デューがアゼルに相談をします。
それを聞いたアゼルの反応は?
ヴェルトマー家アゼル自室にて
アゼルは自室にて引き継いだ当主業務の整理を行っていた。
(当主の仕事って地味なものがほとんどなんだ。兄さんの表の部分しか見ていなかったんだなあ)
アゼルは目の前の書類の多さに圧倒される。しかしそこまで苦戦はしていない。小さい時から少なからずアルヴィスの手伝いをしていたからだ。
(あの時は面倒だと思ったけど、今となってはこういった作業の積み重ねがとても大切だと改めて思う。そういえばティルテュは最後あたり放心状態だったね)
ティルテュも手伝ってくれているが、フリージ家では全く経験していないことなので慣れるのに時間がかかりそうな感じだ。今日は手伝ってくれたあとフリージ家に一時帰宅している。
(ティルテュがいてくれて本当に嬉しいな。大事な人を失わなくて良かった。自分には過分な奥さんだよ)
このあたりはアルヴィス同様なのか心の中で完全に惚気が入ってきている。そして・・・・
(ようやく終わった!!!!)
業務をやり終えた。とそこへドアからノックが聞こえ・・・・
「アゼル、おいらだけど・・・仕事終わった?」
デューがドア越しの声をかける。
「いいよ、デュー。今ちょうど終わったところだよ」
アゼルが返事をする。
「うん。入るね」
ガチャリとドアが開いてデューが部屋に入ってきた。
「デュー、護衛お疲れ様。兄さんも帰ってきているの?」
アゼルが訊ねる。
「ううん、まだだよ。アルヴィスが先に帰っていいって言ってくれたから」
デューは穏やかに返した。が・・・・
(デュー何か元気がないような・・・・)
アゼルはデューがいつもと違う様子なのを感じていた。
「デュー何かあったの?」
「ちょっとね。アゼルに相談に乗ってもらいたくて」
デューは穏やかな表情が崩れ困った顔をしている。
「デューがそんな表情するなんて珍しいね。いいよ。僕で良かったら話を聞くよ」
アゼルはそう言って笑顔を見せた。
「ありがとう。アゼル」
デューも笑顔で返す。
「アズムール陛下にお会いしてね・・・・」
「褒美に銀の剣を賜って・・・・・・・・」
「アルヴィスに残ってほしいって・・・・」
「そしたら陛下が・・・・・・・・・・・」
デューはアズムールとのやり取りを詳細に話した。
しかし自分の命を投げ出そうとした行為については伝えていない。言えるわけがなかった。
アゼルは今回デューがアズムールから特別な褒美をもらう理由も全てアルヴィスから聞いて知っている。
デューの話を聞いたアゼルは・・・・・・・
(うん。デューは詰んでいるね。流石は陛下だ。あっという間にデューを取り込んでしまった)
アゼルの心の中で明確な答えが出ている。ブリギッドがデューに好意を持っているのは間違いないと確信しているからだ。
(ティルテュは一瞬で分かったからね。こちらの状況を把握しにきたのは建前で、デューに会いに来ているのは明白だった。さてどう返そうか)
「仮にブリギッド様がデューのことが好きだったとしてデューはどうしたいのかな」
アゼルはデューに踏み込んでいく。
「そんなのありえるわけないよ。姉御は美人だし大人だし、おいらは子供で年も離れている」
デューは多少驚いた表情で返す。
(デューは全く気付いていなんだね。このあたりは兄さんの影響かな。まあ僕も人のことは言えないか・・・・)
アゼルは自虐を交えながら思考する。
「デュー、僕の質問に答えていないよ。違っていたら今まで通りでいいわけで、問題は陛下の言う通りだった場合はどうするかだよ」
アゼルはデューの逃げ道をふさぐ。
「アゼル、アルヴィスに似てきたよね。その言い方アルヴィスにそっくりだ」
デューは困った表情を浮かべる。
「褒め言葉として受け取っておくよ。でもデューはブリギッド様が自分のことが気になる相手であってほしいと思っているじゃないの?」
アゼルは再度問いかける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
デューは下を向いて答えない。
「沈黙は「はい」だよね。デュー」
デューは下を向いていたが顔を上げる。
「クルト王子の縁談相手が姉御って聞いて、正直落ち着かなかった。陛下から破談になったって聞いて安心した。そのあと姉御に・・・・」
デューが続けようとすると
「気になる相手がいるって聞いて動揺したんだね」
アゼルが言葉をかぶせた。
「・・・・・・・・うん・・・・・・・」
