上記メンバーは慌ただしくなりますね。

視点を変えて最近起こった出来事を整理しています。

それぞれの視点によって感じ方が違うのでこの話を入れました。


48.親友

シアルフィ家シグルド自室にて

 

(ラケシスの婚約がこんなに早く決まるなんて、しかも相手がクロード殿か・・・・・・)

 

シグルドは親友エルトシャンの妹の縁談を祝いたい想いと戸惑いが交錯していた。

 

エルトシャンからはラケシスのお転婆ぶりをよく耳にすることが多く、何かと振り回されていたようだったが、それを楽しんでいた節もあった。

 

ラケシスとも交流があり、縁談相手に対しての不満を口していて、エルトシャンを比較対象にあげていた。

 

(ここ最近グランベル内での縁談が進んでいる。私もそうだが、ヴェルトマー家、フリージ家は両家同士の兄弟姉妹で結婚が決まった。これにエッダ家も加わることになる)

 

シグルドはシアルフィ家当主バイロンの息子、次期当主である。バルドの血を引き聖剣ティルフィングの継承者だ。幼なじみだったユングヴィ家のエーディンと結婚した。

 

シグルドの妹のエスリンはもう一人の親友であるレンスター王国のキュアン王子と結婚している。キュアンはノヴァの血を引き地槍ゲイボルグの継承者だ。

 

(それにしてもここ最近の縁談にはヴェルトマー家が後ろにいるみたいだ。特にアルヴィス卿の動きが活発になっている)

 

エルトシャンからはラケシスがお世話になる旨の挨拶とヴェルトマー家へのお礼に伺うとのことだった。

 

(それにしてもエルトシャンがラケシスを送り出す決意を固めた理由を聞きたいものだ。確か昔私にも「ラケシスが欲しければ俺を倒せ!」とか言っていたな)

 

無論、シグルドは昔も現在もラケシスに恋愛感情は持っていなかったが、そのくらいエルトシャンがラケシスを溺愛していたのは事実だ。

 

(流石にクロード殿に対してそのようなことはしないだろう・・・・と思いたい・)

 

シグルドは一抹の不安を覚えるが、その時は全力で止めなければならない。

 

シグルドが思案していると・・・・・・

 

「シグルド様!キュアン様とエスリン様をお見えになられました。」

 

近衛兵から声がかかる。

 

「ありがとう。父上は?」

 

シグルドは訊ねる。

 

「はっ!「つもる話もあるだろうからワシは席を外す」とのことです」

 

近衛兵は答える。

 

「承知した。すぐに向かうよ」

 

シグルドは妹と義弟がいる客間へ向かった。

 

 

 

客間では、すでに女性同士の会話が始まっていた。

 

「本当にお兄様と一緒になられて私は嬉しいです。エーディンお義姉様」

 

桃色の髪を後ろでまとめた若い女性が明るい口調で話す。

 

「ありがとう。ブリギッドお姉さまのこともあってずっと自分の気持ちに嘘をついていたけど無事に見つかってこうして彼と一緒になることができました」

 

輝くほど美しい金色の髪をなびかせているシスターは義妹となったエスリンに笑顔で返す。

 

「まあ、私からすればようやくか・・・と言いたいところだが、改めて結婚おめでとう。エーディン」

 

エスリンの隣にいる茶色の髪の長身の若い男がエーディンにお祝いの言葉を述べた。

 

「キュアン様、ありがとうございます」

 

エーディンはキュアンへ笑顔を向けた。

 

そうしていると・・・・

 

「待たせてすまない。みんな!!」

 

シグルドが客間に入るやいなや。

 

「シグルド、ようやく初恋の人を射止めたか。おめでとう!!」

 

キュアンが立ち上がってシグルドに駆け寄り、その肩を軽く叩く。

 

「ははは。ありがとう、キュアン」

 

少し恥ずかしげな表情をエーディンに向けたあとキュアンに言葉を返す。

 

