とても難しいですね。
書き溜めている分が苦しい・・・・・・。時間がかかりました。
次話が間に合うだろうか?の状態です。頑張ります。
頭を下げ、自分に感謝の言葉を紡ぐエルトシャンにグラーニェは一瞬言葉を失うがすぐに・・・
「あなたの支えるのが妻である私の役目よ。いきなりどうしたの。もしかしてシャガール殿下と何かあったの?」
(こんなエルトシャンは初めて見るわ。本当にどうしたのかしら?)
エルトシャンの申し訳なさげな態度にグラーニェは戸惑いを隠せない。
「ああ、シャガール殿下よりお叱りを受けて謹慎処分を受けた。当分の間は君とアレスのそばにいるつもりだ」
エルトシャンはそう言って晴れやか表情を見せた。
(謹慎!!シャガール殿下は何を考えているの!
でも変ね。エルトシャンは謹慎処分についてそれほど落ち込んでいないみたい。最近は忙しくてほとんど一緒にいられなかったから嬉しいけど・・)
「よろしいのですか?その・・・お仕事の方は」
グラーニェは嬉しい気持ちを隠しつつ訊ねる。
「ああ。部下たちには伝えてきた。事情は説明してある。ゆっくり休んでくださいとのことだ」
エルトシャンはキッパリと答えた。
「ふふふ。怖い上司がいなくったから喜んでいたのではないのかしら」
グラーニェはいたずらっぽい表情を見せる。その表情を温かい目で見たエルトシャンは・・・・
「ははは怖い上司か。君も遠慮がないな。まあ海賊もいなくなったし、当分私がいなくても問題ないだろう。それとラケシスのことだが縁談が決まった」
エルトシャンの表情は少し硬い。
「え!!!そうなのですか。」
グラーニェは驚きを隠せない。
(ラケシスの縁談が決まるなんて・・・お相手は誰かしら?エルトシャンが知っているってことは、今日のシャガール殿下の呼び出しはその件ね)
グラーニェは素早く情報を整理する。
(もしかしてエルトシャンが縁談に反対してシャガール殿下のお怒りを買ったのかしら?)
グラーニェは謹慎理由を推測する。
「縁談のお相手はどなたなのでしょうか?」
グラーニェは訊ねる。
「グランベル6公爵家の一つ、エッダ家のクロード殿だ」
エルトシャンは答えた。
「クロード様ってエッダ家当主ですよね」
グラーニェは驚愕の表情を見せて訊ねるとエルトシャンは頷いた。
(とんでもない良縁だわ。最近当主になられて確か司祭様でしたわね。でもどうしてラケシスなのかしら?)
グラーニェは少し目線を上にして考え込む仕草を見せる。
「ヴェルトマー家当主のアルヴィス卿よりクロード殿から依頼があったらしい。そこでシャガール殿下がラケシスを紹介したとの流れだ」
エルトシャンは続ける。
「アルヴィス卿もラケシスならぜひとのことで今回の縁談が決まった。まだクロード殿は知らないがな」
「殿下はともかく陛下もお認めになられたの?」
(ラケシスに何かと縁談を持ちかけていた殿下が賛成なのは分かるけど陛下はどうなのかしら?)
グラーニェは腑に落ちない。ラケシスは良縁をことごとく断り続けており、他領主からの評判が良くない。しかも義兄のエルトシャンが理想の男性であることを公言しているのだ。
(実際、私の方にも皮肉を言ってくる女性陣がいるけど、立場があるからそんなに気にはならない)
グラーニェ自身といえばラケシスを嫌っていない。むしろ微笑ましく思う。義姉である自分を慕ってくれて、色々と気にかけてくれている。アレスの出産にも立ち会い、とても喜んでくれたのだ。
「陛下は当初反対しておられたが、殿下が説得されたようだ。殿下もアルヴィス卿と親交を深めるようになってから考えが変わったご様子だ」
エルトシャンが幾分明るい表情を見せた。
「それは良かったわ。でもなぜあなたが謹慎処分を受けることになったの?」
グラーニェは首を傾げた。
(エルトシャンはこの縁談に反対はしていないわ。むしろ喜んでいるみたい。てっきり反対するかと思ったけど)
「ああ実は・・・・その・・・・・・・」
エルトシャンはその問いに申し訳なさそうな表情を見せる。
(あら、また落ち込んでいるわ。どうしたのかしら。でもこんなエルトは新鮮ね)
滅多に見せないエルトシャンの落ち込みように、グラーニェは多少の優越感を感じながらも顔には出さない。
「てっきりラケシスの縁談に反対して殿下のお怒りを買ったのかと・・・・」
グラーニェのその言葉に・・・・・
「グラーニェはどうして俺が反対すると思ったんだ?」
エルトシャンは素早く顔を上げて訊ねる。
