雰囲気を意識しました。
お互いこれからの関係になっていくので、このあたりはアルヴィスとエスニャの関係に似ていますね。
「陛下、その・・・気になる相手についてなのですが・・・・」
ブリギッドはそこまで言うと口ごもる。
「うむ?どうした?」
アズムールはブリギッドに視線を向ける。
「はい・・・その・・・相手にはきちんと伝えていなくて・・・・・・・」
ブリギッドは下を向きながら話す。
「つまりは片思いであるということかのう」
アズムールは確認する。
「はい、その通りでございます。まだ陛下が思っておられるような関係ではございません」
ブリギッドは務めて冷静に話した。
アズムールは視線をリングに向けるが・・・
「父には相手のことは話しておりません」
ブリギッドは重ねて話した。
「そうか。かなり言いにくそうにしておるが、何か理由があるのか?」
アズムールは穏やかな表情で訊ねる。
「父には相手のことを知られたくなかったので、・・・・」
ブリギッドはたどたどしく答えた。
「そうであったのか。相手はワシが知っている者か?」
「はい。ご存じだと思います。」
二人の会話が続く。
「ほう!!では申してみよ。リングに文句は言わせん。ワシの名において約束しよう」
アズムールは堂々と宣言する。
「陛下、お待ちください!!勝手にそのような約束をされては」
沈黙を保っていたリングが思わず声を上げる。
「リングよ。そもそもはお主がしでかしたことではないか。それにアルヴィスとの縁談を画策していたことを余が知らんと思っておったか?」
痛いところをアズムールに突かれたリングはうっっと唸る。
「それにクルトとの縁談についても断ることが前提で考えておったのじゃろうが。自身の都合で娘を利用するなどお主は何を考えておる!!」
続けざまにアズムールは一喝した。
「陛下・・・・・」
ブリギッドはアズムールの言葉に安堵の表情を浮かべた。
一喝されたリングは顔面蒼白になっている。
アズムールはブリギッドに向き直ると軽く目を閉じて続きを促した。
「陛下、私はヴェルトマー家直属騎士のデュー殿をお慕いしています」
ブリギッドは初めて想い人の名前を伝えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アズムールはブリギッドの真っ直ぐな視線を受けると2、3回目を閉じながら上機嫌に頷いた。
「陛下?」
ブリギッドは訝しげにアズムールを見た。
「デューよ、約束通りこの縁談を進めさせてもらうぞ」
アズムールは誰ともなく声を上げた。
すると・・・・・・・・
「はい、陛下。私もブリギッド様をお慕い申し上げております。ぜひ進めていただきたく存じます」
金髪の少年がいつの間にかブリギッドの横にて臣下の礼を取っていた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
リングとブリギッドは驚愕する。
(デュー!!!何でここにいるの!!さっきの話を聞かれたええとdlfkjsfjしfjsfj)
ブリギッドは混乱の極みにいる。
リングは固まって動けていない。
「ははは、ワシは機嫌が良いぞ。リング、ブリギッドよ、説明するゆえ、まずは落ち着くがよい」
アズムールは満面の笑みで語った。
デューの出現により混乱にあった二人は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「デューよ、ブリギッドに言うことがあるなら許す。今話せ」
アズムールが促す。
促されたデューは立ち上がるとブリギッドの方に体を向けて・・・
「おいらはブリギッドが好きだよ。付き合ってもらえますか?」
デューはストレートに告白する。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!」
告白を受けたブリギッドは驚愕する。
(デューがアタシのことを好きって・・・・言ってくれているの?ええと・・・・・・)
ブリギッドは言葉がでない。
「まだおいらは子供だからすぐ結婚とかそういうのではないけど、もっと一緒にいたいし、色々話したい。おいらにとって特別な人になってほしい。もちろんブリギッドにとって特別な人になりたい」
デューは正直に自分の気持ちを伝えた。
(デューがここまで言ってくれるなんて、嬉しい!!!アタシもデューの特別でありたい!!)
