キャラデザインがあったのでそれで性格をイメージしました。
エスニャと被らないようにしていますがどうでしょうね。こちらもキャラデザインからの設定です。
政略結婚で他国から嫁いできたとの設定もありましたでそれも活用しています。
ゲームではアレス会話よりあまり良い最期を迎えていなかったようなので登場させることにしました。
ノディオン家当主の屋敷にて
グラーニェは夫の帰りを今か今かと待っている。
(エルトシャンが急に帰ってくることになるなんて、ここ最近は忙しかったから・・・・・)
グラーニェの顔もほころびが見える。
グラーニェはグランベルの同盟国にあたるレンスター王国の出身だ。エルトシャンとは政略結婚で嫁いだ身であり、当初は不安があったが夫婦仲は良く、息子アレスを授かっている。
(アレスは元気よく育ってくれて本当に良かったわ。私は体が丈夫でなかったからね。それにエルトシャンも私の無事を喜んでくれて・・・・・)
息子を出産したときのことを今も思い出す。普段は苛烈な性格のエルトシャンもこの時ばかりは、ホッとしたように自分を抱きしめてくれた。
(あのときまではエルトシャンを完全に信じることができなかった。お互いのことをほとんど知らないまま夫婦になったからね)
エルトシャンの息子への可愛がりようはまさに親バカのごとくだ。
数えきれないくらい言っているが子供の数だけ親バカは存在する(笑)
(オーガヒルの海賊もいなくなって、平和になったのに戦争になるかもしれないなんて・・・・)
グラーニェの不安はつきない。ここ最近はそれだけではない。義理の妹にあたるラケシスのことだ。
(国内の縁談を断り続けているのだとか。本当にエルトシャンのことが好きなのね)
グラーニェはラケシスがエルトシャンに好意を持っていることに気付いている。しかしそのことに対して嫉妬の感情はない。エルトシャンを信じていることもあるが、自分の立場を考え余計な火種を起こしたくないからだ。
(それに彼女は気品があって元気で明るくって領内の人気も高い。それはノディオン家にとても良いことだわ。本当に私に無いものを全て持っている)
心の中で劣等感を覚えながら自分の茶色がかった髪に手を充てる。ラケシスは美しい金髪で正直羨ましい。鏡を見ても彼女の方が綺麗と思う。
(私が彼の妻で良かったのかと考える時がある・・・・。)
アグストリアでは近親同士の結婚はそれほど珍しくはない。貴族であればなおさら血の存続が重視される。ノディオン領内で、エルトシャンとラケシスが二人で歩いているところを見た民衆が、まるで恋人同士のようだと言っているのを耳にすることも少なくない。
(ふう。ダメね。こんな感じで夫に会ったら愛想つかされちゃうわ。頑張って彼を支えないと)
頭を振って落ち込んでいる気持ちを吹き飛ばした。
時は少しさかのぼる。
ラケシスが縁談を受けいれる覚悟を固め、準備を進めることになり、部屋を後にした。
シャガールとエルトシャンが残り、ラケシスがいなくなるとシャガールが話し出す。
「エルトシャンよ、グラーニェは身一つでお前の妻となったのだ。親しい者は誰もおらん。周りが味方か敵かもわからん。そんなところに放り込まれた」
シャガールは真剣な表情で続ける。
「そんな不安の中、丈夫でない体でお前の息子を産んで、お主を支えてくれておる。お前が妻も息子も無事だったと聞いたときの状況はワシも聞き及んでおるぞ」
シャガールが少し真剣な表情を崩した。
「・・はい。グラーニェには感謝しております。アレスを立派に育ててくれて」
エルトシャンはそのことを思い出しながら答える。
「ラケシスのことも当然気づいておるぞ。領内ではお前とラケシスを恋人同士みたいなどと言っている者もおるわ。しかしあやつからお前に真意を確認することは絶対にせん。ラケシスに対しても同様だ」
シャガールがやや呆れ気味に話す。
「!!!!!!!!!!!!!!!」
エルトシャンは言葉を失う。
「知らんかったか、馬鹿者!そんな状態に置かれているグラーニェの気持ちを考えたことはあったのか!!!!!」
シャガールがエルトシャンを袈裟切りにする。
「・・・・・・なぜ、グラーニェは・・・・」
エルトシャンはそれだけ言葉を絞り出す。
(ふう。こやつは本当にわかっておらん。自分の立場、ラケシスに対しても同様だ。なるほど、アルヴィス卿が王の素質についてエルトシャンが向いていないとはこういったことかもしれん)
シャガールは他の領主の動向には目を光らせている。ノディオン家のエルトシャンとラケシスの噂に関しては別の見方では微笑ましいものだが、看過できるものではなかった。
