タイトル通りの内容です。
少し重い部分もありますが、入れさせていただきました。
「そうか。ワシの思い違いであったか・・・」
(ふうむ・・。デューは色恋沙汰には疎いようだ。そこはアルヴィスと似ておるの)
アズムールはブリギッドの想い人が誰なのかについてそこまで重視していない。ユングヴィ家の次期当主はアンドレイに決まっている。しかし聖なる武器の所有者であるブリギッドの立場が危ういところにあることも安易には考えていなかった。
「デューよ。お主もアルヴィスとともに行くつもりなのか?」
アズムールが訊ねる。
「いいえ。私はヴェルトマー家を支えるため、グランベルに残る所存です」
デューは即座に答える。
「ほう!てっきり同行するものと思っておった」
アズムールは驚きを隠さない。
「アルヴィス様の隣にはふさわしい方がおられます。私はその方を心から尊敬し、感謝しております。そして安心して私は離れることができます」
デューはそう言って晴れやかな表情を見せた。
(ほう!エスニャを尊敬し、感謝しておるか。もう覚悟は決めておるようだの。ふうむ・・)
アズムールが少し考える表情を見せると・・
「アルヴィスよ、やはりグランベルに残ってもらうことはできんか?」
アズムールが悲しい表情で訊ねる。
「陛下、ありがたいお言葉ですが・・・・・」
アルヴィスは目を伏せる。
「実は迷っておるのではないのか。結婚し大切な人を苦しめてしまうことを恐れているのじゃろう?」
アズムールが核心を突いてくる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アルヴィスは答えない。
(沈黙は嘘をつかないあやつの本音じゃな)
「もしお主が残ってくれるのであれば、そちらのデューにそれなりの地位を用意する。それに・・」
アズムールが続けようとすると
「デュー!!!!!やめろ!!!!」
アルヴィスは強い命令を発する。
「!!!!!!!!!!!!!!」
アズムールがその言葉に驚愕し立ち上がる。そしてデューを見ると・・・・・・
「やめてよ・・・・。アズムールのおっちゃん」
そう言いながらデューは銀の剣の先端を自分の首に向けていた。
(・・死ぬ気だったのかあやつは・・自分がアルヴィスの枷になると知って・)
アズムールは信じられない表情を見せる。迷っているアルヴィスに残ってほしいと思って提案したことがとんでもない状況に追いこんでしまった。
「陛下、申し訳ございません。デュー、もういい!」
アルヴィスがアズムールに頭を下げ、デューにやめるよう促す。
「・・・・デューをそれがお前の覚悟か。許すうえさっきの口調で話せ」
アズムールがデューに訊ねる。
「そうだよ、おっちゃん。おいらはアルヴィスに恩がある。アルヴィスはグランベルを出たい。それを邪魔する人は許さない。今はその対象がおいらになっただけだよ」
デューは淡々と答えた。
「そうか、デューよ。今お前が死ねばアルヴィスだけではない、どれだけの人を悲しませるか考えたのか?」
アズムールは厳しい表情を見せる。
「考えたよ。でもおっちゃんはアルヴィスを残すためにおいらを利用したよね。あの条件を付けられたらアルヴィスを困らせちゃう。おいらにとってアルヴィスは絶対だ。これは譲れない!!!」
デューは負けじとアズムールに返した。
(今回はこっちの負けじゃな。奴の覚悟を知っただけでも良かったわ。それにしても・・・・)
「ふう、久々に肝が冷えたわ。アルヴィスよ、さっきの提案は聞かなかったことにせよ」
アズムールはため息をつきながら話す。
「陛下、ありがとうございます。この度は我が臣下のご無礼千万申し訳ございません」
アルヴィスは深々と頭を下げた。
「陛下、誠に申し訳ありませんでした」
デューも合わせて頭を下げる。
(ふう、とんでもない小僧じゃな。アルヴィスも多少持て余しておる。ふうむ、リングの娘の意中の人の話は本当に嘘なのかのう。せっかくじゃが利用するかの)
「デューよ。先ほどの一件を無かったことにはできん。とは言ってもお主に死なれても困る。そこでワシの頼みを3つほど聞いてもらえるか」
アズムールは幾分穏やかな表情を見せる。
「私に出来ることでしたら何なりとお申し付けください」
デューはアズムールの視線を受け止める。
「1つ目はお主に敬語は似合わん。ワシが許可している間は普通に話せ」
アズムールは目をそらしながら言う。
「えーーーと、うん、わかったよ。おっちゃん」
デューは戸惑いながら答えた。
(さっきの死のうとした表情が少々怖いわ。こっちの口調で話してくれた方が楽じゃわい)
アズムールは心の中で安堵した。
