平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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アグストリアの面々が登場です。

シャガールとイムカの関係に変化があります。

アルヴィスがシャガールの臨時相談役になっています。

このあたりの設定はかなり苦労しました。



41.変化

(さて、ようやくじゃな。あの兄妹はどう反応するか楽しみだ)

 

グランベル王国の西部に位置するアグストリアのアグスティ王家シャガール王子は大変上機嫌だった。

 

(アルヴィス卿は良き知恵を授けてくれただけでなく縁談相手まで紹介してくれるとは)

 

シャガールはヴェルトマー家のアルヴィスに対して心の中で感謝する。

 

現在のアグストリアの状況は芳しくない。元々グランベル王国とは良好な関係を築けているものの、最近は隣接している領主たちが事あることにグランベル王国の領土侵攻を画策しているのだ。

 

(父上が何とか抑え込んでおるが、そろそろ暴発してもおかしくない状況じゃな)

 

シャガールはこういった状況に陥った理由を分析する。

現在アグストリアは

アグスティ王家

ノディオン王家

ハイライン家

マッキリー家

アンフォニー家

でなりたっている連合国家となっており、グランベル王国と似た国家形態だが、まだまだ歴史は浅く、グランベル王国ほどの固い基盤は出来上がっていない。それでも国力だけで言えばグランベル王国の次に匹敵するところまで来ている。

 

(ふう。グランベル王国に勝ちたい空気が蔓延してきておるな。オーガヒルの海賊を一層できたのも大きいかもしれん。)

 

悩みの種だったアグストリアの北部を根城にしていたオーガヒルの海賊がいなくなったこともあり、各領主も色気づいてきていた。

 

(オーガヒルの海賊はアルヴィス卿のおかげでいなくなった。まさかユングウィ家のご息女が保護されていたのは少々驚いたが・・・・・・・・)

 

その後ユングウィ家のエーディンに交際を申し込み、即断られたときは流石に恩を仇で返す態度に怒りを覚えた。

 

(即座にアルヴィス卿が謝罪に訪れ、アズムール陛下からブリギッド殿が保護できたこととオーガヒルの海賊たちを国外追放で実質おとがめなしにした件について丁重なお礼を頂いた)

 

シャガールはグランベル王国との信頼関係を強くしたことで、父であるイムカからもその功績をたたえられることになった。

 

(ワシはグランベルへの対抗意識を持っておった。あの国の領土をもぎ取り、グランベルを超えたかった。しかし今はその気も失せてしまったわ。実際あの男がいる限り無理じゃと分かったからな)

 

その男はシャガールの臨時の相談役をしてくれており、定期的に訪問してくる。

 

(アルヴィス卿だけがワシを認めてくれよった。あのエルトシャンよりもワシの方が王に向いていると。嘘でもそう言ってくれた者はいなかった)

 

現状シャガールに何か異変が無い限り、次期国王となることは決まっている。しかし聖なる武器ミストルティンの所有者であり、ヘズルの血を引くエルトシャンを王にとの声も少なくなかった。

 

(「自分の妹の我儘を許している甘ちゃんに王が務まるわけがありません」とアルヴィスが言ったときは爆笑してしもうたわ)

 

シャガールは思わず顔をほころばせる。

アルヴィスと色々と話すようになってから、なぜ父イムカがグランベルとの関係を重視するのかが分かってきたからだ。

 

(父はグランベルと関係が悪化し戦争になれば勝ち目がないのがわかっているからだ。考えてみれば簡単な話であった。そんなことにも私は気づいていなかった)

 

グランベル王国は強大な国である。聖なる武器の所有者も多数おり、全力で侵攻されればひとたまりもないだろう。

 

(しかしグランベルはほとんどの国と隣接しており、その全てに対応せねばならぬ。どこかの国に戦力を傾ければ別の場所が手薄になる。だからこそ拮抗した関係性を保っていけているのだ)

 

シャガールも疎遠だった父イムカと積極的に関わるようになり、一時期あった確執がほとんどなくなった。

 

(アルヴィス卿のおかげで父の真意もようやく理解できた。彼には感謝しかないな)

 

シャガールは心の中で彼に再度感謝しつつもグランベルへの警戒は強めている。

 

(アルヴィス卿は味方であれば心強いが敵に回せば恐ろしい御仁だ。それゆえに他の国との関係が悪化し戦争となった場合の我が国の動きが重要になってくる)

 

色々と思案していると

 

「殿下、ラケシス殿が来られました」

 

直属騎士より声がかかった。

 

「うむ。エルトシャンは待機させておるか?」

 

シャガールは騎士に確認する。

 

