リングの責任が問われます。
ピンチの状況にブリギッドは?
バーハラ家に到着したリングとブリギッドは謁見の場にてアズムールを待っている。
(相変わらずここは落ち着かないね。)
ブリギッドは大きな空間の中で2人しかいない環境に落ち着かない様子を見せていた。
「ブリギッド、分かっていると思うが・・・・」
落ち着かない様子を見たリングがブリギッドに声をかけたが
「父上、大丈夫です。そこはしっかりアンドレイから学びましたから」
ブリギッドはリングに返す。
(アンドレイは厳しかったからね。身分の高い人ほど、こういった場におけるマナーは大切だって。エーディンも一緒に指導してくれたけど、アルヴィスの言った通り、アンドレイほどきちんと学んではいなかったようだね)
ブリギッドは改めてアンドレイの言っていたことを思い返していた。
(それにしても陛下はどうされたんだろね。とっくに時間は過ぎている)
ブリギッドが思案していると・・・・
アズムールが姿を現した。
すぐさま二人は片膝をつき臣下の礼をとる。
アズムールはゆっくりと玉座に腰を掛けて座る。
そして・・・・
「待たせたな。」
アズムールは軽く謝罪の言葉を伝える。
「いいえ、陛下。ご機嫌麗しゅうございます。
「とんでもございません、陛下。ご機嫌麗しゅうございます」
と二人はそれぞれ言葉を紡ぐ。
「本日呼んだ理由であるが・・・・・・・」
アズムールはそう言って少し黙り込んだ。
「・・・・・・陛下?」
リングは下げていた頭を上げアズムールを見た。
「!!!!!!!!」
リングは震えている。
「父上?」
ブリギッドは下を向いた状態から横目でリングの普通ではない状況に思わず顔を上げアズムールを見ると・・・・・・
「!!!!!!!!!!!!」
ブリギッドは驚愕した。
(なんて鋭い眼光なの!!動けない・・・・)
ブリギッドはアズムールの眼光に圧倒されていた。
言葉を発することが出来ない圧迫感に息をするのも怖いほどの静寂があたりを包む。
「・・・・・リングよ。ワシは今、非常に機嫌が悪い。何故じゃかわかるかの」
ようやくアズムールが口を開いた。その言葉に・
(陛下は父上に怒っておられるようだ。私はそのあおりを受けてしまってみたいね。それにしても凄い威圧感だわ)
ブリギッドは落ち着きを取り戻し分析する。
「私は何か陛下のお気に触ることを致しましたでしょうか?」
なんとかリングは言葉絞り出した。
「ワシのところにアルヴィスからアグストリアの王族に恥をかかせて借りを作ってしまったので、その王族の困りごとの解決のため、縁談の許可を取りにきよった」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
二人は驚愕する。
「なんでも領内捜索の許可を頂いたにもかかわらず、縁談の申し出をその場で断ったそうじゃの」
アズムールは淡々と語る。
(間違いなくエーディンのことね。陛下にも伝わったのね)
ブリギッドはアグストリアのシャガール殿下がエーディンに交際を申し込み、エーディンがその場で断ったことは一緒にいたため当然知っている。
「なぜお主の娘がしでかしたことでアルヴィスが動いておるのだ?ワシにはよくわからんのでな。詳しく説明してくれ」
アズムールは口調を変えず、淡々と訊ねた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
リングは震えて言葉が出ない。
横目で見ていたブリギッドは・・・・・・
(父上、完全に固まってしまっている。返事も思いつかないみたいね)
「陛下、妹の件につきましては同席していた姉である私の責任です。誠に申し訳ございません」
このままでは状況が悪化すると直感したブリギッドがフォローに入る。
するとアズムールはブリギッドに視線を向けると
「ワシは謝罪を求めているのではない。ましてやブリギッド、お主にこの件に責任は全くない。リングよ説明せよ!!これ以上の沈黙は許さぬ!!」
アズムールはリングに視線を向け一喝する。
それを聞いたリングはその場で平伏し、説明を始めた。
ブリギッドはリングの説明を聞きながら思う。
(父上は事の重大さを全く理解していなかったようね。これじゃあアルヴィスが動くわ)
リングは説明を終えると・・・・・・・
「つまりお主は両国に大きな亀裂が入るかもしれん事柄を見逃しておったわけじゃな」
アズムールは多少呆れ気味に話して続ける。