「本当にアタシでいいのかい?ガサツだし、年も離れているよ」
ブリギッドはデューに訊ねる。
「姉御は美人でカッコよくて大人でおいらが今まであった中で1番素敵な人で1番大切な人だよ」
デューは即座に切り返した。
「ふふふ、ありがとうデュー。・・・・喜んでお受けします。これからもよろしくお願いします」
ブリギッドは満面の笑顔で答えた。
「ブリギッド!!ありがとう」
デューも満面の笑顔を見せた。
本来であれば抱き合いたいところではあるが、さすがに場所が場所なだけにお互いそのあたりは抑えている。
「ふふふ。話はついたようじゃの。さて・・・・この縁談についてはワシが見届け人じゃ。誰にも文句は言わせん!!分かっておるな。」
アズムールは唖然としているリングの方を向きながら宣言する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リングは何も言わずその場で跪いた。
「だかデューはまだ子供、ブリギッドもグランベルにて日も浅い。お互いのことをこれから知っていけば良いじゃろう」
アズムールはそう言って二人に視線を向ける。
「はい、陛下ありがとうございます」
「陛下、本当に感謝しております」
デューとブリギッドはその場で跪いて深々と頭を下げた。
「若い二人には特別に城内を散歩してまいれ。それとゆっくり話せる部屋も用意せねばな」
アズムールは侍女に指示を出す。
「陛下、お願いがあります」
ブリギッドはアズムールに真剣な表情を向ける。
「リングの責は今回問わん。ワシの名において約束しよう。その代わりといってはなんだがブリギッドよ、お主を試すような真似をしてすまなかった」
アズムールは軽く頭を下げた。
「陛下!!そんな!!頭を上げてください」
ブリギッドは慌てる。
「実はワシはお主の想い人はデューと確信を得ておった。デューは信じておらんかったがのう」
そう言ってアズムールはデューを見る。デューは体を縮こまらせる。そして申し訳なさそうにブリギッドを見た。
「姉御。ごめ「デュー謝ったら許さないよ」
ブリギッドはデューの言葉にかぶせる。
(そういうことね。最初から私の想い人をデューに確認させるためだったわけだ。あらあら、デューたら小っちゃくなっちゃって。私が怒ると思っていたんだね)
「陛下、私もこの場でなければ告白はできませんでした。父上が反対するのは分かっていたので。陛下のおかげでこうしてデューと両想いになれました」
ブリギッドは晴れ晴れとした表情を向けた。
「そう言って貰えるとワシも助かる。さて今からリングと大切な話をせねばならぬ」
「はい、私もデューとゆっくり話をしてきます」
ブリギッドはそう言ってデューを見た。凄い笑顔で・・・
デューは・・・・・笑顔が引きつっている。
「デューよ、楽しんでまいれよ」
アズムールはデューに最大の賛辞を送った。
ブリギッドはデューの手を取るとアズムールに一礼して退出した。
謁見の場を出た二人は・・・・・
無言で歩いていた。ただ手はしっかりと繋がれていた。お互い離そうとする気配はない。
手を繋がれた状態であるデューはブリギッドへの罪悪感はあるものの心地よさを感じていた。
それはブリギッドも同様でデューの罪悪感を利用してどう有利に持って行ってやろうかと考えていたが、初めて自分から手を繋ぎにいくと、心地よくこのままでいたいと思ってしまった。
改めて恋人同士となってお互いどう話をしたらいいのかが分からず、無言状態となっている。
結局散歩は無言の合意のもと取りやめ、案内してくれた客間で過ごすことになった。
手をお互い離さないため、ソファーに隣り合わせで腰を掛けて休息を取る。だが落ち着かなかった。
「姉御、これからはブリギッドって呼んでいい?」
不意にデューがブリギッドに訊ねた。
「姉御は前にやめろって言わなかったっけ?」
ブリギッドは戸惑いながらも返す。
「ああ、そうだったね。うん。これからはそうするね」
デューはたどたどしく答えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言が続く。
(気まずいね・・・・・どうしよう・・・・・)
ブリギッドは胸の高ぶりを抑えられない。ずっと狙っていたデューと両想いになれたのだが、いざ本人を前にしてどうすればいいかわからない。
(私の方がお姉さんだからリードしたいけど、デューは例のトラウマがあるから怖いわね。でも・・・・・無理だわ)
考えることをやめたブリギッドはデューの手を引っ張り抱きしめた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
このカップリングは当初予定にありませんでした。デューはディアドラとのカップリング候補の1人だったので、どうくっつけるかのストーリーもある程度考えていました。
しかしクライマックスの場面演出においてこの二人をくっつけた方がいいと最終的には判断しました。(まだまだ完結まで先ですが・・・・)
ディアドラのお相手はほぼ決定していますが、どう変わるかわかりません。