「あなたはラケシスを溺愛していたし、いくつかの縁談に反対して殿下と何度も衝突していたわ。今回は他国へしかも公爵家へ嫁ぐからラケシスには荷が重いと思って反対したのかと・・・」
グラーニェはエルトシャンの変化に戸惑いつつも答えた。
「俺は普通に接しているつもりだったが君にはそのように見えていたのか?」
エルトシャンは真剣な表情で訊ねる。
「ええ。実際二人が一緒に歩いているところは恋人同士に見えるみたいよ」
グラーニェの口調は変わらない。が・・・・
(あれで普通!!だとすればラケシスが誤解するのも無理ないわね)
と内心驚くが顔には出さない。グラーニェはアグストリアに嫁ぐ前に十分な教育を受けている。常に夫を支える立場になり、不安や不満を顔には出さないようにするのはその教育の賜物だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エルトシャンは言葉を失い、グラーニェから目線をそらした。
「一体どうしたの?そんな話はノディオン家領内ではみんな知っていることだけど・・・」
グラーニェは淡々と話す。
視点変更(エルトシャン)
「一体どうしたの?そんな話はノディオン家領内ではみんな知っていることだけど・・・」
グラーニェのいつもと変わらない口調に・・・
エルトシャン申し訳なさと・・・多少の恐怖を感じていた。
(グラーニェは怒っていないのだろうか?それにしても殿下のおっしゃっていたことは本当だった)
エルトシャンはシャガールとの話の後、自身の領内の民の噂や部下から情報を集めていた。
その結果エルトシャンとラケシスの関係を兄妹以上に見ていた話が多かった。酷い話だと跡継ぎのアレスが生まれたので、グラーニェと離縁し、ラケシスを正式に妻に向かい入れるなどあったほどだ。
(護衛の者からもラケシスは俺のような男でないとだめだ。だから誰の妻にもならないと・・・)
実際言われた護衛も「それはよろしいのですが」と返すのがやっとだったそうである。
エルトシャンは自身の行動の影響がどれほどまでに及んでいるか全く理解できていなかった。
そんな噂が当たり前のように流れている状況であれながら、目の前の妻は不安も不満も口にせず、自分を支えてくれていたのだ。
(まずは謝ろう。それからだ)
エルトシャンは腹を括ると・・・・
「グラーニェ。殿下から君に対する気遣いが足りないとお叱りを受けた。遠くレンスター王国から俺の妻になってくれたのに、それに孤独な状況であるにも関わらず、俺は君が抱えている不安に気づかず、それを取り除く努力をしなかった。本当にすまなかった」
エルトシャンはグラーニェに頭を下げた。
「エルト!!!ちょっと待って私は「最後まで聞いてくれ!!」」
慌てるグラーニェにエルトシャンは言葉を重ねる。
「俺は領内でラケシスとの関係についての噂を聞いた。正直腹立たしいものがあった。さっき部下からも厳しく咎められた。俺は状況に全く気付いていなかった。それでも君は何もなかったかのように俺を支えてくれていた・・・・・・・・」
エルトシャンは真剣な表情でグラーニェを見つめて続ける。
「殿下は君がどんな不満があっても口に出すことはしないと言っていた。当然だ。君には味方が俺しかいないからだ!!そのことにも気づかず、何かあれば相談してくれると安心してしまっていた」
エルトシャンは止まらない。
「俺は君と政略結婚で結ばれたが、今は君を愛している。とても幸せだ。でも君が不安を抱えているのなら取り除きたい。そのための時間を殿下より頂いた」
最後まで締めくくった。
視点変更(グラーニェ)
謝罪から始まり、真剣な表情で話をしたエルトシャンにグラーニェは・・・・
(本当に真面目で真っ直ぐでそして優しい人だわねエルトって。ラケシスとのことは納得していた感じかしらね。彼は優しい人だから)
グラーニェは今回の謹慎がシャガールの配慮だったことに驚いている。
(まさか殿下がここまでエルトと私のことに踏み込んで来られるなんて・・・でも良かった)
「エルト、ありがとう。そう言って貰えてとても嬉しいわ。ふふふ。「愛している」って言ってくれる夫を持てて私も幸せよ」
グラーニェは笑顔を見せてエルトシャンに抱き着いた。エルトシャンはそれを受け止めた。
グラーニェは人物像が見えませんでしたが、エルトシャンの奥さんなので胆力のある人物に設定しました。
政略結婚で全く知らないところに来るわけですから、両国のこと考えてもそれなりの人だろうとの解釈です。
ゲームではエルトシャンの気持ちがどうだったかは微妙なところです。今回は幸せになってほしいところですね。