平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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ここでオリキャラを入れさせていただきます。

グランベル内部でのお話です。
3名中2名がオリキャラでもう1名はゲームで敵キャラでした。

後半はアルヴィスとレックスの会話になります。


40.策謀

とある一室で会話がなされている。

 

「マンフロイ様の状況はどうなっておる?」

 

「こちらも手を尽くしているのですが、ヴェルトマー家は守りが堅く、上手く行っておりません」

 

「ヴェルトマー家がマンフロイ様を捕らえている情報自体の信ぴょう性についてどうじゃ?」

 

「それについてもハッキリと断定できません」

 

会話をしている二人は黒いフードで身を包んでいる。どちらも男性だ。質問をしている男が立場が上の者であることが伺える。

 

「くっ、他の公爵家であれば情報収集は容易いがよりにもよってヴェルトマー家とは」

 

上の立場のフードの男が苦々しく吐き捨てる。

 

「やはり捕らえられているとの情報は嘘ではないでしょうか?」

 

部下と思わしきフードの男が訊ねる。

 

「普通ならそうじゃろうな。捕らえておく必要がない。しかし・・・・・・・・・」

 

上司のフードの男は答えるが・・・・・・

 

「やはり、きちんと確認してからでないと動けん。万が一生きておられるのであれば助け出さねばならん」

「何かきっかけがほしいですね。動くにしても下手をすればこちらの状況も掴まれる恐れがあります」

 

二人の会話が続いていたが・・・・・

 

「少しよろしいですかな?」

 

別の人影が会話に割り込む。二人よりも声が低く年上のようだ。

 

「おお、どうなされた?」

 

上司のフードの男が訊ねる。

 

「我が当主クロード様に縁談の話が舞い込みました。お相手はノディオン家のラケシス殿でございます」

 

割り込んだ初老の男が答える。

 

「何と!!」

 

二人は驚愕する。

 

「後ろで手を引いているのはアルヴィス卿です」

 

初老の男は続けた。

 

「!!!!!!!!!!!!!」

 

二人は言葉を失った。

 

「ここ最近の良縁は全てアルヴィス卿が動かれていますな。正直この縁談が上手くいくとまずいことになります」

 

「確かに、アグストリアと隣接している領主を焚きつけ、戦争を起こさせる算段が頓挫する可能性がありますな」

 

「それだけではなく、シャガールはアルヴィス卿と良好な関係を築いており、現国王イムカとの確執も収まってきているらしいです」

 

年上二人の会話が続く

 

「シャガールは操りやすい男だったが、アルヴィス卿にしてやられたな」

 

「クロード殿もアルヴィス卿を信頼されており、縁談自体も依頼されたそうです」

 

「・・・・・・・・アルヴィス卿をこちらに引き込むのを我々がマンフロイ様から引き継ぐことは出来ないだろうか?」

 

「そのためにはあの強固な守りを突破せねばなりません。マンフロイ様でなければ難しいかと」

 

「むむむ・・・」と二人とも唸り黙り込む。

そこで黙っていた部下が・・・・

 

「アルヴィス卿の拉致は不可能でしょうか?一つ良策がございます」

 

提案を投げかける。

 

「どのような手段があるのだ?」

 

上司の男が訊ねる。

 

拉致を提案した男が詳細を話す。

 

「まずエッダ家に来たラケシスを・・・」

「それを利用してヴェルトマー家に・・」

「マンフロイ様がいらっしゃれば・・・」

 

全てを話し終えると・・・・・

 

「ふうむ。確かにエッダ家で隙を作れば可能だが、アルヴィス卿が乗ってくるだろうか?」

 

初老の男は訊ねる。

 

「乗ってくれば良し、乗らなければラケシスを始末し、アグストリアとの関係は悪化します。どちらにとってもこちらは利益になります。このまま手をこまねいていても状況は変わりません」

 

部下の男は答える。

 

「確かにここでこちらも風穴を開け、動かす必要があるな。ロダン殿、私も賛成だ」

 

上司の男が部下の提案に賛成する。

 

「可能とは言ったが、失敗すれば非常にまずいぞ。内部の人間をどれだけ抱き込めるかにかかっている。グレッグ殿、少しお時間を頂きたい」

 

ロダンと呼ばれた初老の男は怪訝な表情を見せた。

 

「わかった。あくまで提案の一つに今回はとどめておく」

 

グレッグと呼ばれた上司の男は頷きながら答えた。

 

「カリッド、引き続きヴェルトマー家の監視を怠るな」

 

グレッグは指示を出す。

 

「はい、グレッグ様承知いたしました」

 

拉致を提案したカリッドは返事をした。

 

 

 

 

ヴェルトマー家アルヴィス自室にて

 

「しびれを切らしたら直接的な手段で来る可能性もあるだろうね」

 

アルヴィスは語る。

 