「はい。別室にてお待ちです」

 

「よし、二人とも例の部屋に連れてくるように」

 

シャガールは命じて立ち上がった。

 

 

 

一方その頃

 

別室にて待機していたエルトシャンは、国内の状況に不安を覚えていた。

 

(最近、領主たちの動きが慌ただしい。またグランベルへ仕掛けようなどと考えているのか)

 

エルトシャンは長年悩みの種だったオーガヒルの海賊が一掃されたことにより、国内が安定しホッとしていたが、グランベルの領土を狙おうとする動きがでてきていた。

 

(戦を仕掛けたところでグランベルに勝てるわけがない。なぜそれがわからないんだ)

 

エルトシャンはため息をつく。確かに国力だけでいえばグランベルに匹敵するところまでに至っているが、軍事力だけで評価するなら、他国の力を結集して五分五分といったところだ。

 

(レンスター王国とグランベルは同盟を結んでおり、シレジアは中立を保っている。イザーク、ヴェルダンもグランベルとは良好な関係だ。話にならない)

 

無駄な戦を仕掛けた挙句に失敗して苦しむのは1番力の弱い領民だ。エルトシャンはかつて親友と交わした約束を思い出していた。

 

(シグルドとキュアン。お前たちと交わした約束を果たしていくぞ。平和のためにくだらない戦など起こしてはならない)

 

シグルドとキュアンとエルトシャンは士官学校時代の同期にあたる。お互い国は違えど和平を築くためにお互い協力していく誓いを交わしたのだ。

 

(今回の殿下の呼び出しは一体・・・・。まさか殿下も侵攻をお考えなのだろうか・・・)

 

エルトシャンは思案していると

 

「エルトシャン様、殿下がお呼びでございます」

部下より声がかかった。

 

「わかった。すぐに行く」

 

エルトシャンは返事をしてシャガールの下へ向かった。

 

 

 

エルトシャンはシャガールの待つ部屋へ向かう途中・・

 

「ラケシス!」

 

「エルトシャンお兄様」

 

ラケシスと呼ばれた金髪の女性が驚いた表情を見せた。まだ幼さが残る顔立ちではあるが、気品があり凛々しさをのぞかせている。

 

「なぜここに?」

 

エルトシャンが訊ねる。

 

「はい。殿下より呼ばれました」

 

ラケシスは答えた。

 

「お前も呼ばれていたのか」

 

「お兄様もですか?」

 

「ああ、別室で待機していた」

 

二人の会話が続く

 

「二人そろって呼ばれるなんて・・まさか」

 

ラケシスは不機嫌な表情を見せた。

 

「どうした。ラケシス」

 

ラケシスの表情に思わずエルトシャンは訊ねる。

 

「いいえ。何でもありません。さっさと終わらせましょう」

 

ラケシスは不機嫌な表情を隠さない。

 

「ラケシス、殿下の前でその表情はダメだ。せっかくの綺麗な顔が台無しになる」

 

エルトシャンはたしなめると・・・・

 

「!!!!!そうですね。ごめんなさい」

 

ラケシスは一転嬉しそうに笑顔を見せた。

 

(ふう。困ったものだ・・・・)

 

エルトシャンは思わず心のなかで呟いた。

 

 

 

視点変更(ラケシス)

 

 

 

(お兄様に「綺麗」って言われちゃった。ふふふ)

 

想いを寄せている人に褒められて嬉しくないわけがないラケシスである。

 

(殿下の用件はまた縁談ね。いい加減にしてほしいものだわ。私はエルトシャンお兄様のような人でなければ結婚なんてしたくない)

 

ラケシスは最近の縁談攻勢に嫌気が指している。その筆頭がシャガールだ。

 

(まあいいわ。今回も断りましょう。そろそろ諦めてくれるといいけど)

 

心の中で呟きながらシャガールの待つ部屋の前まで到着した。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

イムカとシャガールの関係は良好になっています。イムカの暗殺についてはマンフロイの甘言があったとはいえ、一方的にシャガールに非があったとは思えないのです。今回はアルヴィスが入ることでシャガールに変化を促す方法をとりました。

イムカの評価ですが、他の領主がエルトシャンを除いてあまりよろしくないので、そのあたりを治めるのにそうとう苦労したと思われます。実際ゲームでは同盟国のがら空きの城を狙おうとするわ、盗賊に村を襲わせるなどかなりひどいですからね。
それはシャガールも同様でしょう。

実際グランベルが本気で侵攻したらアグストリアに限らずどの国もほぼ勝ち目はないのが私の見解です。

正直グランベル以外の国の状況は見えにくいので作りにくいです。

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