「エーディンお義姉様の初恋のお相手もお兄様ですものね!」

 

男二人のやりとりを見ていたエスリンがエーディンを茶化す。

 

「エスリン!!!それは・・・・・・」

 

エーディンもシグルドの方を少し見た後、顔を赤くして下を向いた。

 

そのようなやりとりの後4人は夫婦隣同士体面で座り、世間話を始める。

 

「アンドレイはまだお相手はいないのですか?」

 

エスリンが訊ねると

 

「ええ。早くみつけてほしいものですね」

 

とエーディンが返す。

 

「妹は迷惑をかけていないだろうか?」

 

とシグルドがキュアンに訊ねると・・・

 

「兄さん!!それはどういう意「全くそんなことはないぞ!!エスリンにはいつも助けられている」

 

キュアンがエスリンの反論に言葉を重ねて返す。

 

といった和やか?な会話が続いた。

 

「さてとシグルド、そろそろ本題に入ろうか」

 

キュアンが表情を変えてシグルドに促す。

 

「ああ、キュアン。そうだね。もう知っていると思うが、ラケシスの婚約が決まった。お相手はエッダ家のクロード殿だ」

 

シグルドは本題を切り出した。

 

「それはとても喜ばしいことですね。ラケシス様がグランベルに嫁がれるなんて」

 

エーディンは素直に喜ぶ。

 

「クロード殿は私たちよりも年上だし当主であられるからね。エッダ家にとって本当にいいことだね」

 

シグルドも同様に笑顔を見せる。

 

「よくエルトシャンが送り出す決意を固めたものだ」

 

キュアンが目線を少し上げながら話す。

 

「お兄様この縁談はどういったいきさつで決まったのですか?」

 

エスリンがシグルドに訊ねる。

 

「ヴェルトマー家のアルヴィス卿からの働きかけらしい。エルトシャンからの書簡にもあったよ」

 

シグルドは答える。

 

「ヴェルトマー家のアルヴィス卿は最近結婚されましたよね」

 

エスリンが訊ねる。

 

「ええ。確かフリージ家のご息女エスニャ様です」

 

エーディンが答えた。

 

「同時期に弟のアゼル殿もエスニャ殿の姉君ティルテュ殿と結婚したね」

 

シグルドも答える。

 

「正直ラケシスや君たちの結婚よりもアルヴィス卿の結婚の方が衝撃だったよ」

 

キュアンはやや声を低くして話す。

 

「そうかい?私はそんなに驚くことはなかったよ」

 

シグルドは何事もなかったように答える。

 

「兄さんは鈍感ですからね。アルヴィス卿にはそういった噂が全くなかったんです。フリージ家のご息女と懇意にしていたなんて・・・」

 

エスリンは兄の鈍感に呆れつつ答える。

 

「そうですね。実は昔アンドレイがアルヴィス卿に失礼なことを申し上げ、それがきっかけで父とアルヴィス卿でもめたことがありました」

 

エーディンも声を低くして話す。

 

「そんなことがあったのですか!!!いったいアンドレイは何を・・・・・」

 

エスリンは驚きの表情を見せる。

 

「正確にはアルヴィス卿ではなく、従者のデュー様にアルヴィス卿との関係をその・・・・・」

 

エーディンは言葉を濁す。

 

「つまり、アルヴィス卿がそちらにご趣味があるのかって言ったんですね」

 

エスリンはストレートにエーディンを通訳する。

 

「はい。その言葉聞いたデュー様がアンドレイを打ちのめしてしまいまして・・・・」

 

エーディンは言いにくそうに答えた。

 

「彼は確かにやりそうだね。忠実な臣下だから。そういえば彼は最近ヴェルトマー家専属騎士として爵位も賜ったそうだね」

 

シグルドが最近の話題を口にする。

 

「確かデュー殿は元盗賊だったんだろう?そこまでの功績を上げたのかい?」

 

キュアンが訊ねる。

 

