その後3者の会話は終了し、アズムールとアルヴィスのみになります。
アルヴィスが計略を仕掛けるため許可を求めます。
グランベル内部の状況は完全に創作しています。
このあたりはかなり悩みました。
「・・・・・陛下、いかがでしょうか?」
アルヴィスは提案を話し終えると・・・
「ふうむ、確かにそうすればはっきりするな」
アズムールは納得の表情を浮かべるが・・・・
「デューよ。お主は納得いかんか・・・・・」
不意にデューに視線を向ける。
「何か・・・姉御を試すみたいで嫌だな・・・」
デューはそう言いながら目線をそらした。
「リング卿が断る理由として言い出したことだよ」
アルヴィスは気を悪くした様子もなく優しい言葉で伝える。
「デューよ、本当はリングの娘の気持ちを知りたいのではないのか?」
アズムールも同じく優しい言葉をかける。
「・・・・・・良くわかんないし、怖いよ・・」
デューの声は少し震えている。
「デュー、君はブリギッド殿に嫌われるのを恐れているね。だから怖いんだよ」
アルヴィスは続ける
「少なくとも私はブリギッド殿が君に好意を持っていると思っている。そして君もブリギッド殿のことが気になっている・・・違うかい?」
アルヴィスは大きな爆弾を放り投げた。
「姉御がおいらなんて相手にするはずないよ。姉御は美人でカッコよくて、優しくてそれに」
デューは反論するが・・・・・
「じゃあ確かめればいいだろう。あと君の気持ちを聞いていないよ」
アルヴィスは追及を緩めない。
(デューにはこれからもっと人と関わっていく。ここで逃げてほしくないんだ)
アルヴィスは心の中で応援する。
「姉御は今まで出会った女性で1番大切な人だよ」
デューは本音を絞り出すように伝えた。
「デューよ、ワシはアルヴィスの提案に乗ろうと思う。実はクルトとの縁談はワシの方が強く求めておった」
アズムールは本音を話す。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
デューは驚いた表情でアズムールを見る。
「しかし、想い人がいるのであれば下手をすればお主をヴィクトルの二の舞にしてしまうな」
アズムールは少し意地の悪い表情を見せた。
(ふう、陛下はよほどデューが気にいったようだ。あのように言われてしまえばデューも引けない)
アルヴィスはアズムールの言葉聞きながらデューを見ると・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
デューは無表情でアズムールを見ている。
(デュー。完全に陛下に誘導されたな)
アルヴィスは心の中で同情した。
「陛下、ブリギッド殿の件につきまして私の提案をご了承いただきありがとうございます」
アルヴィスはアズムールに頭を下げた。
デューも表情1つ変えず頭を下げた。
「デュー、今から陛下と大切な話があるから先に帰ってもらえるだろうか」
アルヴィスはデューの頭を撫でながら伝える。
「うん。わかった」
頭を撫でられたデューは少しうつむきながら答える。
アルヴィスはデューの耳元で囁く。
「デュー、せっかくだから自分に向き合ってみるといい。アゼルやティルテュに相談してもいいと思うよ」
デューは思わずアルヴィスを見ると小さくうなずいた。
「それと・・ブリギッド殿の周辺を警戒してくれ。敵と判断すれば容赦はいらないよ」
「言われなくても分かっているよ。任せて」
(ふふふ、デューの表情は怖いね。敵にしたくないよ。さっきの陛下の言葉が聞いたかな)
ここ最近ブリギッドの周辺で不穏な動きがあった。護衛ではなく、明らかに監視がついている。
(監視はデューを完全になめているようだ。デューからは「始末していい?」と言われたときは、思わず吹き出しそうになった。しかしそろそろ仕掛けてくる可能性はありそうだ)
アルヴィスは思考を整理した。
「アズムールのおっちゃん、ありがとう。また来るからね。銀の剣、大切に使わせていただきます」
デューはいつもの口調でアズムールへ感謝の言葉を伝えた。
「いつでも来るがよい。お主の話を聞きたい。それと困っているのなら相談すればよい、親友はそういったことに頼りになると思うぞ」
アズムールは孫を見るように暖かい表情を向けた。
「うん。それじゃあね」
デューは笑顔で謁見の場を後にした。
「陛下、それではもう一つの本題に入りたいのですが・・・」
「アルヴィスよ、場所を変えるとしよう」
謁見の場を出たデューは心のざわつきが止まらなかった。