「アルヴィスは即座に報告に来よった。誠に申し訳ありませんとな。そしてすぐアグストリアのシャガール殿下に謝罪に行かせてほしいと言ってきたわ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
アズムールの話にリングは驚愕する。
「ワシはすぐに許可を出した。その後対応が早かったこともあり、シャガール殿下はいきなりの縁談の申し込みは失礼だったと機嫌を直されたようじゃ」
アズムールは続ける。
「それだけではない。シャガール殿下は大層アルヴィスを気に入り、好待遇で迎えたいとまで言ってきた」
アズムールそう言って締めくくった。
「陛下、アルヴィス卿はそのお誘いをどうなされたのですか?」
(当然断ったと思うけど念のため確認しておこう)
ブリギッドはアルヴィスがグランベルを出ていくことを知っているので気になり思わず訊ねる。
「うむ。月に1回程度、シャガール殿下の相談相手になっているようじゃ。流石に無下にもできんとな」
アズムールは上機嫌に答えた。
(上手いわね。完全とはいかなくてもそんな形で対応するなんて。これじゃあアルヴィスがグランベルを出て行くってなったらシャガール殿下は放っておかないわね)
ブリギッドはアルヴィスのしたたかさに感嘆した。
「リングよ、これが責任の取り方じゃ。アルヴィスはお主にもエーディンの件は伝えておったはずじゃ。それがこの体たらくでは話にならん」
アズムールは一転厳しい表情をリングに向けて続ける。
「シャガール殿下はイムカ王と比べて見劣りするやもしれん。それほど評判も良くないとのことじゃ。しかしアルヴィスの見解は多少違うとの報告も受けておる。実際ブリギッドやその仲間を追放という名の無罪放免にしてくれたのはアルヴィスの口添えがあったにせよシャガール殿下じゃ。違うかの?」
「はい。その通りでございます。陛下」
アズムールの問いに元気なくリングは答える。
「縁談にしてもその場で断ったエーディンに対して大ごとにはしなかった。ワシもそのことについては感謝しかないがの」
アズムールはリングに追い打ちをかける。
(確かにそうだわ。本来海賊やっていた者を無罪放免にするってなかなかできることではないわ)
ブリギッドは改めてシャガールの評価を見直した。
「早々にアルヴィスに謝罪と礼はしておけ。お主の尻ぬぐいをしてくれたのだからの」
「承知いたしました。この度は誠に申し訳ございませんでした」
アズムールの言葉にリングは深々と頭を下げた。
「お主には色々と助けてもらっておるが、今回ばかりは確認をさせてもらうぞ。さて・・・・・」
アズムールは口調を切ると
「クルトの縁談の件じゃが・・・・・・」
(!!!!やっぱりこの件もあるのね)
ブリギッドは表情に出さないよう平静を装う。
「今回は無かったことにするつもりじゃ」
アズムールは穏やかな表情を浮かべる。
その表情を見たリングはホッと息をつく。
(良かった。この件は無くなったのね)
ブリギッドもホッと息をついた。
しかし・・・・・・・・
「まさか別に気になる相手がおったとはな」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
アズムールの言葉に二人の表情は凍り付く。
「流石にその状態でクルトと縁談はできんな。最悪ヴィクトルの二の舞を踏んでしまうからのう」
アズムールは続けざまに剛速球を投げ込んでくる。
(まずい、まずいわ。縁談を無しにした理由がそっちになるんて。父上!!どうするのですか!)
ブリギッドは思わず横目でリングを見ると・・
リングは恐怖に打ち震えた状態になっていた。
(ダメだわ。最悪、ここまで来て嘘です、なんて言おうものなら陛下も父上を処断するかもしれない)
ブリギッドは思案する。
(いっそのこと言ってしまおうか。今の状況なら陛下も私の味方になってくれるかもしれない。でも・・・・・デューがどう思うかな。少し怖い)
「まさかと思うが・・・・・この縁談を断るためにでっち上げた、などないであろうな」
アズムールはリングに鋭い眼光を向けた。
リングは卒倒寸前になっている。
(迷ってられないわ!!ええいままよ!!!)
それを見たブリギッドは決断した。
最後までお読みいただきありがとうございました。
シャガールの株を上げています。
そしてブリギッドの捨てゼリフがとんでもないことになりました。
次話のタイトルは「告白」です。
楽しみにしてください。