デューは沈黙の後返事をした。
「1番簡単なのはブリギッド様に聞くことだよね。でも聞くなら理由がいるよ。わかるよね?」
アゼルは畳みかけるように話す。
(こんなデューは初めて見たよ。兄さんから過去に色々あったって聞いているけど、ここまでとはね)
煮え切らない親友の新しい一面を見つけたアゼルはここで
「大事なのはデューの気持ちだよ。待つのもありだし自分から聞くものありだと思う。もっと自分の気持ちに向き合ってみたらどうかな」
アゼルはそう締めくくった。
少しの沈黙のあとデューは
「アゼル。ありがとう。もう少し考えてみる」
デューは表情を綻ばせた。
「それでいいと思うよ。僕もそうだったから」
それを聞いたデューはふと質問する
「アゼルはエーディン様のことが好きだったけど姉御に対してはそういった感情はなかったの?」
「うん。それは全くなかったよ」
アゼルは即答した。
実際、アゼルがブリギッドを初めて見たときはエーディンと瓜二つの美しい女性で感嘆はしたが、それ以上の感情は起きなかった。
(話をしてみて性格も違うしエーディン様のように惹かれはしなかったな)
アゼルは想いを巡らす。
「僕もそうだけど、兄さんもデューも他人のことについてはよく見ているけど、自分のことは見えていないよね。ティルテュとエスニャについては気づいていたんだよね」
アゼルはデューに問いかける。
「あの二人は分かりやすいよ。特にエスニャに関してはアルヴィスしか見てなかったし、色々アプローチはかけていたけど肝心のアルヴィスがね」
デューはやや呆れ気味に答えた。
「うん。今考えるとそうだよね。僕もレックスが色々と気を使っていたのも気づかなかった」
アゼルも苦笑いを浮かべる。
「おいらもそうなのかな。きちんと姉御を見てなかったのかもしれない」
デューは真剣な表情を見せる。
「まあこの話は終わりにしよう。あまり考え込むのも良くないから」
(デューは間違った方向に暴走しがちになるからこのあたりで終わっておこう)
アゼルはデューとブリギッドがより密接に繋がってくれることを望んでいる。どうになるかは本人次第だが、ブリギッドの想いにデューが答えるかの一択だと考えている。
(気になるのはブリギッド様に想い人がいるって断った理由の方だけどね。誰の入れ知恵なのかな)
「うん。わかった。それじゃ部屋に戻るね」
デューが部屋を出ようとすると・・・・
「デューちょっと待って、今日は一緒に寝ないか。また例の話を聞きたいな」
アゼルがデューを引き留める。二人はたまに同じ部屋で寝ている。外の世界を知っているデューがアゼルに話をしたのがきっかけだ。それで二人は親友同士になっている。
「一緒に寝るのはいいけど、今日はこれからの話をしたいかな」
「これからって?」
「アゼルが当主になるんでしょ。おいらも残るんだしさ」
デューはそう言って笑顔を見せる。
「うん。そうだね。これからのことを語り合おう」
アゼルも笑顔で返した。
同時刻フリージ家ティルテュ自室にて
「アゼルってば知り合ってすぐにデューに外の話をせがんでいたんだって。それでよく二人で寝ていたそうよ」
ティルテュは寝室で横にいるエスニャに話す。
「それでお二人はとても仲がいいのですね」
エスニャも多少驚きながらも返した。
「アゼルからすれば弟が出来たようなものだから、とても可愛がっていたわね」
「確かにそうですね。もしかして今もご一緒に寝たりしておられるのかしら?」
エスニャが無邪気に問いかける。
「それはないんじゃないの。もういい年だし」
「もしその現場を見てしまったらどうすればいいのでしょうか?」
エスニャが爆弾を放り込む。
「・・・・・事前に聞いておこうかしら」
ティルテュは暴走する。
「・・・・・聞けますか?」
エスニャは冷静に返す。
「エスニャはどうなの。もしアルヴィスとデューが・・・」
「姉さん!!もう寝ましょうか?」
「・・・・・・疲れているわね。そうしましょう」
世の中には知らなくてもいいことがある・・・・
最後までお読みいただきありがとうございました。
ゲームではエーディンに好意的だったキャラ3名のうちアゼルはブリギッドとの会話イベントがありません。(ミデェールとジャムカはありました)
特にミデェールの心変わりはなかなかでした(笑)
それだけアゼルのエーディンへの想いは純粋だったと私は解釈しています。
なのでこの話を入れさせていただきました。
最後の姉妹の会話はお約束です(笑)こういったところの書くのは好きです。