(姉御がおいらのことを・・。もしそれが本当ならどう接すればいいのかな。ってこれからも会うし、どうしよう・・)
デューは気持ちの整理をつけることが出来ない。
(よし、ここはアゼルに相談してみよう。レックスもいるし、いいアドバイスくれるかもしんない)
デューは初めて人を頼ることを決めた。
場所を移動したアルヴィスはアズムールの別室にて待機している。
(さて、マンフロイを利用した計略に今後の展開を話さなければならない。課題は山積みだな)
アルバイトは思案していると
「待たせたな」
「いえ陛下、お時間を頂き感謝いたします」
そう言ってお互い向かい合わせで席に座る。この部屋はアズムールの個人謁見用の別室にあたる。機密や重要な案件を話し合う際に使われている。
「早速だが、まずロプト教団の動向はどうじゃ?」
「はい、推測の範囲では他国はもちろんグランベル内部にも入り込んでいるものと思われます」
「推測とはまだ明確になってはおらんのか?」
「はい、そこでマンフロイを利用した計略を仕掛けようと考えております」
「ほう!!ぜひ聞きたい。どう利用するのじゃ」
アズムールは少し驚いた表情を見せる。
アルヴィスは計略について話を始める。
「まずは情報を流します・・・」
「恐らく相手は・・・・・・・」
「その間隙をついて・・・・・」
「これでグランベル内部の方は解決するかと考えます」
アルヴィスは最後まで言い終えた。
ずっと黙って聞いていたアズムールは・・
「アルヴィスよ、内部に入り込んでいる者にアタリはつけておるのか?」
鋭い眼光をアルヴィスに投げかける。
(陛下は特に驚かれてはいないようだ。ある程度察していたかもしれないし、独自でお調べになられた可能性もある)
「正確にはロプト教団側についた者は何人か予測をつけております」
アルヴィスは淡々と答える。
「なんと、外部から入り込んでいるものはおらんのか?」
多少驚きつつ確認するアズムール
「他の国は可能でしょうが、グランベルに関していえば外部の人間が完全に入り込むのは難しいでしょう。それゆえに慎重にじっくり時が来るのを待っているものと推測いたします」
(国の形が整っているグランベルは外部の人間が中枢に入りにくい。逆を言えば非常に見えにくく尻尾が掴めない難しさを抱えている)
アルヴィスが調べていく中でも非常に驚いたのはこの点だった。ゲームの知識を参考にイザーク、ヴェルダンあたりはロプト教団が入り込み、かく乱したが、ことグランベルおいてはこれが全く掴めなかった。そこで視点を変えて中枢にいる人物から調べなおすと怪しい点が見えてきたのだ。
「しかし現時点は証拠がなく、下手に動けば混乱を招く恐れがあります。そのためロプト教団重要人物の情報を流すことでほころびを作り、一気に解決に持っていきたいと考えております」
「ふうむ、お主の言う通りであれば、情報の出所を探るなどの動きを見せるであろうな。もし、ロプト教団が狂信的な集団であった場合、危険はないのかの?」
アズムールは心配の種を質問する。
「ご心配には及びません。そのためにレックス殿を相談役としてお招きしたのです。それに私の家族もそのような者に遅れはとりません。そちらの方が私としては楽なのですが・・」
アルヴィスはアズムールの危惧に対して丁寧に返した。
「お主を暗殺するのが目的であれば、直接的な手段が取れるが、それをすれば終わりじゃしな」
「さようでございます。まあそんなことをすれば、成功もしないし、生きては帰れませんがね」
「デューがおるからの・・・無理じゃな・・」
「はい。まさにその通りでございます」
二人のやりとりは続く。
「よかろう。許可する。随時報告は怠るな」
アズムールは決断し、アルヴィスに命じた。
「はい。お任せください。多少の混乱が起きるかもしれませんが・・」
アルヴィスが控えめに伝えようとするが・・・
「構わん。国の一大事に体面など気にしてられん」
アズムールは言葉をかぶせた。
「それと報告にはデューを寄こせ。お主では目立ちすぎる」
「はい。承知いたしました。ありがとうございます」
お互いの表情は明るいものになっていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
グランベルにおいては他の国よりも組織はしっかりしているとの見解です。
そのなりますと外部の人間は入りにくく、内部からの切り崩しにて入り込んでいく方法になるかと思いました。
ゲームではアルヴィスがその役割を担いました。他にも同じような仕掛けをしていくだろうとの考えです。