グラーニェをかっこよくしています。
後半はクロードとロダンになります。
こちらはクロードがカッコイイです(笑)
ラケシスが縁談を受ける覚悟を決めてから半月が経過した。
「ラケシス。あなたの場合は騎士としての役割があるから、私とは大きく違うわ。とにかく敵を増やす行動は慎むこと。これは絶対よ」
グラーニェはラケシスに厳しい表情を向ける。
「はい。グラーニェ様。肝に銘じておきます」
ラケシスは真剣な表情で返事をする。
「あなたには味方になってくれる人がいるけど、頼りすぎては駄目よ。クロード様を信じること。そういった行動が余計な誤解を招くからね」
グラーニェは自らラケシスの教育係を買って出ている。ラケシスが他国で困らないように自身の体験を伝えているのだ。
ラケシスは当初シャガールからの 責でグラーニェに対して気まずさを持っていたものの、それはグラーニェが一蹴した。逆にあの一件でエルトシャンと仲が深まったグラーニェはラケシスに感謝しており、ラケシスにはこの縁談で幸せになってもらいたいと真剣に考えている。しかし・・・・・
「クロード様は司祭様であるから戦うことは苦手のはずです。敵に襲われた際は貴方が盾となって守らないといけないわ。万が一死なせてしまったら、あなたも破滅すると知りなさい」
グラーニェは続ける。
「私の場合はエルトシャンの弱みになるから、もし敵の人質になりそうになったら・・」
そう言いながら彼女は懐から小瓶を取り出す。
「常にこれを持ち歩いているの。これが私の覚悟よ。エルトシャンの足かせにはならない。絶対にね」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!」
グラーニェの言葉にラケシスは凍り付く。その小瓶の中身は言うまでもないだろう。
「あなたは自分の命を盾にしてでもクロード様を守る。その気概を絶対に忘れないように」
「はい。そのために私は強くならないと・・・」
「それもあるけど常にクロード様の身辺に気を配って、味方と敵の区別をつけておくこと。たとえ親しい人であっても油断しないように」
グラーニェは一つ一つ丁寧に話した。
「はい。わかりました」
ラケシスは返事をしたが少し元気がなかった。
その表情を見たグラーニェは真剣な表情を崩し、
「他国から嫁いで心細い状況をクロード様は十分知っているから、大切にしてくれるはずよ。後はゆっくり関係を作っていきなさい」
優しい言葉を紡いだ。
「グラーニェ様はクロード様の人となりをご存知ですか?」
ラケシスは訊ねる。
「私の知っている限りだと誠実で領民にも慈愛を持って接する優しい人柄らしいわ」
グラーニェは記憶を引っ張り出して答える。
「典型的な司祭様って感じでいらっしゃいますね。上手くやっていけるかとても不安です」
ラケシスの表情は冴えない。
「ラケシス、勘違いしているようだけど、最初から上手くいくわけないわ。すれ違いの連続よ。だって会うのも初めての者同士なのだから上手くいくほうが怖いわよ」
グラーニェはハッキリと告げた。
「でもグラーニェ様はエルトシャンお兄様と非常に仲がよろしいですよね」
ラケシスは反論する。
「最初は全然よ。私は他国で知り合いもいないから不安だらけだったし、エルトシャンも私にどう接していいか分からない感じだったし、そこからお互いを知る努力を重ねていった結果よ」
グラーニェはラケシスの反論を切り返した。
「・・・・そうだったのですね。全く知りませんでした。そんな不安の中、私は無邪気にエルトシャンお兄様に甘えてしまって・・・・・」
ラケシスは申し訳なさげな表情を向ける。
「それはあなたも同じだわ。頼れる身内はエルトシャンしかいないのだからね。あの人が単純に鈍感だったってことでしょう?」
「・・・・・グラーニェ様・・怒っています?」
「怒っているより少々呆れているわ。あの人は普通に接していたらしいけど、ラケシスからすればそうじゃないわよね」
「・・・・・エルトシャンお兄様って無自覚な女たらしですね」
同じ男を想う二人の女性は容赦ない会話を繰り広げる。ちなみにその無自覚な女たらしは、アレスと無邪気に戯れている。
「エルトシャンもそうだけど親友のシグルド様も相当凄かったそうね」
グラーニェは話題を変えた。
「ええ。エルトシャンお兄様はその話でよくシグルド様と言い合いになったと言っていました」
ラケシスは肩をすくめながら答える。
シアルフィ家のシグルド、ノディオン王家のエルトシャン、レンスター王家のキュアンは親友同士で交流を深めているが、この3人は士官学校時代、相当人気が高く、女性からのアプローチも凄かった。
キュアン王子はシグルドの妹であるエスリンと交際しており、エルトシャンもグラーニェとの縁談により、それをかわしていたが、シグルドはそのアプローチを鈍感さで受け流していた。