「2つ目はお主にはそれなりの地位を用意する。これで身分の保証は間違いなくされるじゃろう。今後単独での謁見も許可する。これからもヴェルトマー家を支えよ。そして今後さっきのような命を軽々しく扱うことを禁ずる。自分を大切に出来ない者が他人を助けることなど出来はしない」
アズムールは重い口調で諭す。
「はい、わかりました。もうあんなことは二度としません」
デューは口調を改めて頭を下げた。
「3つ目はリングの娘の想い人がお主だった場合は縁談を進めることを覚悟せよ」
アズムールは先ほどより表情を緩めた。
「ちょっと待って、おっちゃんそれは・・・・」
デューは慌てて反論しようとするが・・・
「まあ待て、お主はまだ子供だ。仮にそうだったとしてもすぐにという話ではない。違っていれば問題なかろう」
アズムールは反論を封じ込め、そして続ける。
「ワシはあの娘の気になる相手はお主だと思っている。確かにそっちの朴念仁とは逆の意味で歳は離れておるが、そんなものは歳を重ねれば埋められると思っておる」
アズムールはそう締めくくった。
「しかし陛下、その縁談をリング卿が認めるとは思えません。強引に進めればユングヴィ家との間に亀裂が入るやもしれませんが・・・」
ここまで黙っていたアルヴィスが反論する。
「しかし、あの娘をこの状況にしたのもリングではないか。アルヴィスよ、お主が保護しなければどうなっておったであろうな。それに元々アルヴィスとの縁談を考えておったのであろう。」
アズムールはアルヴィスの反論に対して切り替えして続ける。
「アルヴィスよ、お主が危惧していることなど承知している。それでもワシはデューに聞いておる」
アズムールはそう言って視線をデューに向けた。
視点変更(デュー)
アズムールから視線を向けられたデューは思案する。
(姉御の気になる相手がおいらってあり得ないな。おいらはまだ子供だし、姉御は美人で大人でカッコよくて・・。アズムールのおっちゃんは飛躍しすぎていないかな)
デューはここ最近ブリギッドと頻繁に会っている。お互いの過去もあり、話をしていて楽しいものの、恋愛感情は持っていない。
(まあ、どうせ杞憂に終わるよ。アルヴィスも困るしここは無難に受けておこう。ただ・・)
「アズムールのおっちゃん、姉御・・じゃなかったブリギッド様の想い人がおいらだった場合は、縁談を受け入れるよ。でも・・」
そう言ってデューは続ける。
「きちんと本人に確認してね。強引に進めるような真似をしたら、ただじゃおかないから」
最後は不敬も交えながら締めくくった。
「よかろう。約束する。まあ仮に縁談になったとしてもすぐではない。それは安心してよい。違っていれば白紙で構わん。」
アズムールはデューの言葉に気を悪くした様子は見せず了承の意思を示した。
視点変更(アルヴィス)
(意外な展開になっているな。デューが相当気に入ったらしい。グランベルに繋ぎ止めておきたいようだ)
アルヴィスはアズムールの心境を読む。
(最後の件は仮に違っていたとしても陛下にとってはどちらでも構わないといったところだろう。逆に私からすれば陛下の読みが合っていてほしい)
アルヴィスはブリギッドの想い人がデューである可能性を完全に否定していない。実際興味を持っている節があったのは間違いないし、デューとのやり取りを見てもあきらかだ。
(問題はブリギッド殿が想い人を創作していた場合、陛下から問い詰められた時にデューの名前を出す可能性もある。そうなったらお互いにとって不本意な状況になるかもしれないな)
アルヴィスは一瞬そう思ったが・・・・・・
(しかし陛下の問いにブリギッド殿が認めてしまえばデューとの約束がある以上、ここからは陛下主導の縁談となり、リング卿が反対するのは難しくなるか・・)
アルヴィスはデューがグランベルに残る選択をしてくれたことを嬉しく思っているが、ヴェルトマー家以外の相手と上手くやっていけるか少し不安だった。もしブリギッドがデューと結ばれてくれればその不安要素は多少取り除かれることになる。
(このあたりはお互いの気持ちの問題がある。それにデューはまだ子供だ。ゆっくり関係を作っていけばいい)
アルヴィスは思案を整理して納得させた。そして・・
「陛下、私から提案があるのですがよろしいでしょうか?」
アルヴィスはアズムールに提案を投げかけた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
デューの覚悟です。少々重めに作りました。
あと彼はいつもの口調で話してもらう方がいいのでそうしました。
その後の話はブリギッド、リングからすれば想定外でしょうね(笑)
どう動かすか模索中です。
書き溜めていた分も限界が来ております。
1週間1回の投稿に間に合うよう頑張っていきます。