シャガールが二人に対して厳しいです。
それを受けた二人の反応は?
エルトシャンは今回の縁談におけるシャガールの狙いを考える。
(殿下はグランベルとの敵対ではなく、融和を考えておられる。この縁談が成立すれば当分他の領主も手を出そうとは思わないだろう。だが・・)
しかし元々好戦指示派だったシャガールの変わりように別の考えが浮かぶ。
(ラケシスを利用し、融和とみせて、グランベルの油断を誘う・・・。あまり考えたくはないが)
「殿下、この縁談は陛下もご存知なのですか?」
エルトシャンはシャガールに訊ねる。
「無論、伝えてある。父上も良案であると言っておられた。ただ・・・・・」
シャガールはそう言って口を濁す。
「ただ・・・・何なのでしょうか?」
エルトシャンは追及する。
「ラケシスでは荷が重いのではないかと言っておられたが、そこはワシが説得した」
シャガールは濁した理由を説明する。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
エルトシャンとラケシスはシャガールの理由に驚きの表情を浮かべた。
「クロード殿は若いが6公爵家の当主だ。ラケシスは王家の血を引くとはいえ20歳にも満たぬ。嫁げば公爵夫人としてクロード殿を支えねばならん立場となる」
シャガールは真剣な表情で話す。
「ラケシスではクロード殿を支えることが出来ないと陛下がおっしゃったのですか?」
エルトシャンは厳しい表情をシャガールに向ける。
「父上もそうだが、ワシも同じ意見であった」
そう言ってシャガールはラケシスの方を向いた。
ラケシスはややムッとした表情を返す。
「ラケシスは家臣や領民からの評判は非常に良い。それはワシも認める。しかし他領主からの評判は内外ともに芳しくない。なぜだかわかるか、ラケシスよ」
シャガールが不機嫌な表情をしているラケシスに気を悪くした様子もなく訊ねる。
「それはエルトシャンお兄様の評判をねたんだ人たちが悪評を吹聴しているからではありませんか」
ラケシスは遠慮なくシャガールに返した。
「ふむ。確かにそれは否定しない。ワシもエルトシャンの遠慮のない言動に対して思うところが無いわけではない。しかし・・・・・」
シャガールは一旦言葉切って続ける。
「こちらが紹介した縁談をことごとく断ったあげく、結婚している相手への好意を隠さない行動は異性だけではなく同性からも嫌われる。同性からすれば良き醜聞の種よの」
シャガールはラケシスを袈裟切りにする。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ラケシスは言葉でぶった切りされ言葉を失う。そしてエルトシャンを見ながら顔をみるみる赤く染めていく。
「お主はエルトシャンを困らせたいのか。その無責任な行動が結局エルトシャンに敵を作ることになる。それに気が付いていない視野の狭さが問題だと言っているのだ」
容赦なくラケシスを打ち砕くと次はエルトシャンを見た。
「エルトシャンよ、政略結婚とはいえグラーニェのことをもっと考えよ。レンスター王国から身一つで来た女性を誰が守るのだ。夫であるお主の役目ではないのか?」
シャガールはエルトシャンにも容赦がない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人ともシャガールの言葉に反論できなかった。
(俺は愚か者だ。殿下は本当に俺たち兄妹のことを考えている。何がラケシスを利用するだと・・)
エルトシャンはシャガールを疑った自分に怒りすら覚えた。
顔が赤くなっていたラケシスはシャガールの言葉に赤みを失い蒼白になっていた。
視点変更(シャガール)
罪悪感に苛まれている二人を見たシャガールは・・・
(まあ、ワシも人のことは言えん。昔ならもっと怒っていたが、アルヴィスの言葉が忘れられんな)
シャガールは冷静に二人を見ている。
「殿下はさきほど陛下を説得なさったとおっしゃておられましたが・・・・」
エルトシャンはシャガールに力のない言葉で訊ねる。
「うむ。アルヴィス卿よりクロード殿の人柄を聞いた限りラケシスを大切にしてくれると思ってな。アルヴィス卿もラケシスであればぜひお願いしたと言っておった」
シャガールは答えた。
「アルヴィス卿が!」
エルトシャンは声を上げる。隣で蒼白になっていたラケシスも顔を上げた。