「結局、シグルド様はどなたとも交際に発展しなかったとか」
「あれにはエルトシャンも呆れていたようだわ。今考えるとエーディン様が心の奥底におられたのかもしれませんわね」
グラーニェが遠くに視線を送りながらつぶやく。
「クロード様もシグルド様と似たような感じなのでしょうか?」
ラケシスは不安げな表情を隠せない。
「恐らくそうじゃないかしら。誠実な方みたいだから浮気の心配は必要ないと思うわ」
グラーニェはいらずらっぽい表情を向ける。が目線が笑っていない。
「・・グラーニェ様・・やっぱり怒っています?」
ラケシスにやや怯えの表情が見える。
「・・・・・・・・・・そう見える?」
すかさずグラーニェが切り返した。
「はい。見えます。怖いです。許してください」
ラケシスは涙目になりつつある。
「はい。許します。その顔見たらスッキリしたわ」
グラーニェは今度こそ影の無い笑顔を見せた。そして
「ラケシス。これ以上容赦ない人なんてごまんといるわよ。だから負けずに頑張ってね」
そう締めくくった。
一方その頃エッダ家では・・・・
「ラケシス様といえばノディオン王家エルトシャン殿の妹君でいらっしゃいますね」
クロードは驚愕の表情を浮かべ訊ねる。
「はい。その通りでございます」
訊ねられた初老の男ロダンは答えた。
(アルヴィス卿にお願いしていたがまさかラケシス様とは・・・・・・)
クロードはラケシスを何度か社交の場で見かけているが話をしたことはない。義兄にあたるエルトシャンとは社交辞令の会話を数回した程度だ。
(まだ彼女は20歳にも満たないはず・・・・しかしエルトシャン殿をよく説得できたものだ)
エルトシャンとの兄妹仲は良く、ラケシスはエルトシャンを理想の男性と位置付けているため国内の縁談を断り続けていることで有名だ。
「ラケシス様はこの縁談を承知されているのですか?」
クロードはロダンに訊ねる。
「はい。本人も了承されたとのことです」
ロダンは答えた。
「そうですか。わかりました。私もぜひお待ち申し上げておりますと相手方には丁寧にお礼も添えて伝えておいてください」
そう言ってクロードは笑顔を見せる。
「・・・・クロード様。この縁談を受けられるのですか?」
ロダンは神妙な面持ちで訊ねる。
「もちろんです。私がお願いしたのですよ。ロダン神父。まさかノディオン王家では釣り合わないわけではないですよね。何か気になることでもあるのですか?」
(ロダン神父はあまり気が進まないようだ。何が問題なのだろうか?)
クロードはロダンの態度が腑におちない。過去の縁談が上手くいかないことを嘆いていた筆頭がロダンである。
「ラケシス様は内外の貴族の方からの評判が芳しくありません。シャガール殿下とも折り合いが悪く、厄介払いで送り込まれているようなものです」
ロダンは冷たい口調で答える。
「なるほど。しかしラケシス様はノディオン領内において家臣にも民衆にも人気は非常に高いと聞いていますよ」
クロードはロダンに切り返して続ける。
「世の中に完璧な人間などいません。それは私も同様です。少なくともラケシス様はエッダ家に嫁がれる決心をなされた。それだけの覚悟を持った方を無下にするなど私にはできません」
クロードはキッパリと告げる。さらに
「この縁談を断ればアルヴィス卿だけでなくシャガール殿下にも恥をかかせることになります。兄君のエルトシャン殿も私を許せないでしょうね。最悪ミストルティンで切られかねません」
クロードは真面目な表情を崩して肩をすくめた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ロダンは何も言わず臣下の礼をとった。
「確かにあなたの危惧も分かります。しかし1番つらい立場になるのはラケシス様ですよ。たった一人で他国に嫁ぐことがどれだけ大変か、私よりもあなたの方がご存じではありませんか?」
クロードは納得していないロダンに訊ねる。
「はい。そのとおりです。そこまでお考えであれば私も反対致しません。改めてご婚約おめでとうございます」
ロダンは頭を上げず平伏したままお祝いの言葉を述べた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
実際他国に嫁ぐときはこんな感じなのかな?と思いながら創りました。
グラーニェもラケシスに対して思うところがないわけではないです。そのあたりを強めにしました。
3人の士官学校のくだりは普通にモテるでしょう。との考えです。エルトシャンとキュアンに相手がいるとなれば当然シグルドに集中しますでしょうし(笑)
クロードに関しては素直に縁談を受け入れるとの認識です。ミストルティンのくだりもお約束です(笑)
なお書き溜めが追い付いていません。しかも来週は「出張」(笑)で土日も仕事です。
週1回ペースを何とか維持していきます。が間に合わない場合は1週飛ばします。