「エルトシャン。お前の立場を考えよ。ノディオン家当主で権力も自由に振るうことができる。対してグラーニェは他国から嫁いできており後ろ盾もなく、絶対権力を持つエルトシャンの機嫌を損ねてしまったら終わりだからだ。グラーニェと離縁し、ラケシスと結婚することも簡単にできる」
シャガールは爆弾を放り込んだ。
「殿下!!!!今の言葉を取り消し「最後まで話を聞け!!」
怒りの表情を向けてきたエルトシャンの反論を封じ込めシャガールは続ける。
「夫婦とはいえお前とグラーニェの立場は対等ではない。れっきとした差があるのだ。そのことを話したうえで改めて問おう。グラーニェの中の不安や不満を取り除く努力をしたか?ラケシスへの対応、民衆の無責任な噂の無関心・・どうじゃ?」
視点変更(エルトシャン)
シャガールの遠慮のない追及にエルトシャンは一瞬怒りの表情を向けたものの、最後の問いかけに怒りの気持ちが霧散していく。
(俺は殿下の言う通り何もしていない。グラーニェが何も言わなかったから満足していると思っていた)
エルトシャンは自分の立場の大きさを自覚していなかった。それが今回の騒動を起こしてしまったことを改めて実感している。
(ラケシスに対しても同様だ。本来はもっと距離を取って節度を持つべきだった。無邪気に慕ってくるので何も考えずに受け入れてしまった)
無論エルトシャンはラケシスに対して抱いているのは兄妹しての想いだ。恋愛感情は持っていない。だが周りにどう見えるかは別問題である。
「殿下、その通りでございます。返す言葉もございません」
エルトシャンは言葉を絞り出した。
「結婚をしていないワシが言っても説得力はないが、少なくとも領内での誤解される噂は捨て置けるものではない」
シャガールは表情を幾分やわらげ続ける。
「海賊もいなくなり今は落ち着いておる。少し休みを取ったらどうだ。何をすれば良いかわかっておるだろう」
エルトシャンはハッとシャガールを見る。
「しかし・・・」
「すでに父上には報告してある。不穏な動きをする他の馬鹿どもにはワシから牽制をしておく」
シャガールキッパリとエルトシャンに告げた。
「ありがとうございます。殿下」
エルトシャンは頭を深々と下げた。
視点変更(グラーニェ)
(いきなりどうしたのかしら?あまり浮かない表情で帰ってくるなり、「大事な話があるがいいか?」って訪ねてくるなんて)
グラーニェは久しぶりの再会となった夫エルトシャンの表情を見て不安を覚える。
(確かシャガール殿下に呼び出されていたから何かあったのかしら?)
グラーニェはシャガールとエルトシャンの不仲について知っている。オーガヒルの海賊が一掃された後、他国への侵攻を主導しているのがシャガールでそれに反対しているのがエルトシャンとのことだ。
(反対して謹慎でも命じられたかも・・・・殿下はそのくらいしそうだし・・)
色々思案していると・・・
「グラーニェ、待たせてしまってすまない」
エルトシャンが着替え終わり客間に入ってきた。
「大丈夫よ。それよりシャガール殿下と何かあったの?凄く疲れているようだけど」
グラーニェは立ち上がり、エルトシャンに訊ねる。
「ああ、少しへこんでいる。・・・グラーニェ」
エルトシャンは少し落ち込んだ表情を見せたあと、グラーニェを抱きしめる。
エルトシャンの行動に一瞬戸惑ったもののグラーニェもエルトシャンの背中に手を回した。
(こんなエルトシャンは初めて見るかも。何があったか気になるわね。「大事な話」って何かしら)
普段とは違う夫の行動に不安はあるが抱きしめられていることで嬉しさもあった。
少し時間をかけてからゆっくりお互いが離れて、そのまま大きめのソファーへ隣りあわせに腰をかけた。
エルトシャンは下を向いたまま無言だったが、顔を上げてグラーニェを見つめると
「グラーニェ。いつも俺を支えてくれてありがとう」
そう言って頭を下げた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は少しだけですが、夫婦の会話は難しいです。
シャガールがエルトシャンを再度袈裟切りにしました。
グラーニェの立場からすればエルトシャンとは対等ではありません。
いつでも切り捨てられる側になります。そのあたりを強調してみました。
実際ゲームでもエルトシャンはラケシスを溺愛したようですし、グラーニェとは政略結婚で結ばれた身ですから、民衆の間の噂の種になっていた可能性は否定できません。
エンディングでアレスがアグストリア王になったとき恋人がナンナであれば民衆は親同士の夫婦関係もイメージするだろうなと感じたからです。
アレスとナンナの会話シーンはお気に入りです。