「はい。今はブリギッドお姉さまと正式にお付き合いをされておられます」

 

エーディンが爆弾発言をする。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

キュアンとエスリンが驚愕の表情を浮かべた。

 

「その話を聞いたときは私もびっくりしたよ」

 

シグルドが笑いながら話す。

 

「確かデュー殿ってまだ子供でしたよね?」

 

エスリンが訊ねる。

 

「ええ。ですのであくまで交際との形です。流石に結婚は早すぎるとのことで・・・・・・」

 

エーディンは苦笑して答える。

 

「よくリング卿が二人の交際を認めたものだ」

 

キュアンがようやく声を絞り出す。

 

「アンドレイは反対したのではありませんか?」

 

エスリンは再度訊ねる。

 

「いや、アンドレイは喜んでいたよ」

シグルドが答える。

 

「ブリギッドお姉さまは微妙な立場におられましたから、アンドレイとしてもホッとしたのではないかと思います」

 

エーディンが続いた。

 

エーディンの言う微妙な立場とは当主の地位についてだ。次期当主はアンドレイに決まっているが、聖弓イチイバルの使い手であるブリギッドを当主に推す声も少なからずある。

 

「まあ、ブリギッド様はお兄様の背中を蹴っ飛ばしてエーディン様の気持ちを気づかせた方ですしね」

 

エスリンはジト目でシグルドを見る。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

シグルドはその目線をゆっくりそらした。

そらした先にエーディンが飛び込んでくる。少し気まずそうな顔のシグルドを見たエーディンが少し肩をすくめて笑顔になった。

 

「はいはい。ごちそうさまでした。エーディン様、困ったことがいつでも言ってください。今度は私がお兄様を張り倒しますので」

 

二人のやり取りを見たエスリンが呆れた表情を見せた。

 

「まさかブリギッド殿どの交際は政略がからんだものではないだろうね?」

 

キュアンが訊ねる。

 

「はい。お互い気になっていたようで、陛下の計らいで正式な交際が認められました」

 

エーディンが答えた。

 

「ええ!陛下がですか?一体デュー様はどういった子なんですか?」

 

エスリンが思わず訊ねる。

 

「私の知る限りアルヴィス卿の信頼が厚く、アゼル殿とは親友同士の間柄だ。元盗賊だが剣の腕は相当との評判だ。すでにシーフファイターへの昇格を果たしている」

 

シグルドは答えた。

 

「君は彼とお手合わせしたことがあるのかい?」

 

キュアンが訊ねる。

 

「私は無いが、ブリギッド殿の捜索でオーガヒルの海賊を相手にしていなかった。正直一度お手合わせ願いたいものだ」

 

シグルドは答えた。

 

「そういえばキュアン様、ここ最近内情が穏やかではないとのお話を聞きましたが大丈夫なのですか?」

 

エーディンが話題を変えて訊ねる。

 

「トラキア王国とのことかな?父上は御健在だし、多少の小競り合いはあるが、今のところ問題はないよ」

 

キュアンが答えると横にいたエスリンが少し驚いた表情で

 

「エーディンお義姉様。どうされたのですか?」

 

エスリンはエーディンが他国の戦局まで踏み込んで訊ねたことが不思議だった。シスターである彼女はそう言ったことを今まで口にしたことがなかったからだ。

 

「最近、父とアンドレイからお叱りを受けまして、あまりにも世間知らずだと・・」

 

エーディンが申し訳なさそうに答えた。

 

「そういえば政治や経済も学んでいるね」

 

シグルドも続く。

 

「はい。実は・・・・・・・・・・・」

 

エーディンは話し始めた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

似たような会話シーンになっていますが、実際に投稿してよかったと思っています。

1つの出来事によって見方は変わります。こういった話も今後入れていく予定です。

書き溜め分が限界に来ており、1週間スキップするかもしれません。

完結までは持っていきたいと思いますのでそれまでお付き合いいただければ幸いです。

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