「直接的な手段って何があるんだ?」

 

レックスは訊ねる。

 

「ラケシス殿の誘拐を考えるだろうね」

 

アルヴィスは答える。

 

「おいおいまじかよ!!!!!」

 

レックスは多少驚きの表情を見せる。

 

「ラケシス殿の身柄を引きかえに私との交渉を持ちかけ、こちら側に引きこむ算段をしてくるだろう。あるいは引き付けている間にヴェルトマー家の内情を探ってマンフロイの生死を確認する」

 

アルヴィスは淡々と話す。

 

「もし無視した場合は?」

 

レックスが訊ねる。

 

「ラケシス殿を殺害し、死体の一部をノディオン家に送る。こうなれば戦争は避けられない」

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

アルヴィスの回答にレックスは言葉失う。

 

「向こうからすればアグストリアとの関係が良くなるのは非常に困る。マンフロイが消息不明となれば何かきっかけが欲しいところだろう。それだけ焦っている」

 

アルヴィスは締めくくった。

 

「クロード殿とラケシス殿を利用するのか?」

 

レックスは訊ねる。

 

「私は純粋にクロード殿のお相手を見つけてきただけだ。と同時にシャガール殿下のご機嫌も取ってきた。それにエッダ家に内通者がいる状況にクロード殿の責任が全くないわけではない。それは良き縁談を袖にし続けてシャガール殿下を困らせているラケシス殿も同様だ」

 

アルヴィスはやや冷たい口調で話す。

 

「・・・・・キツイこと言うな。アンタも・・」

 

レックスはアルヴィスの容赦ない物言いそれだけ絞り出す。

 

「クロード殿については縁談相手をご紹介するし護衛もつける。オオゴトにしないだけマシだと思うがね。ラケシス殿には自分の言動を反省してもらわないと困る」

 

アルヴィスは容赦がない。

 

「護衛ってのはアイツを使うのか」

 

レックスは誰を護衛につけるか分かっているが一応確認する。

 

「もちろんだ。彼のことは知らないだろうしね」

 

「本当はラケシス殿を狙ってきてほしいんだろ。そうすれば詰みだからな。全くアンタを敵に回したくはないよ」

 

レックスはアルヴィスが二人を危険にさらす気が全くないことがわかりホッと一息をついた。

 

「そもそもこの縁談が上手くいくとは思えんのだがね」

 

レックスは難しい表情を見せながら言った。

 

「クロード殿がラケシス殿を拒絶することはないだろうね。ラケシス殿が問題を起こすかどうかだけだよ」

 

アルヴィスは自信たっぷりに言って続ける。

 

「クロード殿は紹介してくれた相手に泥を塗るような真似をするような人ではない。ましてや陛下もこの縁談を知っている。しかも他国の有力貴族のご令嬢だ。無下にするはずがないよ」

 

「確かにクロード殿はおっとりしていて少し抜けているが、誠実な人だからな」

 

「ラケシス殿も自国ならともかく他国の公爵家当主に対して礼を失すればどうなるか分からない人ではないだろう・・・・と思いたいがね」

 

二人の会話が続く。

 

アルヴィスはこの縁談が二人には詰み状態であることが分かっている。クロードも同様だろう。後はラケシスがどう出るかになる。

 

「クロード殿から依頼がなければレックス殿にご紹介するつもりだったが、よければ今から切り替えても構わないが」

 

アルヴィスはいたずらっぽい表情を向ける。

 

「・・・・・・アルヴィス。冗談が過ぎるぜ」

 

レックスは一瞬言葉を失ったがなんとか軽口を拾い出した。

 

「魔剣ミストルティンと戦えるいい機会だと思ったが・・・」

 

アルヴィスは冗談を続ける。ちなみに魔剣ミストルティンとはラケシスの異母兄エルトシャンが持つ聖なる武器のことである。相手が武人のレックスであればラケシスを溺愛しているエルトシャンが黙っていないだろうとの想像である。

 

「おいおい、俺を殺す気か。確かにあのエルトシャン殿なら言いそうだ。そう考えるとクロード殿ってなれば流石にそんなことは言わないだろうな」

 

レックスはアルヴィスの冗談を受け流す。

 

(ただあのシスコンがこのまま何もせずに妹を送り出すとは思えんがね。恐らくシグルド殿あたりに何か言いに行きそうだな)

 

アルヴィスは心の中でエルトシャンの行動を推測する。しかしそこまで警戒はしていない。

 

「彼は武人だからね。公爵家当主で神父に剣を向けることはないだろう」

 

アルヴィスはそう締めくくった。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

マンフロイが行方不明の状況を考えると何かしら動きたいところなので模索中であるシーンを入れました。

アルヴィスはこのあたり察知しています。それとこの縁談が重要である点を強調させていただきました。

次話はアグストリアのあの人が初登場です。

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