「少なくともノディオン家においては、領民に慕われており、家臣の受けも悪くない。クロード殿は司祭であり戦うことは得意ではない。ラケシスには別の意味でも彼を支えてもらうことを期待しているようだ。」
シャガールは真剣な表情を多少崩して話す。
「つまり騎士としての役割を期待していると?」
エルトシャンは確認する。
「無論、公爵夫人としての役目は大切ではあるが、ラケシスの性格的にそちらの方があっているとアルヴィス卿は言っておったし、ワシも納得した」
シャガールはエルトシャンの問いに答えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラケシスは黙って話を聞いている。
(ふうむ。さっきと表情が変わりよった。アルヴィス卿が言うようにラケシスは兄と同じで騎士としての在り方の方が良いかもしれん)
シャガールはラケシスの表情の変化を見抜く。
ラケシスは戦士としての素質、素養はある。騎士に交じっての訓練も怠らず、真剣に取り組んでいる。そのことをアルヴィス卿から聞かされて、彼女への見方を変えた。だが半信半疑の部分もある。
しかし・・・・
(この縁談はグランベル側の方にも利がある。少なくともエッダ家がラケシスを一方的に拒否することはない。クロード殿も紹介してもらったアルヴィス卿に対して無下に扱うことはない。当然アグストリアに対しても同様じゃな)
シャガールは冷静に分析する。
視点変更(ラケシス)
ラケシスはシャガールの言葉を重く受け止めていた。自身の行動を振り返り、いかに自分が愚かであったかが、そしてその行動がどれだけエルトシャンを苦しめていたかだ。
(・・・・・・エルトシャン兄様はもう奥様がおられていても、想いがかなわないと分かっていても、私はそれでよかった)
ラケシスはエルトシャンと結ばれることなど考えていない。ただ縁談となるとどうしても相手をエルトシャンと比較している自分がいた。
(お兄様の力になりたくて剣の稽古を始めた。筋がいいと言ってくれて嬉しかった。でも・・)
ラケシス自身今回の縁談の話を冷静に考えてみると破格の条件であることが分かる。
(私には騎士としての役割が求められている。クロード様と上手くやっていけるか分からないし自信はないけど、守っていくことは出来る)
エルトシャンを横目でチラっと見た後・・・
「殿下、縁談のお話ですがクロード様は私がお相手であることはご存じなのでしょうか?」
ラケシスは真っ直ぐシャガールを見て訊ねる。
「まだ本人には伝えてはおらん。こちらの返事を待っている状態だ。ラケシスよ。クロード殿は相手が誰であっても拒否することは絶対にない。その心配は不要だ」
シャガールはラケシスにきっぱりと告げる。
「しかし、殿下のお話だと私はグランベルでは、あまり快く思われていないのでは?」
ラケシスは思わず反論する。
(殿下は自信があるようだけど・・・少し心配だわ。流石に覚悟を決めたけど、それで拒否されたらショックだし)
「国家間で交わされる公爵家と王家の縁談をグランベル側から依頼されたにも関わらず断ったら、それこそ大問題になる。拒否したグランベル側はアグストリアのみならず、他の隣接している国からも信用を失うじゃろうな」
シャガールはラケシスの反論を返して続ける。
「後はラケシスよ。お主がどこまでクロード殿を支えていけるかがどうかだけだ」
シャガールは幾分口調を柔らかくして締めくくった。
(エルトシャンお兄様にこれ以上迷惑は掛けられない。私も覚悟を決めよう)
「わかりました。その縁談お受けします。」
ラケシスはシャガールに告げた。
「わかった。エルトシャンよ。近いうちにエッダ家への訪問がある。お主がラケシスの護衛を務めよ」
シャガールはエルトシャンに命令を出す。
「はっ!!!拝命致します」
エルトシャンはシャガールに臣下の礼を取る。
「ラケシス!陛下へこの度の縁談の報告に向かう。いつでもできるよう準備をしておくように」
「はい!!!承知いたしました」
ラケシスも同様に臣下の礼を取った。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ラケシスは決断しました。
エルトシャンも妹離れします(笑)
しかしまだ終わりません。シャガールはまだ言わねばならないことがあります。
ラケシスの騎士としての役割の部分においては将来マスターナイトを目指せるので入れさせていただきました。ゲームでもすごく頼りになりますからね。
前衛ラケシスと後衛クロードのバランスが取れていいと思います。